Project/Area Number |
21K01793
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 07100:Accounting-related
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
矢内 一利 青山学院大学, 経営学部, 教授 (10350414)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2021: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
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Keywords | 戦略タイプ / ラチェッティング / 予算(業績目標) / 受身型 / 分析型 / 経営者予想利益 / 防衛型 / 探索型 / 戦略特性 / ラチェット効果 / 利益調整 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、データベースの財務データを用いて、Miles and Snow(1978)が唱えた戦略タイプ(以下ではM&S戦略とする)の1つである受身型の企業で利益調整を行う傾向が強いかどうかについての検証を行う。これにより、M&S戦略と外部報告システムとの関係について、経営戦略論に基づく新たな理論を構築する。 また、予算の代理変数である経営者予想利益(決算短信における予想利益)の設定プロセスに受身型戦略が与える影響についても検証を行う。この検証により、M&S戦略と業績管理システムとの関係、業績管理システムと外部報告システムとの関係について、経営戦略論に基づく新たな理論構築を行うこととする。
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Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、Miles and Snow(1978)が唱えた戦略タイプである分析型(Analyzer)・受身型(Reactor)の選択と利益目標である予算目標との関係についての探索的な検証を、企業が公表する決算短信における予想利益(経営者予想利益)を予算の代理変数として用いて行った。 検証に際しては、先行研究に基づき、①売上高販管費率、②売上高従業員比率、③売上高成長率、④直近の5期における期末従業員数の標準偏差、⑤売上高研究開発費比率、⑥有形固定資産集約度という6つの変数をまず推定した。次に、分析期間の業種・年度ごとで①~⑥の各変数のそれぞれについて、値の大きさでサンプルを5つのグループに分けて点数をつけ、この点数をもとに企業が選択している戦略を直近の3期間(当期と過去2期)の各期でまず推定した。このように直近の3期間のそれぞれで推定した3つの戦略は、「短・中期志向戦略」とする。さらに、①~⑥の変数について、直近の過去7期の平均をそれぞれ算定し、当期の戦略を推定する。この戦略を「長期志向戦略」とする。3つの短・中期志向戦略と1つの長期志向戦略の計4つのうちすべてもしくは3つで同じ戦略であった場合は、当該戦略をその企業の戦略とする。そのうえで、ある年度において、4つの戦略(3つの短・中期志向戦略と1つの長期志向戦略)のうち2つが同じ戦略で、残り2つが別の戦略の場合、当該企業を受身型戦略を選択した企業とした。加えて、ある年度において、4つの戦略の中に防衛型戦略・探索型戦略・分析型戦略の3つが含まれている場合も、当該企業を受身型戦略を選択した企業としている。 分析の結果、分析型戦略を選択した企業では経営者予想利益のラチェッティングの存在が確認され、間接的に予算のラチェッティングの存在が確認された。しかし、受身型戦略を選択した企業ではラチェッティングの存在が確認できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の本研究における検証では、分析型戦略を選択した企業では予算のラチェッティングが存在していたことが示唆された。これに対し、受身型戦略を選択した企業では予算のラチェッティングが存在しない可能性が明らかとなった。これらのことから、受身型戦略を選択すると、コミットメントの程度を強めて、予算のラチェッティングの程度が非常に弱まってしまう可能性が示唆されたといえる。つまり、環境の不確実性の低さを所与としても、受身型戦略の企業における予算厳守の程度がコミットメントに与える影響がさらに大きいため、コミットメントが非常に強められ、ラチェッティングの程度が非常に弱まった可能性が考えられる。 昨年度までの分析では、探索型(Prospector)の戦略を選択した企業では予算のラチェッティングが存在することが示唆されたのに対し、防衛型(Defender)の戦略を選択した企業では予算のラチェッティングが存在しない可能性が示唆されている。これは、探索型戦略を選択した企業の予算のラチェッティングの程度が、防衛型戦略を選択した企業より大きいことを示唆している。 昨年度の分析結果と今年度の分析結果を踏まえると、分析型戦略を選択した企業における予算のラチェッティングの程度は探索型戦略を選択した企業よりも小さい可能性が考えられる。また、受身型戦略を選択した企業では、防衛型戦略を選択した企業と同様に予算のラチェッティングが存在しない可能性と、探索型戦略もしくは分析型戦略を選択した企業よりも予算のラチェッティングの程度が小さい可能性が示唆されたと言える。ただし、これらの結果が予想されるとはいえ、厳密な比較を行うためには、環境の不確実性の代理変数などを含めた精緻な分析モデルが必要である。しかし、現在の時点では分析モデルがやや不十分なものとなっている。そのため、分析モデルの精緻化が早急に必要な状況であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の課題としては、ラチェッティングを分析するモデルの精緻化がまずあげられる。本研究では、ラチェッティングの程度に影響を与えると予想される環境の不確実性や予算厳守の程度などの要因を考慮した分析を未だに行えていない。特に、環境の不確実性については、様々な先行研究で財務データをもとにして推定した変数が用いられている。よって、環境の不確実の代理変数を用いた分析を今後行う必要があろう。 また、Miles and Snow(1978)が唱えた戦略を測定する手法の精緻化も今後の課題としてあげられる。昨年度と今年度で行った分析では、Bentley et al.(2013)とAnwar and Hasnu(2017)に基づき、財務データを用いて推定した6つの変数をもとに、4つの戦略タイプの分類を行った。しかし、Miles and Snow(1978)が唱えた戦略に影響を及ぼす要因としては様々なものがあると推測される。ゆえに、他の要因を検証したうえで、戦略タイプの推定を行う必要があろう。 加えて、本研究の分析対象である受身型戦略を選択した企業のサンプルは、4つの戦略(3つの短・中期志向戦略と1つの長期志向戦略)のうち防衛型戦略が2つもしくは分析型戦略が2つとなっているサンプルと、4つの戦略のうち分析型が2つもしくは探索型が2つとなっているサンプルからなっていた。防衛型戦略から探索型戦略へ、もしくは探索型戦略から防衛型戦略へというように、対照的な戦略への変更を試みた企業は皆無であった。さらに、4つの戦略の中に防衛型戦略、探索型戦略、分析型戦略という3つの戦略が混在していた企業、すなわち受身型戦略の定義にもっとも当てはまるような企業も皆無であった。以上のことから、受身型戦略を選択した企業の抽出については、先行研究の検討を充分に行った上で、新しい手法を構築することも予定している。
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