経済・社会における協調と効率性に関する理論・実証分析
Project/Area Number |
21K01399
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 07010:Economic theory-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
神取 道宏 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (10242132)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | ゲーム理論 / 学習 / 調整過程 / 行動経済学 / 実験経済学 / 機械学習 / くり返しゲーム / 協調 |
Outline of Research at the Start |
社会にとって望ましい結果をもたらす「協調的な行動」は、それを実行する個人には金銭的・心理的負担をもたらす一方で、その成果の一部しか実行する個人には帰ってこない。したがって、協調を達成するなんらかの「仕組み」を作らなければ、社会にとって望ましい結果は得られない。これは、経済学のみならず社会科学や生物学・計算機科学におよぶ重要な基本問題である。本研究は、研究代表者がこれまで達成してきた研究成果をさらに発展させることにより、協調の達成のメカニズムを、理論研究と詳細な実証分析の両面で行う。
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Outline of Annual Research Achievements |
社会における人間の協調行動や、望ましい結果をもたらす制度設計を研究するにあたっては、参加する人間が合理的に行動するとは限らないことにも注意を払う必要がある。本年度はこの根源的な問いに関する研究を進めた。 まず第一に、人間が試行錯誤や学習を通じで自らの行動を変化させ、またそうした人々がお互いに影響を与え合ったらどうなるかという問いについて、過去の研究を概観し新たな方向性を模索する研究を行った。過去の研究における「学習・調整過程のダイナミクス研究」における成果をまとめるとともに、その研究手法に内在する本質的な困難とそれを乗り越える方向について考察した。 第二に、人間の認知のくせや行動のパターンを、大規模データから機械学習の手法を使って抽出するという、新たな大きなプロジェクトを発動した。これまで、経済学が想定してきた「合理的行動」「均衡行動」から実際の人間の行動がシステマティックにずれることが、行動経済学において研究されてきたが、そこでは「扱いやすく、簡潔な」モデルづくりがもっぱら行われてきた。これに対し、近年目覚ましい進歩を上げているAI技術、なかんずくディープ・ラーニングをふくむ機械学習は、ビッグデータをつかってデータに潜む規則性を発見する強力な手法を提供している。このことに注目し、従来の経済実験データよりも一桁多いデータを用い、人間行動のパターンを見出すうえで、従来型の「扱いやすく、簡潔な」行動経済学のモデルと、機械学習モデルのどちらが優れているかということを実証的に研究した。その結果、機械学習モデルのうちディープ・ラーニングを使った手法の一つが、従来型の行動経済学モデルを大きく凌駕すること、さらにそのことを見出すためには従来の経済実験データよりも一桁多いデータが必要であることが見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
試行錯誤の調整過程や学習のダイナミクスに関する研究は、前年度末に行われた Nobel Symposium on the 100 Years of Game Theory で発表した論文をさらに拡張整理し、学術書Econometric Society monograph の1章として刊行する作業を進めた。 機械学習を使った人間行動のパターンの研究は、研究代表者が提供してきたオンラインのゲーム理論コース (COURSERA, Welcome to Game Theory) の課題の形で収集した5000人以上のデータを用い、代表的な行動経済学モデルと代表的な機械学習モデルの out of sample prediction error rates を比較した。具体的には、じゃんけんのように「相手に手を読まれないようにするため、ランダムに行動する必要がある」「相手の手を読む必要がある」という環境を実験においてトランプゲームの形で作り出し、そこで人間が実際どう行動するか、そこに何らかのパターンや規則性が見出されるかどうかということを調べた。この研究で得られた知見は、東北大学、大阪大学、New York University Abu Dhabi, Yale, Harvard, MIT, California Institute of Technology での対面研究会および、北京大学、香港科学技術大学のオンライン研究会など多くの研究会で発表し、非常に有益なフィードバックを得て研究を進展させることができた。この結果はワーキングペーパーにひとまずまとめることができた。 また、本年度8月には、ゲーム理論における代表的な国際学会である Game Theory Society の会長 President に選出された。日本人としては初のことであり、大きな成果と見ることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
学習・調整過程に関する研究は、 Econometric Society monograph として刊行する。また、機械学習を使った研究を最終的にひとまずまとめて、査読付き国際学術誌に投稿する。さらに、この研究からいくつかの派生研究を行ってゆきたい。ひとつは、この研究で得られた機械学習モデルは一種のブラックボックスであるため、モデルがとらえた人間行動の規則性を「解読」する必要がある。これは、 Explainable AI (XAI) という人工知能で活発に研究されている分野であり、その手法を参考にしつつ研究を進める。また、この研究において優れたパフォーマンスを示した深層学習モデルをつかって、実験室の人工的なゲームにとどまらず、現実において重要で興味あるデータにおいて人間行動の規則性が同様に高い精度でとらえられないかという研究も進める予定である。具体的には、テニスのサーブを分析対象にする予定であり、そのためのビッグデータを海外の研究者との協力で入手し、分析の準備を進めている。 以上のほかに、「相手の行動を見間違える時の協調の達成と進化ダイナミクス」「離散的な財の配分の一般理論の構築」「計算複雑性から見たマーケットの機能と設計」「人工知能をつかった最適制度の設計」などの課題にも取り組んでゆく予定である。
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Report
(2 results)
Research Products
(7 results)