Project/Area Number |
21K01235
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 05060:Civil law-related
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
小林 貴之 関西外国語大学, 外国語学部, 教授 (60834637)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥130,000 (Direct Cost: ¥100,000、Indirect Cost: ¥30,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2021: ¥130,000 (Direct Cost: ¥100,000、Indirect Cost: ¥30,000)
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Keywords | 航空保険料 / 旅客の人身損害 / 運送人の一部無過失責任 / 乗客賠償責任 / 1999モントリオール条約 / 航空運送人の責任 / 過失推定責任 / 無過失責任 / 128821SDR |
Outline of Research at the Start |
改正商法第590条は航空運送人が旅客に与えた損害に関して過失推定責任を課す一方、条約が適用される国際線においては、旅客の人身損害に対して128,821SDRまでの無過失責任を課している。我が国の国内航空運送にも条約と同様に旅客の人身損害に対する一部無過失責任を課した場合の航空保険料率の増加の有無、被害旅客や遺族への補償金の一部前払いの迅速化の有無について、関係者への実態調査により明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、我が国における国内航空運送の大部分を占める全日本空輸グループと日本航空グループへの対面によるヒアリングを実施した。ヒアリングの目的は、本研究のテーマである国内航空運送において人身事故が生じた場合における一部無過失責任の導入に対する航空会社の事業運営上の観点からの見解を聴取することである。両社から得られた回答については、各社の視点の違いや温度差はあるものに、主なものを挙げると以下のように要約できる。①国内線においても、国際線への乗り継ぎ旅客が混在している現状や、今後のコロナ禍の終息に伴い、このような乗り継ぎ旅客が急増していく可能性が高いことを考慮すると、同じ便に搭乗しながら、一方は国際線旅客として1999年モントリオール条約上の128,821SDRまでの無過失責任による保護が受けられるのに対して、他方は国内線旅客として過失推定責任の下にあるというのは、いささか不公平感を持たざるを得ない。もし大きな保険料率の増加が生じるのではないのならば、英国や韓国のように、少なくとも人身損害に対しては国内線においても、国際線と同様に一部無過失責任を導入してもよいのではないかと考える。②現在国内線における旅客からのクレームについては、非合理な要求も増えている現状を考慮すると、一部無過失責任の導入が、より多くのクレームを招いてしまうおそれがあることから、慎重に検討すべきである。③現在の国内旅客運送約款においては、旅客の人身損害に対しては、会社が積極的に損害防止の必要な措置をとったこと又はその措置をとることができなかったことを立証した場合にのみ免責されるとしている。単なる過失推定責任よりも重い責任を実際には負っているのではないかとの視点からも検討を行なう必要がある。これらの論点整理も含めて、一部無過失責任導入の実務上の影響につき各社を交えて検討を継続することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
国内航空グループ各社へのヒアリングはある程度順調に進捗しているものの、1999年モントリオール条約と同一の旅客人身損害に対する責任原則を国内線にも採用した英国航空および大韓航空への実務上の影響に関するヒアリングは、英国ロイズ保険組合への保険料率への影響に関するヒアリングも含めて、コロナ禍による各国の入国制限等により未だ実施できていない。今後入国制限が緩和つつあることから、適宜実施していくことと致したい。
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Strategy for Future Research Activity |
国内航空グループ各社へのヒアリングを行った過程において、1992年の国際線における賠償限度額撤廃に携わった退職者の方からの話を伺える機会があった。当時は旅客保護のためという理由もあったが、同時に大規模な航空機事故における運航乗務員への刑事責任の追及や遺族への補償金の支払の迅速さという要素も、賠償限度額撤廃の決断の背景にはあったとのことであった。本研究のテーマである国内線への一部無過失責任の導入に関しても、航空会社の過失の存否と切り離して被害者への補償金を速やかに支払える環境が整うとの点においては同一と考える。この点については1992年当時の航空私法研究会等の議事録に検討過程の詳細が残っている可能性があることから、調査の対象に加えていくこととしたい。
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