Project/Area Number |
21K01245
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 05060:Civil law-related
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
玉井 利幸 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (90377052)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2022: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2021: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | M&A / MBO / 支配株主 / 締出し / キャッシュアウト / 非公開化 / 締め出し |
Outline of Research at the Start |
経済産業省が2019年に公表した「公正なM&Aの在り方に関する指針」は、今後の日本のM&A法制の在り方を左右しうる極めて重要なものである。M&Aの指針は、様々な実務上の手続的な措置を提案し、M&Aを行う当事者にその採用を促し、手続的な公正性が確保された状態でM&Aが行われるようにすることで、公正なM&Aの実現を図ろうとしている。本研究は、このような指針の意図が実現するかを明らかにするために、(1)指針の提案する措置はM&Aの公正性を確保するのに十分な措置といえるか、(2)M&Aを行う当事者に適切なインセンティブを付与するような司法審査の方法はどのようなものかを明らかにすることを目的としている。
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Outline of Annual Research Achievements |
経済産業省が2019年に公表した「公正なM&Aの在り方に関する指針」(M&Aの指針)は、MBOや支配株主による従属会社の買収(締出取引)などの構造的な利益相反のあるM&Aの公正性を確保するために策定された。M&Aの指針は、公正性担保措置と呼ばれる様々な実務上の手続的な対応策を提案し、当事者にその採用を促し、手続的な公正性が確保された状態でM&Aが行われるようにすることで、公正なM&Aの実現を図ろうとしている。このようなM&Aの指針の目的・意図の実現のためには、公正な手続でM&Aが行われたかどうかの審査が適切に行われることが必要である。2023年度は、従来の裁判例において手続的公正性の有無はどのように審査されているか、それはM&Aの指針の意図・目的の実現に適した審査といえるかどうかについて検討した。 公正な手続でM&Aが行われたかどうかを判断するためには、(1)公正担保措置の選択・実施を行う対象会社の判断主体に独立性があるか、(2)構造的な利益相反の問題や情報の非対称性の問題に対処するために適切な措置が選択され、用いられているか、(3)用いられた措置に実効性があるか、について審査する必要がある。従来の裁判例では、これら3つの事項のいずれについても、十分な審査が行われていなかった。判断主体や交渉主体の独立性の審査は非常に形式的で表層的なものであり、利益相反などの問題の大きさに見合った適切な措置であるかどうかは問題にされず、特別委員会の実効性やその判断の前提となる株式価値算定書についての審査は、実質的には、著しく不合理でないかどうかを確認するだけの緩やかなものであった。従来の審査では、M&Aの指針の意図・目的が実現する可能性は高くないので、手続的公正性の有無の審査をどのように改めるべきかを検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までの進捗状況はやや遅れていると考える。本研究の進捗に遅れが生じたのは、2023年度に本研究の対象であるM&A法制の在り方に大きな影響を与える新たな事態が複数生じたからである。本研究の目的を実現するためにはそれらの検討が不可欠であると考えられるため、当初の研究計画を修正し、それらについての検討を追加した結果、遅れが生じた。 新たな事態の一つは、2023年度に「公正なM&Aの在り方に関する指針」(M&Aの指針)が公表された後に企図され完了したM&Aについての重要な公表裁判例が複数登場したことである。当初の計画の段階では、M&Aの指針の公表後に行われたM&Aについての公表裁判例がなく、M&Aの指針を踏まえて裁判所がどのような判断を行うかが不明であったため、従来の裁判例を前提として将来を展望する、仮定的な考察を多く含むものとせざるをえなかった。2023年度に新たな裁判例が公表され、より適切に裁判所の審査の在り方を検討することができるようになったため、それらについての検討も含めるように、当初の計画を修正することとした。 もう一つは、2023年8月に経済産業省より「企業買収における行動指針」(行動指針)が公表されたことである。行動指針は、本研究が対象とするMBOや締出取引のような構造的な利益相反のあるM&Aだけでなく、それ以外のM&Aも対象とする、一般的な内容を有するものである。行動指針の考え方は、その一般性・包括性から、構造的な利益相反のあるM&Aにも影響を及ぼすことになるので、構造的利益相反M&Aの研究のためには、行動指針の内容も踏まえる必要がある。行動指針も分析・検討の対象に取り入れるために、当初の計画を修正することとした。 以上述べたように、2023年度に新たに生じた事態に対応するために研究計画を修正したため、当初の予定よりも研究の進捗に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間延長後の最終年度である2024年度は、2023年に新たに生じた事態を踏まえ、「公正なM&Aの在り方に関する指針」(M&Aの指針)の意図・目的の実現を図るのに適した司法審査の方法はどのようなものかについて引き続き検討を行った上で、本研究のまとめを行う予定である。 まず、新しい裁判例の検討を行う。2023年には、M&Aの指針が公表された後に企図され完了したM&Aにおいて対価の公正性が争われた事件がいくつか公表されている。それらの事件の検討を通じて、M&Aの公表後の裁判所の判断にM&Aの指針の考え方はどのような影響を与えているか、M&Aの指針公表後の裁判所の審査はM&Aの指針の意図・目的の実現に適した審査方法となっているといえるか、なっていないのであれば、どのように修正すべきかを検討する。 次に、「企業買収における行動指針」(行動指針)の検討を行う。2023年8月に公表された行動指針は、M&Aの指針の一部を包含し、それをアップデートするような内容を含んでいるため、行動指針の考え方も裁判所の判断や審査方法に影響を与えると考えられる。特に、企業価値と株主共同の利益との関係、対抗提案の取扱い、対象会社の取締役の義務内容についての行動指針の考え方は裁判所の判断に影響を与えると思われる。今後の裁判所の審査の在り方を考える上では、行動指針の検討が不可欠であるので、行動指針の検討も行う。 最後に、2023年度までに行ってきた研究内容と、2023年の裁判例と行動指針の検討結果を踏まえ、本研究のまとめに取り組む。
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Report
(3 results)
Research Products
(5 results)