Project/Area Number |
21K01256
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 05060:Civil law-related
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
野澤 紀雅 中央大学, 日本比較法研究所, 客員研究員 (60133899)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 世話扶養 / 共同養育 / 扶養義務 / 養育費 / 親権 / 監護 / ドイツ法 / スイス法 / 共同監護 / 子の扶養 / 親責任 |
Outline of Research at the Start |
本研究の課題は、監護親のなす子の世話を父母間の扶養料(養育費)分担のあり方に反映させる可能性を比較法的に考察することにある。日本では、離婚後の監護親(多くは母)もその所得に応じて扶養料を按分的に負担する。その結果、子の世話は扶養法による評価を受けることなく、監護親は子の世話に加えて部分的にせよ経済的負担もなすこととなる。子の養育全体にかかる父母の養育負担の公平は保たれていない。本研究では、異なったアプローチにより子の世話に扶養法的評価を与えるドイツ法とスイス法を比較対照することにより、上記の可能性を明らかにする。これは離婚後の共同養育における養育費分担のあり方の検討につながるものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
前年度は共同監護と扶養義務をめぐるドイツの判例の展開を整理したが、本年度は、学説の対応と立法論の現状を中心に研究した。 判例では、従来型の引取りモデルでは、民法1606条3項2文により、非監護親だけが扶養料の支払い義務を負う。他方、対称的交替モデルでは2文は適用されず、1文の原則により父母双方が所得に応じて按分的に負担する。2文は両親の主婦婚的な役割分担を前提とする規定だからである。それらの中間にある「非対称的交替モデル」は引取りモデルの延長線上にある拡大交流と把握され、2文が適用されるが、非監護親の負担は算定表(デュッセルドルフ表)の操作により減額され得る。 こうした判例の展開を背景として、現時点での議論では主として非対称的交替モデル」における扶養料算定の実質的妥当性と法的根拠が焦点となっている。離別後の共同監護のあり方がテーマとされた第72回ドイツ法曹大会(2018年)における基調報告とその議論では、1606条3項2文の適用を制限する方向での議論と立法論が中心となっている。しかし、その一方で、子の世話のコストと配慮労働の法的承認の観点から、法政策的、社会政策的提案の枠組みにおけるより包括的な議論が必要であるとの主張も見られる。さらに、現行法による対応が可能であるとして、1606条3項1文と2文の関係を論じ、非対称的交替モデルにおける1文の適用を前提としつつ、主たる監護親の扶養料負担の軽減を2文の類推によって論証する見解もある。さらに実務面での提案として、1文と2文の組合せによる扶養料算定を主張する見解も登場している状況にある。 立法論の展開として見逃せないのは、2023年8月に連邦司法省が公表した扶養法の現代化に向けた改正の基本方針である。また、2024年1月には親子法改正の基本方針も公表され、紛争事例において裁判所が交替モデルを命じる可能性が認められていることも重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
以下の理由による。 1. 研究初年度に出席予定であった第24回「家庭裁判所会議」が新型コロナウィルスの影響により延期となったこと(2024年9月に開催され、報告者はこれに出席した)。 2. 判例が引取りモデルの扶養料算定でも両親の合算所得が基礎となると明言したことから顕在化してきた、扶養法における「システム変更」の問題を新たに検討項目に加えたこと。 3. 2023年、202年以降に連邦司法省から公表された、扶養法と親子法の改革にむけた2件の基本方針を検討する必要が生じたこと。
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Strategy for Future Research Activity |
スイスの親子扶養法の体系を把握し、その中から親の監護に対する扶養法的評価に関連する部分を抽出し、学説と判例を整理する。 スイス民法(ZGB)では、親の未成年子に対する扶養義務は、子の経済的需要(ニーズ)を充足する「金銭扶養(Barunterhalt)、子の監護・教育等、現実の養育に係る事実行為(世話)をなす「現物扶養(Naturalunterhalt)」、および子の世話によって監護親に生ずる要扶養状態をカバーする「世話扶養(Betreuungsunterhalt)」の3つの内容を含んでいる(ZGB 276条1項、2項、285条2項)。 最後の世話扶養は、ドイツ民法の1570条(子の監護教育を原因とする離婚後扶養)と1615l条(子の監護教育を原因とする非婚の父母間の扶養請求)と内容的に類似するが、2015年のスイス民法改正(2017年1月1日施行)により未成年子扶養の第3のカテゴリーとして導入されたものである。この世話扶養の処理、特にその算定方法については州(カントン)ごとのに差異が見られたところ、2018年に至って連邦(最高)裁判所(Bundesgericht)が統一的なガイドラインを示したことにより、混乱は収束されたようである。 今年度は、この間の判例および学説の展開をまとめ、それと2番目のカテゴリーである現物扶養との関連を中心に研究を進める予定である。
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