Project/Area Number |
21K01177
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 05040:Social law-related
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
相澤 美智子 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (50334264)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2023: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2022: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2021: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
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Keywords | 労働法 / 日本国憲法 / 人格権 / 労働契約 / 公私法二元論 |
Outline of Research at the Start |
わが国の根本法である日本国憲法は、その具体化としての労働法が「人間のための労働法」であるべきことを指導している。にもかかわらず、現実には、企業の経済的自由を確保する「企業のための労働法」が「人間のための労働法」と同居するにいたっている。そればかりか、前者の比重が次第に増し、後者が後退を余儀なくされていることを強く意識させられる。 本研究においては、日本国憲法解釈論および労働立法・判例・労働法学という形で存在する「企業のための労働法」が、何故に、またいかにして存在するようになったのか、その形成と構造の全体像を解明し、わが国の労働法のあるべき姿と現実の姿の乖離状況の原因を究明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
「『企業のための労働法』の生成と展開」が本研究のテーマであるところ、2022年度は「生成」と「展開」に関し、次のようなことを主として明らかにした。 まず「生成」に関しては、20世紀前半に活躍し、わが国の労働法学に大きな影響を与えた末弘厳太郎が、労働契約を企業における労働者の地位の取得に向けられた地位設定契約であると考え、債権契約ではなくて、一種の身分契約だと考えていたことが、今日にいたるまでの労働法学に影響を与えていること、その結果、労使関係は、ご主人様とこれに使える奉公人との身分関係のように観念されており、たとえば使用者が配転命令権などという権利を有するという通説・判例が形成されてきたことである。これに対し、研究代表者は、労働契約は身分契約のような継続性を有する取引契約(債権契約)であるということを明らかにした。 次に「展開」に関しては、上記のように労使関係が身分関係のように観念されてきた結果、企業における懲戒処分とは、奉公人のように観念されてきた労働者が、ご主人様のように観念されてきた使用者に対して行う(身分)契約違反行為であると観念され、懲戒権という権利は一方的に使用者が有するものとされてきたことを描き出した。こうした通説・判例に対し、研究代表者は、懲戒処分は取引契約の違反行為として労使双方向から行いうるようにすること、すなわち、労使で構成される懲戒委員会のようなものの決定を経て行われるべきであり、使用者も懲戒処分の対象者となりうることを論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由の第1としては、上記・研究業績の第1点目として挙げたこと、すなわち労働契約は身分契約のような継続性を有する取引契約(債権契約)であること、したがって、使用者は身分契約におけるご主人様のように、労働者に対し命令権を持ちえないこと、換言すれば、労働者の個別的合意を得ることなく、就業規則における配転条項という包括的合意によって配転命令権を有すると考えるのは失当であるということを、ジェンダー法学会第20回学術大会(於:京都女子大学、2022年12月3日)において発表しえたことを挙げうる(学会報告演題「ケアを担う労働者とジェンダー平等」)。 理由の第2としては、上記・研究業績の第2点目として挙げたこと、すなわち、懲戒権は使用者のみが有するとする通説・判例を批判的に検討し、使用者も懲戒処分の対象となりうるような制度的仕組みを作ることの提案などを、和田肇ほか『労働法〔第3版〕』において論じることができたことを挙げうる。研究代表者はまた、『労働法〔第3版〕』において、これまで「労働者のための労働法」を実現するための方策の1つとして提案されてきたチェックオフによる組合費の徴収について、結局は使用者の手を借りて組合費を徴収するという方法であると強調し、間接的にではあるが、労働法が「企業のための労働法」と化すのを回避するためには、組合費の徴収の方法も含めて労働者の「自立にもとづく連帯」としての労働組合のあり方を模索する必要があることを論じた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の柱は以下のとおりである。 ①労働法学の通説が就業規則による労働条件決定は定型契約(約款)による労働条件決定であると説明しているためであろうが、労働法学全体を見渡しても、約款の内容が個別労働関係上の契約内容になるのか否かという点を批判的に検討している形跡がない。したがって、約款規制に関する民法学の議論を参考にしつつ、就業規則が個別労働関係上の契約となりうるための要件を検討する。また、この問題に関する通説が、いかなる法的思考によって生成されてきたのかを分析する。 ②公私法二元論が「企業のための労働法」といかなる関係をもつのかを具体的に明らかにしつつ、これが日本国憲法の定める公私法一元秩序とどう齟齬をきたすのかを明らかにし、「企業のための労働法」の生成と展開に迫る。
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Report
(2 results)
Research Products
(3 results)
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[Book] 労働法〔第3版〕2023
Author(s)
和田肇・相澤美智子・緒方桂子・山川和義
Total Pages
270
Publisher
日本評論社
ISBN
9784535806986
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