Project/Area Number |
21K01641
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 07080:Business administration-related
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
奥山 雅之 明治大学, 政治経済学部, 専任教授 (90710096)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2022: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2021: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
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Keywords | 国際経営 / グローカル / 事業承継 / のれん分け / 地方創生 / 中小企業 / 異質性と同質性 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、地域資源を活用したローカルビジネスのグローバル化(グローカルビジネス)の展開形態としての「越境のれん分け」を対象として、その有効性と課題、および組織マネジメントの方向性を明らかにする。現在までのグローカルビジネス研究を基礎としながら、組織戦略としての「越境のれん分け」の有効性を検証するとともに、中小企業の「越境のれん分け」を活用したグローカルビジネスのプロセスから規則性・共通性を見出し、新たなマネジメント理論体系を構築する。インバウンドによる地方への経済波及が不透明な現在、本研究により、インバウンドとグローカルビジネスとの両輪による地方経済活性化をめざす。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、主に中小企業による海外展開形態としての「越境のれん分け」に焦点を当て、その有効性と課題、および担い手の特性を明らかにするとともに、「越境のれん分け」にみられる特有のマネジメントについて、その理論的枠組を検討する。「越境のれん分け」事例の質的研究を中心に実施し、「越境のれん分け」プロセスの規則性・共通性を探索し、特有のマネジメント手法の理論的枠組について仮説検証を行い、「越境のれん分け」に関する経営理論の基礎を構築する。 第3年度(令和5年度)は、国内ののれん分け事例を各種資料から収集し、これらの分析を中心に進めた。のれん分けとフランチャイズの相違についても、研究的見地からある程度の確定ができたとともに、越境のれん分けのマネジメントの体系化に向けた基礎的知見が備わった。さらに年度末には、海外調査によって追加事例の把握を実施した。 現在までの研究の中で、以下の点が明らかとなっている。 本家は、別家に一定の勤務あるいは事業を経験させることで事業の地域性(異質性)を理解させるほか、事業の異質性を失わないために必要に応じて別家に対してサポートを実施する。他方、別家は、異質性を理解しながら、海外事業を「異質性と同質性の両立」へと調整していく役割を担っている。この調整を支えるのが、本家と別家との人的結合や相互信頼である。一方で、本家と別家との間で齟齬が生じ、海外展開の方針などについて本家と別家の合意が困難となることで、日本での特性(異質性)やブランドイメージを損ないかねないという課題も明らかになった。ただし、こうした課題に対しては、契約の不存在や曖昧性を人的結合で補完したり、屋号を統一しないことによってブランド毀損リスクを回避したりする方法、すなわち、基本的には別家に任せ、「合意を取り付けなくても問題ない仕組み」を導入するなどして回避を図っている事例がみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
日本最大級の海外ビジネス支援プラットフォーム「DIGIMA(出島)」を運営する株式会社Resorzの協力により、当初、第2年度(令和4年度)に実施を予定していたアンケート調査が第1年度(令和3年度)に前倒しで実施できたことに加え、第2年度(令和4年度)は、M&Aによる中小企業の事業承継を支援する上場企業の協力により、第2回目のアンケート調査を実施することができた。 一方、飲食店、酒蔵、専門サービス業など「越境のれん分け」を実施しているいくつかの企業へのインタビュー調査も実施することができ、これらをもとに学術論文作成プロセスに入ることができた。しかし、COVID-19の影響が残り、企業側の受け入れ態勢が整わなかったこともあり、遠隔地の企業へのインタビュー調査、特に海外企業への調査が遅れ、2023年度末となってしまった。新たに発見した事例の分析に一定程度の時間が必要となり、2024年までの延長を申請した。国内遠隔地へのインタビューも、事例の発見ができなかったため実施できなかった。また、追加アンケートについても、対象者の把握が難航し、実施できなかった。このように、追加事例の把握や分析が進まなかったことにより、越境のれん分けにおけるマネジメントの体系化についても、その精緻化が進展しなかった。 このように、事例の追加把握や分析、国内遠隔地及び海外のインタビュー調査は後倒しとなり、これによるマネジメントの体系化に遅れが生じたことから、全体としてはやや遅れている状況にあるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
第4年度(令和6年度)は、追加事例の分析とともに、遅れている「中小企業のグローカルビジネスにおける越境のれん分けに関する特有のマネジメント手法の体系化」を中心に実施する予定である。現時点では、「越境のれん分けによる異質性と同質性の二重マネジメント」の必要性についてはまだ課題はありつつも定性的・定量的に仮説検証が進みつつある。すなわち、本家(地域中小企業)からは、地域資源による異質性を確保して差別化による競争優位を確保する役割を担い、別家に対してマネジメントを行う。一方、本家からのれん分けを受けた別家(海外展開の主体)は、ターゲットとする海外市場に対し、市場への受容性を高める同質性を確保するためのマネジメントを行う。このように「越境のれん分け」では、フランチャイズよりも海外展開主体の自由度が高いゆえに、別家、本家が異質性と同質性を調整しながら海外事業のマネジメントを行う「二重のマネジメント」となる。 一方、一連の研究プロセスのなかで、追加の研究課題がいくつか浮上している。第一には、前年度から研究課題となっていた「越境のれん分け」による本家の事業に対する多様な寄与の解明である。別家が本家に所属していた際に何を教えるのかを中心に、これもマネジメント手法の体系化に組み込んでいくように研究を推進していく。第二には、本家と別家との収益分配の問題である。これについては、事例において、収益分配があいまいであることを前提として直接の収益以外のメリット享受を重視する傾向がみられ、そもそも収益分配が課題・問題点といえるかどうかを含めて考察することが必要と考えている。
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