磁気学的・鉱物学的手法による土器焼成環境の解明 ―鉄・酸素の挙動から―
Project/Area Number |
21K00994
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03060:Cultural assets study-related
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
畠山 唯達 岡山理科大学, フロンティア理工学研究所, 教授 (80368612)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
足立 達朗 九州大学, 比較社会文化研究院, 助教 (00582652)
加藤 千恵 九州大学, 比較社会文化研究院, 助教 (00828478)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2021: ¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
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Keywords | 土器焼成 / 鉄鉱物 / 磁性 / 磁気学 / 鉱物学 / 土器 / 粘土 / 岩石磁気学 |
Outline of Research at the Start |
本研究では窯内焼成で粘土から土器へ変化する物質中の鉱物、とくに含鉄鉱物の挙動を明らかにするために、(1)室内における焼成実験の試料、(2)復元古窯において焼成した試料、および(3)実際の考古試料を対象に磁気学的・鉱物学的・地球化学的分析を行う。(1)については、本計画で小型炉を購入し、制御下において種々の粘土を焼成し、順次分析する。(2)については、古い登り窯を復元している備前焼作家に協力を仰ぎ、試料を窯内複数個所に置いて焼いてもらい、分析する。(3)については(1), (2)の結果を踏まえて、過去の焼成環境の推定を行う。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、土器や窯・炉跡内面の焼土等の被熱遺物・遺構の材質中に大量に含まれている鉄酸化物の生成条件を磁気学的・鉱物学的観点から明らかにし、遺物遺構の被熱環境に関する新たな知見を見出すことを目的としている。土器や焼土には焼成前の土壌・粘土中と比べてはるかに多量の鉄酸化物が含まれており考古地磁気学や磁気遺構探査などで検知されるシグナル(磁場・磁化)の主要因となっているが、被熱による増加のメカニズムについて詳細が分かっていない。本研究は、土器片・熱を受けた遺構の焼土、および熱を受ける前の土壌・粘土等を対象として、磁気学的・鉱物学的手法の両面からアプローチして熱を受けて生成される強磁性鉱物(主に鉄酸化物)の生成機構を明らかにし、文化財科学・考古学で注目されている土器焼成中の窯内やかまど跡等における温度や酸化還元状態と土器の色に関する新たな知見を提供するために、(1)古代式復元窯による焼成と環境測定、(2)電気炉による制御下での焼成、(3)それぞれで得られた土と焼土を磁気的・鉱物学的に分析すること、の3つの柱で構成する。今年度の本研究では、(1)について、協力者の備前焼作家が作成した古備前焼復元窯において、最大11か所で温度を同時に観測し、焼成時の窯内における温度分布とその変化を詳細に記録した。その結果、作家が意図していた陶器のでき方およびそれを実現するための温度コントロールと実際の陶器表面の状況との関連性が明らかになってきた。また、須恵器などの古いタイプの陶器(土器)と復元陶器の違いなどについての議論も深めている。 (2)については、粘土を複数の環境(温度・空気)で焼成し、(3)磁気的・鉱物学的な分析を進めている。焼成温度と鉄鉱物の種類や生成量は単純な関係でないことがわかり、詳細な解析や試料作成環境を拡げながら測定を続けている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021, 2022年度(3か年中2年目まで)に、ハードウェアの導入をし測定環境や試料作成環境の調整を行ってきた。(1)について、研究協力者である備前焼作家が2022年2月に復元窯を作成し、3月に初窯焼成を行った。その際は、7か所の温度計設置をしたが、センサー径や取り回し等に問題があり、センサーの多くは焼成の途中で熱などによって破損してしまい、最後まで測定ができたセンサーはわずかであった。その問題点を整理し、2022年10月の第2回焼成時には9本のセンサーを投入し、窯元がモニターに使用する2本のセンサーと合わせ、合計11か所の温度測定を焚き始めから冷却後蓋を開けるまでの8日間にわたって問題なく測定することができた。初期解析の結果、窯内の前後、左右、上下における温度差の様子が明らかになり、とくに前後は1m程度の間に約200度もの温度差があることが明らかになった。(2)に関連して導入した小型電気炉において、陶芸用粘土を用いて、空気中ならびに中真空中での96時間焼成実験を行った。96時間は実際の土器等の焼成時間よりも長いと考えられるが、十分な反応を促すために設定した時間である。(3)作成した陶片、および原土について、低温磁性、等温残留磁化段階着磁等の岩石磁気学・鉱物学的測定を行った。その結果、焼成温度ごとに生成物に含まれる磁性等は大きく変化するが、それが一方向的でなく複雑に変質していることが分かった。予定していたもののうち、復元窯内の酸素量を測定するための酸素濃度計については、半導体不足のため、10月の第2回焼成には間に合わなかったが、年度内の調達をすることができたので、次回の焼成時より測定を開始する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度(3か年中最終年)の研究予定として、 (1)復元窯での作業について、年末ごろ予定される第3回の焼成時に温度計(熱電対)による多点同時温度観測といっしょに酸素濃度計による酸素雰囲気の測定を行う。引き続き復元窯における焼成時に温度計を導入した多点同時観測を行って、温度環境を分析するとともに酸素濃度計を導入する予定である。 (2)小型真空炉での試料作成作業については、引き続き同装置での長時間焼成試料を作成して基礎的な分析を続ける。また、その後、焼成時間を短くした試料作成のテストをして、試料内が最高温度においてどれくらいの時間で化学的平衡に到達するかの実測を行いたい。 (3)磁気的、鉱物学的分析については、引き続き得られた試料の分析を進める。磁性測定については、高温・低温下での変質と相変化、およびヒステリシスや等温残留磁化と言った磁気パラメータの測定、鉱物学的に鉄鉱物の同定と化学的な元素分布・移動について、多種の試料について測定する。それをもとに、磁気的性質から存在が確認される鉄鉱物と、鉱物学的に「見える」、地球化学的に存在が推定される鉱物の関係性について、考察を行い、焼成環境と鉄鉱物に関する理解の取りまとめを行う。
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Report
(2 results)
Research Products
(2 results)