Project/Area Number |
21K01201
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 05050:Criminal law-related
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
塩谷 毅 岡山大学, 社会文化科学学域, 教授 (60325074)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2024: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2022: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2021: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
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Keywords | 被害者 / 第三者 / 間接正犯 / 共謀共同正犯 / 承諾 / 自己答責性 |
Outline of Research at the Start |
「被害者利用の間接正犯」の問題は、①強制による場合と②欺罔による場合の2つの局面で問題になる。まず、①は、背後者の絶対的強制下にあるとはいえない(被害者は意思決定の自由を完全には失っていないが、背後者によって一定程度制約されている)場合が特に問題になる。つぎに、②は、被害者に結果発生についての認識があるが、動機に錯誤がある場合が特に問題になる。 これらの問題について、「被害者の自己答責性」という行為者と被害者の関係性を元にした「事象において被害者が果たした役割」に着目し、考察を行う。
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Outline of Annual Research Achievements |
「被害者利用の間接正犯」の問題は、①強制による場合と②欺罔による場合の2つの局面で議論されているが、今年度は、①強制による場合を中心に検討した。 この点、令和3年度において既に、媒介者が「被害者」の場合の判例を中心に検討したが、今年度は、媒介者が「第三者」の場合の判例を中心に検討し、「被害者利用」と「第三者利用」を対比することによって、その特徴を浮かび上がらせた。 すなわち、この問題は、従来は伝統的な「意思の抑圧」という基準で判断されてきたが、近年のインスリン不投与事件において、媒介者(被害者の両親)に「期待された作為に出ることができない精神状態に陥らせた」という新しい基準で判断され、ホスト殺人未遂事件における「被害者利用」の場合の基準と「第三者利用」を同じ基準で判断することが示唆されたが、そこに問題はないのかを検討した。 その結果、(1)被害者利用と第三者利用とでは、被利用者(媒介者)に向けられる規範的要請に差異があること、(2)第三者利用の場合は、利用者の行為を間接正犯としなくても、共謀共同正犯として処罰することができること、(3)被害者利用の場合は「正犯の背後の正犯」の問題は生じないが、第三者利用の場合は利用者を間接正犯にすると「正犯の背後の正犯」の問題が生じてしまうことなどの観点から、「被害者利用」と「第三者利用」の場合を同じ基準で判断するのは問題があり、第三者利用の場合は、やはり、従来通り、「意思の抑圧」の基準で判断すべきと考えた。 このような観点からは、インスリン不投与事件は媒介者の行為が作為ではなく保証人の不作為であったことからこのような基準で判断されたと考えることができるとの結論に至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023(令和5)年度中に、上記実績の概要に記載した内容について、主に、強制による間接正犯の成否に関する被害者利用と第三者利用の対比、第三者利用の間接正犯における強制の程度と判断基準などの問題を検討した。具体的には、インスリン不投与事件を中心にして、オウム真理教事件、四国巡礼事件、スナック強盗事件を、財産犯と生命・身体犯に分けて、必要とされる強制の程度を検討した。その検討結果を、「強制による第三者利用の間接正犯」と題して、『甲斐克則先生古稀祝賀論文集』に掲載するべく準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
2024(令和6)年度は、最終年度であるので、今までの検討結果を踏まえて、「強制による第三者利用の間接正犯」の問題について結論を出す。それによって、「被害者利用」と「第三者利用」の場合における間接正犯の成否に関する強制の程度について、最終的な結論が得られる予定である。 これによって、「被害者利用の場合は、第三者利用の場合より間接正犯の成立範囲が広い」という判例実務の取り扱いを確認し、純粋な理論上の理由などを明らかにし、被害者利用の場合の間接正犯の成立範囲を「被害者の自己答責性」の観点から解明するなどの当初の研究計画がすべて完成する予定である。
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