Project/Area Number |
21K00476
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02060:Linguistics-related
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
張 盛開 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (00631821)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2025: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2024: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2021: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 口承文化 / 夜歌 / 影戯 / 押韻 / 仄平 / 文体 / 童謡 / 地理分布 / 平江方言 / 葬儀 / 歌謡 / 平江 / 臨湘 / 伝統 / 創作 / 方言 / 比較対照 / 類型的研究 / 言語接触 |
Outline of Research at the Start |
本研究の対象は中国湖南省平江県における口承文化である。本研究は二つの目的・意義がある。一、近いうちに絶滅のおそれがある言語とその言語を使用する口承文化を収集し、適切に処理してからインターネット等で公開し、多様な文化を人類の共有財産として、次の世代に伝えていき、口承文化の継承事例の構築と方法を確立する。研究の基盤となる故に第一目的とする。二、収集した口承文化に対する分析を通して方言全容の解明を進める。研究方法としては、現地調査にて収集した資料に対し、整理及び分析を行い、その言語的特徴を明らかにする。最終的には収集したすべてのデータをまとめて公開し、一般の人も利用できるようにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度も引き続き夜歌(葬歌)歌詞の整理と分析を行い、論文「平江夜歌研究」を完成し公刊した。本論文は初めて夜歌歌詞について言語学的に分析したものであり、実際の葬儀で採録したデータと書かれた歌詞本の両方を研究対象にしていることから、網羅的に夜歌から見られる地元の言語と文化の特徴をまとめることができた。夜歌は地元の人々の暮らしを表現し、その歌詞には方言語彙と民族習慣も反映されている。 中国への往来が自由になり、集中的に口承文化のデータ収集を行った。7月~12月までの間、合計3回現地に渡り、フィールドワークを行い、実際に上映されている影戯(影絵)を中心に口承文化のデータ(動画、音声)を収集した。撮影した口承文化(灯戯、白話、魚鼓、影戯、快板)の台詞の文字化も行った。現時点で、手元にある動画データは影戯約30本(約60時間分)、夜歌約18時間、灯戯約8時間ある。それ以外に影戯の台本も収集し、文字版台本が13万字ある。影戯劇団と同行し、データを採集する中、伝承者と良好な関係を結ぶこともできた。現在はデータを共有しつつ、影戯の台本や台詞の整理を進めている。これまで収集したデータを利用し、TikTokに動画を掲載し、多くの方から反響を呼び、童謡などのデータの追加収集ができた。現地にてフィールドワークを実施できない時もTikTokを利用し、平江地域を中心に、中国各地の口承文化(夜歌、鼓書、影戯など)の生中継をスクリーンショット形式による録画を行い、合計約50時間の動画データを収集した。影戯の台詞についても分析を行い、その特徴をまとめ、研究会にて発表した。 童謡から得られたヒントを活かし、平江地域を中心に中国全土にわたって方言語彙の地理的研究を行った。それは外来植物「南瓜」(かぼちゃ)の言い方を調べ、分布地図を作成し、その伝播―ルーツを探ったものである。その成果をまとめ、学会にて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度は主に影戯の歌詞と台詞の文字化や分析を行った。116部の劇の台本概要10万字と詳細な台詞入り台本が3万字を入力した。それらについて分析し、学会発表を行った。影戯の特徴として下記のことが言え、これらの特徴はほかの口承文化にもみられる。 歌詞は7、7の「仄平」で、蓮花落や夜歌の7、7、7、7「仄仄平平」に共似ている。 同音字などを利用し、わざと言い間違いをしたり、逆のことを言ったりして(童謡と共通)面白くして観客を笑わせる。 台詞には三種の文体(灯戯と共通)が見られ、それぞれ知識人の使用する文語体(文語のまま話す)、使用人の用いる地方方言の口語体、使用人対知識人の際に用いられる口語、文語混合体である。このような混合した言語は夜歌歌詞や古書籍(平江方言韻書―又一経)にもみられる。三種の文体の研究は地方方言の口語、文語とミックス方言のそれぞれの特徴を明らかにでき、混合されたプロセスも判明できる。 歌謡に関しては、これまで録音から文字化したデータが約9万字あり、それをコーパスとして整備したので、今後はこれらのコーパスを用いて、歌謡の言語と文化特徴を分析することができる。令和5年度は現地調査に3度行けたので、大量なデータを収集できた。伝承者の力を借り、文字化も進んだ。整理や分析の過程において、必要に応じて、SNSを通してインタビュー調査やアンケート調査を実施。TikTok、講演や国際学会での報告を通して、研究成果の提示や情報交換ができた。本研究課題は地方口承文化の夜歌、童謡、歌謡、地方劇(灯戯)、影戯、蓮花落などを5年間で研究や保存を行う予定のものであり、令和5年度は上述の通り夜歌、童謡、影戯、蓮花落、地方劇(灯戯)についてデータ収集や研究を行い、論文1篇完成し、学会発表を三回行ったので、予定通りに進行できていると考え、進捗状況を概ね順調とした。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は影戯の言語について分析した結果を論文にまとめ、学術誌に投稿する予定である。これまで分析した結果、平江における口承文化には共通した言語特徴が見られた。これらの特徴は平江以外の地方の口承文化にも共通するものと予想できる。今後は平江の周辺地域の口承文化の研究も行う。夏休みに平江地域を中心に、口承文化に関する映像、音声、テキストデータを現地で収集する。地方口承文化が衰退されつつある中で、伝承者へのインタビューを通して、各地の口承文化の伝承現状などについても調べる。全体的な研究としては、平江の口承文化における押韻状況を調査を行いたい。更に童謡、夜歌、歌謡、蓮花落」影戯などのテキストに見られる方言特徴を実際に話されている方言の口語と比べ、その相違を明らかにする。 次に外来植物「南瓜」(かぼちゃ)についての研究成果を論文にまとめ、学術誌に投稿する。本研究ではそれぞれの語形の地域的な分布からその伝播ルーツを明らかにした。今後は口承文化に関しても分布地図を作成していきたいと考えている。例えば、夜歌は湖南省、湖北省、陝西省、四川省に見られるが、その形式や内容は異なっている。地図でそれぞれの特徴を明らかにしたいと考えている。影戯に関しても湖南省を中心にいくつかの省に見られ、その実際の内容や演出形式などについて、データを収集し、比較対照を行い、分布地図を作成したい。 「地方口承文化にみられる言語や文化的特徴」をテーマに国際シンポジウムを開催し、中国の口承文化の伝承者や研究者を日本に招聘し、日中両国の口承文化について情報交換する予定である。同時に、日本の社会にも中国の口承文化を知っていただくために、歌謡、夜歌、影劇 などの伝承者によるパフォーマンスも考えている。 これまで整理できたデータ動画をYouTubeやTikTokで公開しているが、今後は文字データも動画とともにホームページにて公開する。
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