Project/Area Number |
21K01564
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 07060:Money and finance-related
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
永野 護 成蹊大学, 経済学部, 教授 (20508858)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2024: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
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Keywords | オンラインバンキング / リスク回避度 / プロスペクト理論 / ディスポジション効果 / 家計債務比率 / 行動バイアス / 株式市場参加率 / 家計の金融資産構成 / 投資リスク選好度 / 住宅負債 / 家計ファイナンスのライフサイクル・モデル / フィンテック / 投資のリスク選好度 / リスク調整済み収益率 / 金融包摂 / 家計の資産選択 / 家計の債務管理 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、インターネット・バンキング等の銀行のオンライン・チャネルを利用する家計が、利用しない家計よりも株式投資比率が高く、資産蓄積がより進行する、新たな家計ファイナンスの実証的証拠を提示する。オンライン・チャネル利用が投資のリスク選好度を高める理論モデルを導出し、金融リテラシーが高い家計ほどオンライン・チャネルを選択し、高い株式投資比率と投資収益率を経験している仮説を検証する。家計の代表的な資産・負債として、住宅資産、住宅債務を想定し、オンライン・チャネルを利用する家計は利用しない家計よりも、住宅保有率と債務対所得比が高い反面、金融困難に陥る確率が低いことを立証する。
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Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は、2つの国際学会、セミナーでの報告、国際学術誌への投稿ならびに改訂、3回目のマレーシア家計向けアンケート調査、一般経済誌での本研究成果の発信を実施した。本研究は、令和3年度から4年度にかけ、金融広報中央委員会(日本銀行情報サービス局)の「家計の金融行動に関する世論調査」の2007年~2020年個票データを用い、オンライン・バンキング利用者の、証券投資におけるリスク選好度が、銀行ATM利用者よりも、高いことを実証的に明らかにした。令和5年度は、この研究成果の学会報告では、マレーシア・マラヤ大学、サンウェイ大学でのセミナー報告を行い、参加者からコメントを得た。これらのコメントを受け、令和5年度に、新たにオンライン・チャネルを利用する家計の金融行動に加え、実物店舗のみを利用する預金者の金融行動の行動バイアスの分析を行い、改訂版に反映した。マレーシア現地調査では、3回目のマレーシア家計向けアンケート調査を実施するとともに、この結果を、令和3年度、令和4年度の結果と比較研究する分析を行った。令和5年度調査においても、クアラルンプール連邦特別市11地区別に、銀行店舗数データをこの個票データにマッチングし、3カ年分の個票データと銀行店舗データの統合データセットを作成した。これらの成果を反映した論文を国際学術誌へ投稿し、その後、改訂要望を求めるレフェリー・レポートを授受し、改訂作業を進めている。令和5年度は、新たに本プロジェクトの研究成果として、令和3年度から5年度の家計個票データを用いた論文を、SSRN3760408から2024年3月に公開している。これらに加え、上記以外では、週刊金融財政事情などの3つのビジネスマン向け金融誌に、研究成果の概要を紹介している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、日本の家計個票データを用いたワーキングペーパーは、過去3年度で計7回の国際学会または海外セミナーにおいて発表し、多方面から修正すべきコメントとその評価を得た。これらのコメントを、ワーキングペーパー4版に反映し、また新たにマレーシアの家計に焦点を当てたワーキングペーパーを公開した。令和5年度は、こうしたコメントのうち、オンライン非利用者の金融行動バイアスに関する実証結果を加え、ワーキングペーパー4版に織り込んでいる。本研究が、順調に進捗している理由は、日本銀行からの個票データが令和3年度上期時点で、分析可能な状況にあったこと、ならびに先行研究調査が令和4年度までに一定程度進捗していたためである。日本とマレーシア家計の金融行動に関する比較分析では、日本円の対USドルレートが大幅に下落したため、クアラルンプールでの現地調査委託費が昨年度の見積もりの増加額よりもさらに大幅に割増しとなった。他方、令和3年度、4年度に現地での委託調査を行った現地調査会社に、令和5年度も再委託を行ったが、現地調査は当初計画したスケジュール通りに実施されている。令和3年度、4年度に委託を行った現地調査会社Vodus社が、すでに家計の標本を保有しており、予め所得階層別、地域別、世帯主の職種別にランダムなサンプルを保持していることも、現地調査が順調に進捗した理由のひとつである。過去の調査に比べ、令和5年度は、回答者である家計側もモバイル端末を用いる回答に慣れていたため、以前よりも迅速に個票データの収集が進んだ。かかる経緯により現地調査が順調に進捗したため、これらの家計個票データを用いた分析もおおむね順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は、現在改訂中の論文を国際学術誌に再投稿し、掲載を目指す。また、令和5年度にワーキングペーパーを公開した日本とマレーシアの家計金融包摂の比較研究は、令和6年度も複数の国際学会、セミナーでの報告を行う。令和6年度は最終年度として、複数の国際学会での報告を経て、国際学術誌へ投稿、掲載を目指すことで研究成果の国際的な発信を行う。また、今年度はクアラルンプールにおいて、アンケート調査を回答した家計から、ランダムに20~30世帯を抽出し、アンケート調査で明らかにすることができなかった点、および本研究の仮説について、現地で定性情報を収集し、検証する。さらに、マレーシアでは、クアラルンプール以外の都市により、家計の金融包摂の状況が異なる。マレーシア南部のシンガポール国境に隣接するジョホールバルは、所得水準が高く、またシンガポールの金融機関の店舗進出が顕著である。一方、マレーシア北部クランタン州、ペラ州は、低所得家計比率が高く、また宗教上もイスラム人口が多い。こうしたマレーシア国内の民族的・宗教的多様性を考慮に入れるため、令和6年度は、マラヤ大学との連携を通じて、現地の地域情報を収集した上で、最終成果にそれらを反映することを目指す。また、令和6年度は、本研究成果を、イオン銀行や楽天銀行などのオンライン・チャネルを主力とするリテール専業銀行に対し、将来の産学共同研究の手がかりとするための発信を実施する。
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