Project/Area Number |
21K00906
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03030:History of Asia and Africa-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中西 竜也 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (40636784)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2025: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2021: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 聖者崇敬 / 中国ムスリム / 天方詩経 / ジャフリーヤ / ムジャッディディーヤ / スーフィズム / 預言者一族 / 門宦 / スーフィー教団 / 北荘門宦 / イブン・アラビー / イブン・タイミーヤ |
Outline of Research at the Start |
19-21世紀の中国ムスリム(漢語を話すムスリム)が、イスラームの中国適応を図る中、17世紀頃から西・南・中央アジアの知的諸潮流の間で行われた、イブン・アラビー(1240年没)の思想や、その批判者イブン・タイミーヤ(1328年没)の学説をめぐる論争に、如何に反応したかを検討する。とくに、当該論争で提出された、聖者崇敬についての諸言説を、当該時期の中国ムスリムたちが如何に受け止めたかを吟味する。それにより、中国ムスリムがイスラームを中国社会・文化と調和させてきたその実相を、従来よりも動態的・多層的に把握するとともに、その展開をイスラーム世界全体の思想史の上に位置づける。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、19-21世紀の中国ムスリム(漢語を使用するムスリム)が、近代イスラーム世界の重要な論題のひとつ、聖者崇敬をめぐる、西・南・中央アジア由来の諸言説を如何に受容したかを通時的・地域横断的に検討することで、彼らによるイスラームの中国適応に向けた努力の様相を動態的・多層的に捉えるとともに、その展開をイスラーム世界思想史の上に位置付けることを目指すものである。また、中国ムスリムによるイスラームの中国適応の努力が、時に彼らの内部分断を助長するなどの社会的副作用を伴ったことに特別な注意を払い、その様相の解明をも試みる。 今年度は、まず、馬安礼(1901年以降没)の漢語著作『天方詩経』(1890年刊)における聖者崇敬批判が『外套頌』ハルブーティー注(アラビア語)の引き写しであったことに鑑み、その背景にある『天方詩経』の翻訳哲学を探った。結果、馬安礼が、過剰な「中国的」文飾を忌避し、アラビア語原典をなるべく忠実に翻訳することにこそムスリム・非ムスリム融和の鍵があると考えていたことを明らかにした。この成果は、日本語の書籍分担執筆の形で公刊した。 また、ジャフリーヤ教団の支派、沙溝派の導師、馬震武(1961年没)に関するアラビア語聖者伝(1983年完成)を吟味した結果、同書が、沙溝派と競う他のジャフリーヤ諸支派に対して馬震武の聖者としての権威を擁護するため、彼による中共への貢献・恭順を敢えて奇跡譚の形で語っていたことが分かった。この結論は、聖者の奇跡を世俗権力に対抗的なものとする理解の相対化とともに、中国ムスリムにおける中国適応と内部抗争の相関を示すものとしても有意義である。この成果は、英語で口頭発表した。また、間もなく英語論集に寄稿するが、同論文では、当該奇跡譚が一部にブルセヴィー『明証の霊魂』を引用し、イスラーム世界全体の思想潮流と連動して聖者論を展開していたことも示すだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で述べたとおり、20世紀中国西北部における聖者崇敬言説の一端を解明することに成功した。とくに、中国ムスリムによるイスラームの「中国化」を異文化共生のモデルとして手放しで賛美する昨今の論調を相対化するものとして、ムスリム内部の分断という社会的副作用に注目した議論を新たに提示し得たことは大きな成果であった。そして、以前明らかにした、19-20世紀雲南の馬徳新(1874年没)、馬安礼などによる聖者崇敬批判の様相とあわせることで、イスラーム世界全体の知的動向と絡みながら展開した中国ムスリムの聖者論を通時的・地域横断的に把握するという試みを、大きく前進させたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、一年目から取り組んできた、19-20世紀の中国西北部におけるムジャッディディーヤ派の流入・台頭と「四大流派」言説の形成・展開に関する議論を精緻化して論文にまとめ、英語の雑誌特集号に投降する。 また、アフマド・スィルヒンディー『書簡集』やギヤースィーの詩集など、ムジャッディディーヤ派関連文献を読み進めながら、これらをもとにした中国ムスリムの聖者崇敬をめぐる諸言説のイスラーム世界全体における位置づけをより深く探究する。
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