確定給付年金の積立金の投資効率評価 ~エージェンシー問題と認識バイアス~
Project/Area Number |
21K01578
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 07060:Money and finance-related
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中島 英喜 名古屋大学, 経済学研究科, 准教授 (90510214)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,640,000 (Direct Cost: ¥2,800,000、Indirect Cost: ¥840,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2021: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 政策ポートフォリオ / リバランス / 閾値ベースのリバランス / 最適化ベースのリバランス / 探索的アプローチ / ガバナンスの不全 / 認識バイアス / 政策ポートフォリオの選択 / 政策ポートフォリオ選択後の診断 / 平均・分散効率性 / 期待値の評価値と真値の乖離 / 効率性の過大評価 / Bayes推定 / Black and Litterman / 積立金の運用 / リスク・テイク / マネジャー選択 / 最小分散ポートフォリオ / 確定給付年金の積立金 / 効率的な資産運用 / 規範的なリスク・テイク / エージェンシー問題 |
Outline of Research at the Start |
厚生年金保険に代表される確定給付型の年金制度(年金プラン)では、加入者は、プラン・スポンサーの選択や資金拠出の裁量を持たず、プラン・スポンサーの意思決定にもほとんど関与できない。このため、その規律付けは加入者にとって重要な問題になる。
本研究は、事後的な投資の損益だけでなく、フォワード・ルッキングな投資リスクの負担計画とその管理実績に着目する。これによりプラン・スポンサーの意思決定の問題点もしくは不合理な点を体系的にチェックする枠組みを整備する。そして、プラン・スポンサーの意思決定の問題点を整理し、その原因を制度もしくは担当者の認識バイアスの観点から検討する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は確定給付型年金の積立金運用に関して、制度運営者の意思決定を定量評価してその合理性を問う。そのため下記の3目標を設定した。①まず公開情報を用いて外部の専門家が制度運営者の意思決定を一貫して定量評価できる手法を検討する。②次に厚生年金保険等のケースにこの評価手法を適用する。③そして意思決定の問題点を整理し、その原因を制度や運営者の認識バイアスの観点から検討して改善策を提案する。3年度目である今年度は、上記②の評価を部分的に行い、昨年度に続き③の意思決定について下記の分析と評価を行った。 積立金の標準的運用は、投資対象を少数の資産クラスに分類し、その資金配分計画(政策ポートフォリオ)をまず決定する。この政策ポートフォリオに対する追加的リスク・テイクは、銘柄選択とタイミングに分けられる。日本の機関投資家の多くは、前者には正の付加価値を期待するが後者にはそれを期待しない。このため後者の意思決定は、意図せざる資産配分の悪影響の抑制と取引コストを比較考量するリバランスの問題になる。 そこで現在webで利用できる情報を用いてリバランスに関するパズルや問題点を確認し、これらの問題が機関投資家のガバナンス不全に起因する可能性を指摘した。また不全の原因として上記の比較考量の技術的困難を指摘した。この考量に関する先行研究の多くは閾値ベースのリバランスを扱うが、本研究では、最適化ベースの戦略からスタートし、Kritzman等(2009)の探索的方法を紹介した。そしてこの方法の問題点と改善策を提案し、中島(2020)の方法が良い解決策になることを確認した。さらにこの方法を用いて、機関投資家が採用しているリバランス戦略に大きな改善余地がある可能性を確認し、目に見えないリスクを目に見えるコストより過小評価する場合、この改善余地が認知バイアスの大きさにあたることを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
感染症対策の中、年度初めに自身の健康上の問題が新たに分かった。このため長距離の移動を引き続き見合わせた。この状況を受けて当初の計画を修正し、移動を要さない作業や課題を先行的に進めたが、情報収集のボトルネックも少し顕在化したため、当初予定より進捗が遅れる可能性が出てきた。 本研究の中核となる定量評価は主に探索的アプローチに基づく。このアプローチでは複雑な時系列シミュレーションを数多く試行錯誤する。分析精度や評価効率を上げるには評価対象の自由度を増やす必要があるが、それは分析時間や計算機資源の加速度的な増加と言うトレード・オフをもたらす。これを抑えるには、分析開始前にできるだけ多くの情報を集め、分析の自由度を予め上手く制約することが肝要になる。 本研究では主にwebを介して開示された公開情報を利用する。しかしこれら公開情報のアクセス・リンクは1~数年で消えるものが少なくない。このため本研究では、東京の協力者のライブラリを利用する予定であったが、上述の理由によりこの予定が進んでいない。このため昨年度は、現時点でwebを介して入手できる情報に基づき、できる限り上手く分析の自由度を調整することで、今後の分析につながる重要な仮説の提示とその定量評価を行った。今後、情報収集のボトルネックが十分解消できない場合、当初予定より進捗が遅れる可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の「研究実績の概要」に述べたように、本研究は3段階で進める予定である。現状、①定量評価のフレームワークの整備はある程度目途が付いており、②の段階についても大規模な機関投資家についてはある程度の情報(比較的最近のデータ)は収集できている。 今後はまず②の段階の情報に関して、リンク切れでwebから直接参照できない情報の収集を行って十分な情報の確保を図る。そして上記の「現在までの進捗状況」で述べた分析の自由度の選択をアップデートして、評価対象とする機関投資家の選定、および分析にかかる時間と必要資源を見極めた上で最終的な評価に向けた定量分析を進める。なお自身の健康上の問題が出たため、公共機関を使った長距離の移動は引き続き見合わせる予定である。このため必要に応じて公共交通機関によらない移動も検討するとともに、場合によっては利用可能な手元情報による分析を追加的に発展させつつ、十分な情報を確保して当初目標を達成するため研究期間の延長申請も選択肢とする。
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Report
(3 results)
Research Products
(3 results)