Project/Area Number |
21K01075
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 04030:Cultural anthropology and folklore-related
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
葉山 茂 弘前大学, 人文社会科学部, 准教授 (60592780)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2023: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2022: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2021: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 遠洋漁業 / 出稼ぎ / ホタテ養殖 / 女性 / 漁業 / ニシン漁出稼ぎ / 漁業者 / 地域居住 / 過疎高齢化 / 生業活動 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、地域に住み続ける人びとの選択がどのように実践されてきたのかを、漁業者とその家族を対象としてライフヒストリーの聞き取り調査をもとに通時的な視点から分析することを目的とするものである。 2021年度と2022年度は野辺地町の漁業者および家族の役割に関する事例調査を行う。2022年度は前年度の成果をもとに地域の人びとの実践を地域住民と共有する。2023年度は成果を報告書にまとめる。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は青森県野辺地町の漁業集落を事例に、過疎高齢化が進む地域で、人々が地域社会に住み続ける選択をどのように実践してきたのかをライフヒストリーを中心にデータ収集し、分析することを目的としている。これまでの研究で、野辺地の男性は1950年頃までのニシン漁出稼ぎ、1950年代から70年代を中心に展開した北洋・南洋の捕鯨や大西洋などでの大型漁船への就職などを通じて地域での暮らしの足掛かりをつくってきたことを明らかにした。今年度は1960年代後半からさかんになったホタテ養殖の導入過程とその後に注目した調査をした。 野辺地のホタテ養殖は家族経営を基本とし、家族の女性が労働力となることが前提であった。それ以前の野辺地の漁業では、女性が船に乗ることを忌避したが、ホタテ養殖では女性が男性とともに船に乗った。 民俗学では女性の船への乗船を忌避する習慣が全国的に存在することが報告されている。一方で瀬戸内では女性が船に乗り、自ら漁場を探して漁をする事例も報告されている。野辺地の事例は両者と比較すると、両者の中間的な現象である。女性はホタテ養殖が導入されると、船に乗ることが一般的になった。一方で女性たちのホタテ養殖への関わりは、男性のライフヒストリーと連動し、男性がホタテ養殖を始めることをきっかけにしている。いわば男性がホタテ養殖の主で、女性たちは従であり経営の決定権がなかった。 野辺地でホタテ養殖が広まると、女性が刺網漁やカゴ漁などの獲る漁でも船に乗るようになった。しかし獲る漁での女性の関わりでも、女性に漁場などの決定権はなかった。女性が船に乗るようになったのは陸での仕事の効率化を求めた結果、出荷準備などの陸の手伝いを海ですることが最も効率的であった拡張した結果であった。以上のように、野辺地の女性たちのライフコースにおいて地元で船に乗る選択は、男性の選択と密接に連動していたことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究はライフヒストリー等の聞き取り調査を基本的な調査方法としている。したがって調査においては、対面での長時間の聞き取りが前提となっている。しかしインフォーマントの新型コロナウイルスの感染等により、調査を予定しても、調査ができない状況が続いた。したがって計画に沿った調査が困難であり、研究はやや遅れている。しかし2021年度と比較すると、調査は比較的しやすくなったことから、「遅れている」状況から改善することができた。 本研究では調査プロセスに関連して、調査の結果を地域に還元する体制づくりが課題となっている。本件について、野辺地町歴史民俗資料館の展示に調査結果を反映し、聞き取りや調査で得た写真等を活用することができた。本来は映像の撮影による情報共有を検討していたが、新型コロナウイルスの感染拡大により長時間の繰り返しの調査等が困難な状況にあったことから、展示という形で成果の可視化と公開を実現した。この展示については、完成したものをインフォーマントが見学しており、見学の際にホタテ養殖の技術や経験に関してさらに詳細な聞き取りを行うことができ、今後の調査における研究方針を立てるに当って有効な視点を得ることができた。上記の状況から、当初の計画通りではないが、調査結果の可視化と調査内容の深化に向けたレスポンスの獲得という面においても一定の成果を出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は新型コロナウイスルの影響は完全には排除できないが、対面の調査が可能な環境が生じている。したがって動向を注意しながら、対面での聞き取り調査を進める。 本研究では、以下4点の課題を挙げている。①漁業者を対象に地域での生活の成り立たせ方を具体的な事例を収集し、10の事例から地域における男性の就業やライフコースを抽出し、世代間の経験の違いを検討する。②女性のライフヒストリーを収集し地域に残り生活を維持してきた女性の役割を検討する。また③アクション・リサーチの手法を導入し地域の社会教育機関と協力し、個別の経験を共有し語る場を構築し、継続的に調査成果を公開しレスポンスを得られる体制を整える。④研究成果を地域で活用可能な形で還元するための情報の集積・提供の手法を検討する。 ①について、引き続き、野辺地の人々が外部に出て稼ぐ方針から地域に戻って漁業をするようになった移行期の男性の生業選択プロセスについて聞き取り調査を行い、データ内容を充実させる。また②については、現在、漁業に従事する人々の多くが海浜部の出身者ではない事例が多いことから、漁業に参入するプロセスについてライフヒストリーの収集に務める。③については野辺地町歴史民俗資料館の学芸員と学校・地域での教育普及キットの作成を検討しており、これまでに展示に提供したデータとともに、教育キットを活用することによってインフォーマントや市民との継続的なコミュニケーションが可能な仕組み作りを行う。2022年度の展示への研究成果の反映とともに、③の教育キットを作成することを通じて、④の研究成果を広く公開し活用する体制づくりを行う。 本年度は最終年度であることから、以上のプロセスを総合し、過疎高齢化が進む地域で、人々が地域社会に住み続ける選択をどのように実践してきたのかについてまとめる。
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Report
(2 results)
Research Products
(3 results)
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[Book] フィールドワークという探索活動の可能性2023
Author(s)
葉山 茂, 白石 壮一郎, 近藤 史, 松井 歩, 新永 悠人, 佐々木あすか, 髙島 克史, 林 彦櫻, 諏訪 淳一郎
Total Pages
107
Publisher
弘前大学人文社会科学部
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