金融証券市場における商品介入の法理 ―プロダクト・ガバナンス―
Project/Area Number |
21K01216
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 05060:Civil law-related
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
木村 真生子 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (40580494)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | プロダクト・ガバナンス / コンダクト・リスク / 企業文化 / 行動経済学 / 自己奉仕バイアス / 消費者保護 / サプリメント・モデル / 商品介入命令 / プロダクトガバナンス / ASIC / 顧客に対する重大な不利益 / バイナリーオプション / 金融商品の市場からの排除 / 商品介入権限 / 消費者被害 / 金融商品の設計及び流通 / プロダクト・インターベンション / リテール顧客の保護 / 商品介入の法理 |
Outline of Research at the Start |
欧州・オーストラリアでは、現在、「プロダクト・ガバナンス」という新たな規制の考え方が生まれている。これはリテール顧客を保護するために、金融商品のライフサイクルに沿って、金融商品の開発段階から業者に規制を及ぼそうとする考え方である。とりわけ、「プロダクト・ガバナンス」から生まれた「プロダクト・インターベンション(商品介入)」という考え方の下では、食品などと同じように金融商品の販売や流通が一時的に停止または恒久的に禁じられる。金融証券市場における商品介入の法理の背景とその具体的内容、実効性等を調査し、プロダクト・ガバナンスが新たな投資者保護のための有効な手段となり得るのかを検証する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は各種の文献調査により、プロダクト・ガバナンスとコンダクト・リスク(行動リスク)及び企業文化との関係を明らかにした。 コンダクト・リスクや企業文化に対する規制庁の関心が高まり始めたのは金融危機後のことである。規制庁は消費者保護の強化を図るためにより実効的な規制手法を必要とし、行動経済学の研究結果を考慮するようになった。消費者側の行動特性の検証に加え、金融事業者についても、企業文化、すなわち当該会社や従業員の思考や行動のもとになる信念や価値観がどの程度危機の要因となったのかについて分析が行われた。そこで明らかになったことは、金融事業者には消費者の利益よりも短期的な問題を重視する組織の考え方があり、消費者の利益を重視しない組織文化が構築されていたことである。 しかし、組織レベルでは、自己奉仕バイアスを抑制するための強力な介入がない限り、競争関係における攻撃性やリスクテイクが促進されるおそれがある。このため、行為の根本原因を特定し、それに対処するための積極的なアプローチが必要になる。つまり、金融事業者に消費者重視の企業文化を定着させ、これを業務プロセスやシステムに組み込むことを促すことが重要になる。これこそがコンダクト・リスク管理やプロダクト・ガバナンスの考え方である。リスク管理は、潜在的な損害を減らし、新たな計画やプロセスを確立する能動的な対応策であり、法令や規則の遵守を事後的にチェックするコンプライアンスとは異なる。金融サービスにおいてプロダクト・ガバナンスが重要であるのは、他の消費財とは異なり金融商品やサービスが無形であるため、消費者が商品の必要性や価値を理解することが難しいことにある。そのために、商品を販売する専門家が、消費者のニーズと期待に確実に応えるために商品のライフサイクルを理解することは、金融事業者の適切なガバナンスの枠組みを確立するのに役に立つ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和3年度は、豪州のプロダクト・ガバナンスに関する規定と商品介入権(プロダクト・インターベンション)の概要、制度の導入に至る背景について調査した。プロダクト・ガバナンスについては、制度実施からあまり多くの時間が経っていないため、次年度以降、実務が進み、新たな規制当局の資料や研究者及び実務家からの論文等が出てくるのを待つことにした。 令和4年度は、前年度に続き商品介入権について調査し、研究成果を公表した(「金融商品に対する介入権-Product Intervention Power」『Disclosure & IR 』第23号, 44-51頁, ディスクロージャー&IR総合研究所(2022))。なお、プロダクト・ガバナンスについては、そのコンセプトの背景にある「コンダクト・リスク」に関する考察が重要であると思われ、次年度の調査課題とした。また、今後の論文を①コンダクト・リスクとプロダクト・ガバナンスの関係、②プロダクト・ガバナンスの制度設計に分けてまとめることとした。 令和5年度は、コンダクト・リスクの検討にあたり有益な外国法分野として英国とアイルランドを選び、当該国の規制庁の文献調査を行った。また、コンダクト・リスクや企業文化と規制との関係について理論的視座を得るために、企業文化に対する規制の是非を論じたLangevoortの論文や「金融商品の製造物責任」という考え方に親和的な見解が述べられたAgarwalらの行動経済学者の論文を読み、検討を行った。しかし収集した外国語文献数が総じて多くなったことに加え、学内行政における業務負担が重なったこともあり、これらの文献の内容について分析し総合的な検討を行うことができなかった。このため、①については論文としてまとめることができず、②については読み込んだ文献の整理を進めることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
コンダクト・リスクとプロダクト・ガバナンスの関係性については、前年度までに行った研究を整理する。また、コンダクト・リスク管理やプロダクト・ガバナンスに係る具体的な制度設計については、豪州や英国等の規制庁の文献を再読して整理してまとめたい。2つの内容を統合させ、研究成果を論文として公表していく。
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Report
(3 results)
Research Products
(1 results)