The Conception of National Identity in Germany as an "immigration country"
Project/Area Number |
21K01868
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 08010:Sociology-related
|
Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
佐藤 成基 法政大学, 社会学部, 教授 (90292466)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
|
Budget Amount *help |
¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2021: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
|
Keywords | 国籍法 / ドイツ / ヴァイマル共和政 / 民族政治 / 国民の自己理解 / ネーション / 移民国 / 移民政策 / 難民危機 / 統合政策 / ナショナル・アイデンティティ / 移民 / シヴィック・ネーション / エスニック・ネーション |
Outline of Research at the Start |
ドイツは現在「移民の国」としての体制を整えつつあり,その人口構成も出自や文化などにおいてより多様に なっている。こうした「新しいドイツ」において,そのネーション の有り様がドイツの人々によってどのように理解され,語られているのか。本研究はそれに ついて,2010年代以後に焦点を当て,移民の統合や移民・難民の受け入れに関する公的な場での論争を検討することによって明らかにする。そのための分析枠組みとして,「シヴィック/エスニック」という伝統的な二項図式に代え,「リベラル/コミュニタリアン/伝統主義/血統主義」という四項図式を提案する。
|
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ドイツでの現地調査ができなかったため、昨年に引き続き、ドイツ国籍の歴史を再検討することにより、ドイツ国籍とドイツの国民的自己理解の関係についての歴史的知見を深めた。特に今年度は、ヴァイマル期における国籍政策について、歴史的一次資料を用いながら、それとエスノ文化的な(ないしエスニックな)ドイツ民族概念との関係性に注目しながら考察した。資料に関し、ドイツの図書館や文書館と直接交渉することでデジタル化されたデータを入手することができた。 第一次大戦期からヴァイマル共和政期にかけて,1913年制定の国籍法それ自体に大きな変更が加えられることはなかった。しかし,ヴァイマル共和政下での民主化や福祉国家化によって国籍が国民にとって持つ実質的機能が強まった点,戦後の領土喪失で国籍の範囲そのものにも変更が生じたという点では無視できない変化がみられたといえる。さらに,戦争中から戦後にかけて,ドイツ軍の東方侵攻,ヴァイマル期における国境外の民族ドイツ人マイノリティの保護・支援をめぐる「民族政治」の展開を通じて,国家を越えた文化と血統の共同体としてのドイツ民族概念が実体性を持つようになると,それと連動して「種族」というエスノ文化的概念が帰化政策における中心的な基準として用いられるようになる。帰化政策は,1920年代後半に「異種族の外国人」に対してリベラルな方向に向かう兆しも見えたが,1930年にはむしろエスニックな排除性が急速に強まった。それは,帰化の実数にも反映されていることが確認できた。 とはいえ国籍法それ自体を,「ドイツ民族」への帰属を国籍の基礎に据えるようなエスニックな規定へと修正しようという試みはほとんどみられなかった。「国家籍」を廃して「帝国籍」に統一することと女性の国籍を自律化させることが,ヴァイマル期における国籍法改定の主なテーマだったが,ともに実現されることはなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度はコロナによる出入国の管理はだいぶ緩んだとはいえ、まだ流動的な部分があったので、ドイツでの資料収集は2021年度同様中止せざるをえなかった。そのため、昨年度に引き続き、現代の問題よりも歴史的な問題へと重点を移して研究を続けた。その結果、当初の研究目標とは違った方向に進んでしまった。 しかし、19世紀末から20世紀前半にかけてのドイツはすでに「移民国」であり、移民の排除と包摂をめぐるダイナミクスのなかでドイツのナショナル・アイデンティティも変化していることがわかった。2021年度は1913年の国籍法改定において血統原理が徹底される過程の中で、国籍をエスノ文化的に理解された「ドイツ民族の保護」のための制度と解釈する言論が発生したこと、また2022年度はヴァイマル共和政期の帰化政策が「異種族外国人」の排除という観点から次第に「エスニック化」されてきたことがわかった。それは、「「移民国」ドイツのナショナル・アイデンティティ」というこの研究テーマにとっても重要な知見であったと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
2023年度は9月に、ドイツのベルリンでの資料収集を計画している。現在のドイツ連邦政府は国籍法の改定を進めているが、野党がそれに反対しているだけでなく、与党内にも異論を唱える政党がいるため、まだ先は見通せない。このなかで、どのような立場がせめぎ合っているのか、国籍法改定の何が争点になっているのかなどについて調査を行いたい。これまで通り、雑誌、新聞、政党や政府の刊行物が調査の中心だが、現在進行形の問題でもあるので、移民関係の行政の実務者に話を聞いてみることも考えている。 また、昨年度まで続けてきた移民と国籍政策の関連性からドイツのナショナル・アイデンティティの変容を探る研究も継続させたい。今年度はナチス期と第二次大戦後について、歴史的な資料を用いつつ研究を進める。これが終わった段階で、2021年度からの研究を含め、19世紀から現在までのドイツにおける国籍の形成と変容の歴史をたどる研究が完成することになる。それについて、できるだけ早いうちに単著にまとめ、出版することを計画している。
|
Report
(2 results)
Research Products
(8 results)