生物資産会計および自然資本会計を手掛かりとする会計全体枠組みの再構築
Project/Area Number |
21K01797
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 07100:Accounting-related
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
戸田 龍介 神奈川大学, 経済学部, 教授 (00271586)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,640,000 (Direct Cost: ¥2,800,000、Indirect Cost: ¥840,000)
Fiscal Year 2024: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2021: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 生物資産 / 公正価値 / 生物資産公正価値利得 / 農業会計 / 国際会計基準 / IAS第41号「農業」 / 複式簿記 / 農産物 / 農林漁業上場企業 / 自然資本 |
Outline of Research at the Start |
現在、会計(研究および実務)は岐路に立っている。現代会計は、資本市場における投資意思決定に役立つことを第一義的な役割としている。この現況に対し本研究は、会計の本来目指すところは、そのような一方向のみを向いた投資意思決定有用性ではなく、投資家のみならず多様な利害関係者が、株価との関連性のみならず多様な意思決定を行うのに真に役に立つ情報を提供することであると見定めるものである。そこで、これまで常識とされてきた会計を、特に会計測定および測定結果の公表形式について、生物資産および自然資本というこれまで注目されてこなかった新たな視座から見直し、SDGsを重視する時代にマッチした新たな会計の再構築を図る。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度に引き続き、国際会計基準(IAS)第41号「農業」適用企業における公正価値測定に関する調査を進展させた。本年度前半の調査においては、国際財務報告基準(IFRS)を適用する中国最大規模のオレンジ農場経営企業グループであるAsian Citrusグループの2019年度アニュアルレポートおよび5年度分(2015~2019)財務情報要約表から、次のような会計的特徴を把握した。それは、2015年度には1,332,482千人民元もあった生物資産が、2016年度にはいきなりゼロとなったことである。これは、生物資産を保有する連結子会社の正確な帳簿記録にアクセスできないという理由からだとされていた。ここからは、多くの仮定・前提に基づき計算された生物資産の公正価値測定額の脆弱性がはっきりと確認された。 本年度後半は、アフリカの林業投資会社であるWoodboisグループの2010年度~2019年度アニュアルレポートを対象に調査を行った。調査結果における焦眉は、2013年度において突然かつ日本円にして約193億円もの巨額の生物資産および生物資産公正価値利得の計上が行われたことである。計上理由は、当該生物資産の公正価値に対し初めて信頼に足る測定が可能になったからだとされる。しかしながら、測定可能ならばとにかく会計的に認識していくという姿勢には疑問を感じざるを得ない。IAS第41号「農業」において規定された、生物資産は信頼性が保たれる限り公正価値で測定されるべきであり、その当初認識額はその期の損益として認識されるべきとする会計処理およびその処理を支える会計思考は、資産の増加イコール利益であるという一見複式簿記の構造に寄り添ったものに見えながら、会計全体に対する信頼性を崩壊させる危険性をはらむ、実は問題のある会計処理および会計思考であるように思われてならなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究において重要だったのは、国際会計基準(IAS)第41号「農業」を適用する世界の上場農企業のアニュアルレポートの収集である。当該アニュアルレポートの収集において、ロンドン証券取引所のメンバーであるMergent社の日本支社マージェント・ジャパン株式会社が仲介する、Mergnent Archivesへのアクセス権を得ることが出来たのは、本研究課題の進捗状況においては大変重要な意味があった。Mergnent Archivesに収容されている世界の上場企業のアニュアルレポートのうち、「生物資産」のキーワードでヒットするアニュアルレポートを出来るだけ、できれば2010年度~2019年度分をセットで収集することが可能となった。なお、Mergnent Archivesへのアクセス権は、マージェント・ジャパン日本支社との交渉により、2025年3月末まで特別に延長させてもらっている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記【現在までの進捗状態】においても記したが、世界の農林水産企業の大量のアニュアルレポートにアクセスする権利を、本研究予算により2025年3月末まで取得してある。よって今後は、当該アクセス権をフル活用し、できるだけ多くの世界の上場農林水産企業が発行するアニュアルレポートを収集していく。また同時に、そうして収集したアニュアルレポートのうち、生物資産に対する公正価値測定において顕著な会計的特徴を有し、かつ2010年度から2019年度までの10年間のアニュアルレポートが揃う農企業グループを抽出し、当該農企業グループのアニュアルレポート分析を収集と同時に進める予定である。
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Report
(3 results)
Research Products
(5 results)