Project/Area Number |
21K01898
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 08010:Sociology-related
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
高木 智世 筑波大学, 人文社会系, 教授 (00361296)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
串田 秀也 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (70214947)
林 誠 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (70791979)
黒嶋 智美 玉川大学, ELFセンター, 准教授 (50714002)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | 会話分析 / フィラー的形式 / 非流暢性 / 相互行為資源 / 日本語 / 吃音 / フィラー |
Outline of Research at the Start |
本研究は、日常会話をはじめとする社会的相互行為に見られる非流暢的現象を会話分析という社会学的手法を用いて探求する。相互行為における非流暢性は、一方では「滑らかに」相互行為を進めるという相互行為そのもののメカニズムにかかわる規範からの「逸脱」であるが、他方では、デリケートな事象を話題にしたりデリケートな行為を遂行したりするときに利用される、相互行為の「資源」でもある。本研究では、非流暢性のこうした側面を焦点として、非流暢性の「逸脱性」と「資源としての利用可能性」が実際の相互行為においてどのように立ち現れているかを精査し、非流暢性が果たす役割を実証的に解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
相互行為の参加者は、基本的に、できる限りスムーズに相互行為を進めることに強く志向するということが、これまでの会話分析的研究において指摘されており、それは、経験的にも理解しやすい。この意味において、相互行為における非流暢性は逸脱的な現象と言える。しかし、他方では、例えば、デリケートな事象を話題にしたり、デリケートな行為を遂行したりするときに敢えて非流暢的な言い方をすることによって、そのデリケートさの認識を表示し、話者は慎重にふるまっているというスタンスを示すことができる。つまり、非流暢性は相互行為の「資源」でもある。 本研究では、非流暢性のこうした両義的性質を焦点として、非流暢性の「逸脱性」と「資源としての利用可能性」が実際のさまざまな相互行為場面においてどのように立ち現れているかを精査し、非流暢性が果たす役割を実証的に解明することを目指してきた。 当初の補助期間最終年度として予定されていた2023年度までで明らかになったのは以下のことである。「あのー」「そのー」「ええと」など、いわゆる「フィラー」として従来一括して扱われたり、認知的なプロセスを示すマーカーとしてのみ扱われることが多かった、間投詞的に用いられる言語形式が、それぞれ相互行為の中で特有の働きを担っており、相互行為の現場においてその時々で生じている具体的な相互行為的課題(「直前のやりとりと非連続的な発話を産出しようとしている」、「すぐに反応を産出できないがその場で求められているタスクを達成しようとしている」など相互行為において繰り返し生じうる課題)に対処するために利用可能な相互行為資源であるということである。 本研究課題の成果は、本研究課題代表者、分担者、協力者の共同執筆による図書として公開予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年度は、6月にオーストラリアで開催された国際会話分析学会(ICCA2023)において、Disfluency as methodical practices for interactionというテーマで代表者・分担者・協力者が参加するパネルを実施し、これまでの成果を発表することができた。研究代表者・分担者・協力者がそれぞれこの学会発表に向けて準備をする中で分析が飛躍的に進められ、本研究課題が目標とした成果に近づいたと言える。 この成果を、会話分析・談話分析研究者のみならず、日本語教育研究者や実践者、また、発話の中の非流暢的現象に関心がある一般読者にもわかりやすくまとめ、提示する図書の出版に向けて準備を進めている。打ち合わせ会議を重ねて方向性(図書の構成、難度、読者層、スタイルなど)を定め、現時点では、各自が担当章の執筆を進めているところである。 なお、分析対象としているフィラー的形式の中でも、「なんか」は非常に多様な用いられ方がなされているため、分析に当初の想定よりも多くの時間が必要であることがわかり、2024年度まで補助期間を延長することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初は2023年度が補助期間最終年度となる予定だったが、配分された補助金の一部を有効に使用するために補助期間の延長を申請し、2024年度が最終年度となる。とりわけ、多様な様相を示す「なんか」の分析が難航しているため、2024年度は、「なんか」の分析の精度を高めることに注力したい。10月末にはオーストラリアで開催するJapanese Korean Linguistics Conferenceでワークショップを開催し、「なんか」の分析の現状を参加者と共有して議論をすることによって分析の精緻化を図る。このワークショップでは、韓国語における類似の現象(フィラー的形式の使用)との比較も予定されているため、新たな分析の切り口を見出すことも期待される。 図書の出版については、上述のように、現在、本科研費課題メンバーがそれぞれ分担する章の初稿を執筆中である。これまでにない新たな視点から相互行為における非流暢性や「フィラー類」を捉え直し、流暢さの優先性を前提とする従来の見方に一石を投じる研究成果を公開することを目指している。会話分析研究者のみが理解できるような学術書ではなく、できるだけ多くの読者の興味を惹きつけ、有益な知見として広く共有できるような内容にするべく、執筆者間でさらに議論を積み重ねたい。2024年度後半に、メンバー間で互いに初稿を検討して2024年度中の原稿の完成、脱稿をめざす。
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