Project/Area Number |
21K01486
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 07040:Economic policy-related
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Research Institution | University of Niigata Prefecture |
Principal Investigator |
田村 龍一 新潟県立大学, 国際経済学部, 准教授 (50546421)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2022: ¥130,000 (Direct Cost: ¥100,000、Indirect Cost: ¥30,000)
Fiscal Year 2021: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 特許間距離 / イノベーション / 特許情報 / テキストマイニング / 集積 / 知識の伝播 / 知識間距離 |
Outline of Research at the Start |
イノベーション創造につながる新知識の波及過程を、距離の概念を用いて明らかにする研究である。既存研究の成果と残されている課題のもと、研究者の社会的距離、知識のフローの物理的距離、新知識間の文書間距離という3つの距離からなる「知識空間」を定義し、特に特許申請というイノベーション創出過程における世界的な知識の伝播フロー構造をこの知識空間の中で明らかにする。 そして3つの距離それぞれの観点から不利な状況にある研究者が、イノベーション生産性を向上させるための具体的方策を提案する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、知識のフローの構造を定量的に明らかにするための基盤的コンストラクトである「知識距離空間」の構成軸のひとつである物理的距離軸における、特許で表される新技術の物理距離の計算作業を主に行った。日本の特許庁やIIPパテントデータベースといった標準化済みデータセットに記載される特許書誌情報には必ずひとつ以上の申請人情報があるが、申請人の場所は特に民間企業の場合は企業本社など知財管理部門の住所が記載されることがほとんどである。そこで発明人情報を新技術が生まれた場所の主要な情報とみなし、複数発明人がいる場合の特許間距離の定義などを行った上で、1970年以降からの特許が生まれた場所の2地点間距離(km)をすべて計算した。 その上で、知識の伝播を捕捉するための特許引用関係が、どの2地点において発生したかを確認した。ここでいう確認方法とは、従来の経済地理学・地域科学などで明らかになっている、伝播の局所化に基づいた手法である。ある新知識が伝播する地理的範囲(km)を統計的に定量化するために、この新知識を引用する特許と、この引用特許と技術属性が類似しているが引用しない特許の、新知識を起点とした地理的広がりを比較して、引用特許が統計的に有意に多く観察できる距離を知識の伝播距離とみなしたのである。ただし、技術属性の類似性に関して本研究の特色の一つである「既存の特許技術分類に頼らず、特許文書から算出した技術類似性メトリック」を用いる予定であったが、現在までの進捗状況で述べたように未だ完成していないのために既存の技術分類を採用せざるを得なかった。この作業を時代の異なる2つのコホートで分析したところ、日本の技術間距離は、10年間で120kmから200kmまで拡大したことが判明した。この研究成果は、2024年3月12日に開催された「第11回国際経済研究ワークショップ」(新潟県立大学)にて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究ではイノベーションが展開する過程を定式化するために「知識距離空間」を提唱し、これの具現化に向けた作業を続けている。知識距離空間のメトリックのひとつである技術距離の算出をする際に、必要なサブタスクである、特許文書の日本語テキストに関する自然言語処理のクオリティに大きな課題が生じている。特許申請技術を記述するための学術用語抽出作業において、同一内容を示すと思われる固有表現のバリエーション、一般名詞や動詞を含めた技術の記述文の係り受け構造の把握といったところが、大きな課題である。この点については、(固有)名詞の標準化というシンプルな前処理で妥協せざるを得ないかもしれず、その意思決定を最終的に下す前に、自然言語プログラム関数のさらなる改善を時間の許す限り行いたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の中心的コンストラクトである知識距離空間の具現化にあたり、社会的距離はグラフ構造のネットワーク距離で、物理的距離については発明が生まれた住所をジオコーディングしたものを用いた2点間取引(移動)距離、技術距離についてはコサイン距離を用いた類似度およびその派生概念を使って数値化が可能である。これら3つのメトリックでの距離計算にあたっては学術研究の進展に伴い継続的に新しいものを採用し、置き換えていけばよい。本研究では、技術の伝播過程はこの空間の技術を表す点移動によって捕捉されるが、そのような置き換えによって大きく結果が変化しないことを示すことが今後必要な検証作業であるといえる。
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