Project/Area Number |
21K00575
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02080:English linguistics-related
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
前澤 大樹 藤田医科大学, 医学部, 准教授 (60537116)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,770,000 (Direct Cost: ¥2,900,000、Indirect Cost: ¥870,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 再統合 / 連鎖解釈 / 再構築 / tough構文 / 循環的転送 / 最小探査 / ラベル付け / θ標示 / 二重対格制約 / 二重ヲ格制約 / 標的/題材制限 / 目的語転移 / 法量化 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、(i)後転送的組立(post-transfer assembly)は存在するか、(ii)転送はどのような形で適用され如何に制約されているのか、という2つの問いに答えることを最終目的とする。前者については、Maezawa (2019)に基づく見解をとって存在し、後者については転送が自由に適用可能であるとの見通しに立って問題に接近を図り、特定構文、特にtough構文と法量化構文に妥当な分析を与えることで具体的に検討を進める。かかる取り組みを通して、言語事実を解明するとともに、統語論から両インタフェイスへの写像過程の解明、ラベルの必要性に関する問題の解決等の理論的貢献を試みる。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究で扱う対象の1つとして当初の計画で掲げていたtough構文の分析に集中して取り組み、その結果は纏めて学会発表を行った他、論文として学術雑誌に投稿・掲載済みである。同構文主語が示す再構築可能性は、本研究が幅広い構文への適用を試みることで射程を探るとともに精緻化を図る後統語的操作「再統合(reintegration)」発想の端緒となった現象でありながら、本研究が当初の見通しと異なる進展を辿り、構築を試みる理論の他の構文での検証に優先して取り組んだために本格的な分析への着手が遅れたものだが、再統合の帰結に関する議論を深めていく中で、その「正の効果」を実証し得る事実としてより重要性を増したと言える。基本的な着想は、tough構文主語のD主要部及び指定部が主節で導入されるのに対し、NP補部は空演算子Dの補部としてtoough形容詞補文内の空所位置に基底生成され、転送を受けた後者が前者を標的として再統合を受けることで非再構築解釈が、後者の意味表示のみが補文内の空演算子を標的として再統合されることで再構築解釈が得られるというものである。分析に際しては、再統合及び関与する他の操作・規則に望まれる一般性を確保しながらこの着想を具体化することに特に意を注ぎ、同時に可能な限り厳密な定式化・定義を行うことで着想が実際に動作する体系の下で実装可能であることを明らかにするよう努めた。具体的には、典型的A'移動であるwh移動に於ける再構築可能性と連鎖解釈から想定すべき諸操作及び原理を帰納し、それらの下で空演算子に特有の語彙特性を仮定することで、tough構文主語の再構築に関する事実が導かれることを示した。更にこの過程では、一般的代入操作「合一(Henosis)」の分離による再統合のより制限的な再定式化、複製形成(FormCopy)による格付与の一致一般への拡張等の理論的貢献もなし得たものと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一旦本来の計画とは異なる方向へと進展した研究を本来の流れへと収斂させる形で、寧ろ当初想定していたより充実した成果が得られる見通しが立つに至り、進捗状況は順調と言って差し支えない。前項で述べたtough構文の分析を通して、再統合の挙動をより妥当且つ厳密に定式化するとともに、相互作用を示す幾つかの操作・原理を提案することで、それを組み込んだ実装可能な体系全体の構築を推し進めることができた。一方、本年度の成果は昨年度以前と研究推進上別の分岐に位置づけられるもので、これまで重点的に取り組んできた自由転送仮説の検証及び妥当なラベル決定法の探究については、議論を棚上げして現行の理論で一般的な想定に一旦後退し、tough構文という具体的事例を通して再統合の機序を解明することに集中したため、新たな進展は見ていない。もっとも、これは研究上の課題を分割して順次解決する方策の採用による計画的なものであり、得られた結果は概ね意図した通りである。その意味で本研究計画全体は、予定とは異なってより広い範囲で妥当性の検証を行いながら、1年遅れで本来掲げた目標も達成しつつあると言ってよい。しかしながら、これらの研究成果の公表に関しては、口頭発表・論文投稿をより活発に行う余地が少なからずあり、最終年度に向けての課題としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
計画期間最終年度に当たり、研究推進上の具体的目標は3つある。第1に、前項で述べたように2つの方向に分岐して進展してきた研究を1つに統合し、一般性の高い体系の構築を完成させることである。具体的には、再統合の「負の効果」を検証するために昨年度追求した二重対格制約と、「正の効果」の実証を目的として今年度取り組んだtough構文主語の再構築現象の分析を突き合わせ、前者を扱う中で提案した転送及びラベル付けの機序と、後者の検討から導いた再統合の定式化の両方を組み込んだ包括的な後統語派生の理論を確立することを目指す。その中では、当然これまで行った諸提案の整合性を問い直すこととなるが、そこで重要な役割を果たすのが第2の目標であり、当初の計画で予定していた法量化構文の分析である。同構文は、単に派生に再統合を想定し得るというに止まらず、適切な意味表示を得るために、通常位相を成すと考えられていない統語体の転送が要求されるという点で、その分析は自由転送仮説の検証と妥当な定式化に資するところが大きいと見込まれる。これらの取り組みを進める中で、第3の目標である研究成果のより積極的な公表を行っていきたい。とりわけ、海外学会での研究発表や主要な国際学術雑誌への論文投稿を通して、かかる成果がより広く知られるように務め、分野の研究の進展に寄与することを目指したい。
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