災害社会学の体系化を基礎にした東日本大震災の全体像の解明
Project/Area Number |
21K01925
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 08010:Sociology-related
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Research Institution | Shokei Gakuin College |
Principal Investigator |
田中 重好 尚絅学院大学, 総合人間科学系, 特任教授 (50155131)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒田 達朗 椙山女学園大学, 現代マネジメント学部, 教授 (00183319)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2021: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 東日本大震災 / 災害復興 / オーバースペック / 周辺化 / 死の公共化 / 災害社会学の体系化 / 災害の構築 / 災害の生産 / 災害の比較社会学 / 災害社会学 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、これまで不十分であった、災害の社会学的理論の体系化を進めることを第一の目的とする。この体系化において、基本的な概念は「災害の生産と構築」である。この理論的体系をベースに、東日本大震災に関する数多く行われてきた研究成果を統合し、その全体像を描き出す。この東日本大震災の全体像に基づいて「世界のなかの東日本大震災」を論ずる。本研究は最終的には、東日本大震災の国内の研究成果を海外に向けて発信するため、本研究成果を海外に向けて出版するための報告書を作成する。
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Outline of Annual Research Achievements |
東日本大震災の全体像を「オーバースペック」と「周辺化」という観点から明らかにした。「オーバースペック」とは、被災地の復興に対して過大な復興費用、人材、復興期間を要した復興事業を展開したことを意味するものである。「オーバースペック」な復興事業を実施したにもかかわらず、被災地の自治体は、仙台大都市圏の地域を除いて、人口減少を記録しており、以前の過疎化の動向をとどめることはできなかった。さらに、現在において確定的な判断は難しいとしても、それぞれの地域社会の持続可能性を確保できたかにも、疑問がある。「周辺化」とは、被災者の周辺化と、被災地の周辺化という二様の意味を含んでいる。被災者の周辺化とは、復興事業の中心的な事業であった集団移転事業への参加者が、もっとも参加率が高い岩沼市玉浦西においても60%に達せず、多くの地域では半分以下の参加率であったことに象徴されるように、被災者の希望を復興事業は掬い取れなかったことを意味している。地域社会の周辺化は、地域社会に多くの公共施設がつくられたが、それが、地域社会の持続可能性を直接支えるものではないことを意味している。 第二に、災害がどう伝承され、社会的防災力を高めてゆけるかという課題を、災害遺構の実証的に検討した。東日本大震災の被災地が広域に及んだために、災害遺構も福島県から岩手県の沿岸に数多くつくられた。それらの災害遺構がどういった教訓を伝えているのかを検討した結果、それは、「避難の成功体験」であって、「なぜ避難が遅れたのか」、「なぜ避難しなかったか」ということを語っていないことが明らかになった。このことは、人々の防災力を高めるには、災害伝承の点で不十分であると判断できる。この不十分さを克服するためには、被災地の地域に根差した、「犠牲者の公共化」が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東日本大震災の全体像を明らかにするという作業は、二つのレベルから進めてきた。第一は、政府の復興政策・復興事業レベルであり、第二は各自治体の復興事業レベルである。 政府レベルでの大震災の全体像は、研究実績の概要で紹介したように、「オーバースペック」な復興事業であったこと、そのような巨額な費用を投下して進めた復興事業が結果として、被災者と被災地の「周辺化」をもたらしたことを明らかにして、論文としてまとめた。 自治体レベルでの復興事業は、被災状況と地域社会的条件によって、さらに、自治体が選択した復興政策によって、多様である。それを検討するために、被災状況としては、東松島以南の平野部の被災状況とリアス沿岸部の被災状況を区分し、地域社会的条件としては、仙台大都市圏の地域と、リアス沿岸地域の中心市街地、小都市部、漁村部に区分しながら、検討を進めている。さらに、自治体の政策選択においては、集団移転事業、漁村防災機能強化事業、区画整理事業などの復興事業の組み合わせ方の違いによる区分が必要となる。こうした区分のなかで、仙台大都市圏の平野部、リアス沿岸地域の中心都市、小都市、漁村という4つのカテゴリーごとに、復興事業がどう進められたのかを明らかにする作業を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
政府レベルの大震災の全体像については、ほぼ、研究をまとめ、日本社会学会の英文誌などに発表してきた。 今後の研究は、自治体レベルでの復興事業を、仙台大都市圏の平野部、リアス沿岸地域の中心都市、小都市、漁村という4つのカテゴリーごとに、復興事業がどう進められたのかを実証的に明らかにすることを中心に進める。 この作業において、各地域の被災状況、地域社会的条件を明らかにした上で、自治体ごとに、どういった復興計画を立案し、それをどういったスケジュールで復興事業を実施し、その結果、どういった復興がなされたのかを検討する。 この検討のために、政府と自治体からなる「行政の歯車」、自治体と地域のコミュニティや住民からなる「地域の歯車」、被災者個々の「個人の歯車」という三つの復興事業の歯車からなる、復興事業の選択過程モデルを用意した。復興計画や復興事業の「行政の歯車」が政府と自治体の間で円滑に回ったかを第一に検討し、第二に、その「行政の歯車」が「地域の歯車」とうまくかみ合い短期間のうちに復興事業が展開可能になったのか、あるいは、地域からの様々な異議申し立てや課題が発生して復興事業がとどこおったのか、さらに、行政と地域の歯車を前提として、被災者個人個人はどういった選択をしたのかを検討する。 以上の検討を通して、地域ごとの復興事業がもたらした結果の違いを明らかにする。
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Report
(2 results)
Research Products
(7 results)