Project/Area Number |
21K02007
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 08020:Social welfare-related
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Research Institution | Seirei Christopher University |
Principal Investigator |
入江 拓 聖隷クリストファー大学, 看護学部, 教授 (30267877)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2022: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2021: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | ファミリーホーム / 補助者 / 要保護児童 / 二次的外傷性ストレス / 社会的支援 / 概念モデル / 社会的養護 / 多層構造概念モデル / 語り / 負担感 / 感情労働 / 支援 / 労働環境 / 養育者のメンタルヘルス / 生活者の権利 / キャリア支援 / M-GTA |
Outline of Research at the Start |
本研究は、愛着障害や発達障害を抱える複数の子どもを、FHで養育する補助者へのインタビュー調査が中心である。彼らの苦痛と苦悩に彩られた主観的体験を、彼ら自身が自分の言葉で安全に語る事がより可能となれば、また、その体験が理論的根拠を持った啓発媒体により活用され論議が深まれば、それら個人的苦痛と苦悩は、社会的枠組のなかに包含され、意味を持って再構築され、児童養護関係者も含めてより安全に取り扱う事が可能となるであろう。それは、過酷な体験を被ってきた要保護児童はもちろん、児童養護の現場を担うFHや里親という小さな共同体の回復のみならず、その集団や社会秩序の回復のためにも有益であると思われる。
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Outline of Annual Research Achievements |
第二種社会福祉事業である「小規模住居型児童養育事業」を行う住居であるファミリーホーム(以下:FH)には、親との離別や虐待など、トラウマティックな体験を生き抜いてきている子ども達や、愛着・発達・精神障害児が複数で措置される傾向がある。小さな共同体(不同意集団)での暴力や性の問題は勿論、顔触れの変化等により、養育の大前提である共同体の安心と安全、安定性が脅かされやすい。そのような複数の子ども達と、共感的な関係を築くという営みそのものに日々従事している養育者の被るストレスを、二次的外傷性ストレス(以下STS)として捉えることへの社会的関心は乏しい。 2022年度および、2023年度はFHの養育者がどのような葛藤を体験しているかを明らかにするために、養育者6名を対象に養育の葛藤や関連する出来事、過去・現在・将来への思いに焦点をあてた半構成的インタビューおよび、質的分析を行った。 養育者には「子どもとの関係性や出来事に関する持続する無力感や克服できない怒り」があり「今もどうしてよいかわからない」と、「措置されてくる子供の特性」により「養育環境は一気に崩壊する」という「持続する不安と予感」を体験していた。「児童相談所対応への気疲れ」や「児童相談所の子どもの引き上げにより、突然事業中断を余儀なくされ失職する可能性に対する持続する不安」があり、「同業者の廃業は他人事ではない」と意識しながら「あの無力感や不全感、怒りを将来再び味わう事への恐れと構え」を予期不安として体験していた。これら心理的葛藤への対処戦略として「目の前の子どもとの関係性への没入」「仕事として割り切る」という構造があった。 FHの養育者(補助者)を、「STSの受傷の危険性に慢性的に晒されている、責任が重く権限の乏しい感情労働者」と位置づけ、PTSDの回復支援モデルやSTS受傷予防プログラムの活用に関する検討の必要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度までは、コロナの感染拡大により、要保護児童が養育されている場であるFHに直接訪問してのインタビュー調査を行うことがほぼ叶わず、計画が遅れ気味であった。そのため、2021年度から2022年度にかけて、研究者所属機関の倫理審査委員会において、当該研究計画の倫理審査の承認を受け(22-007-01)、FH施設管理者および被験者に研究内容・方法の説明等をZoomによりおこなったり、インタビューの内諾を得るなどして、インタビュー調査に向けての準備に専念した。また質的分析で補助的に使用するソフトウェア(MAXQDA)の習熟および、本研究目的に沿った質的分析の手法と、要点の確認および、関連文献のレビューをこなった。コロナが5類に移行した2023年度は、関連学会や研究会に出席し、養育経験が豊富で、自身が体験した養育上の困難さや葛藤について冷静に言語化出来る被験者へのアクセスが叶い、倫理的手順を踏んて承諾を得たのち、対面でのインタビュー調査を重ねることができた。その過程で、被験者の属性を「二次的トラウマティックストレス(STS)の受傷リスクに慢性的に晒されている、責任が重く権限の乏しい社会的マイノリティーである労働者」と再定義する必要性の認識に至り、細心の倫理的配慮のもとに、その定義に基づいたインタビュー調査をさらに重ねる必要性が明らかとなった。コロナの感染拡大による1年の補助事業期間延長の申請をおこなったので、さらに数名の被験者に承諾を得てインタビューを行い、これまでの研究知見と併せて、養育者(補助者)の社会的支援のための、多層構造概念モデルについて検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、その特性により、安定した対人関係の構築やその維持が困難な要保護児童を複数養育する「里親」と「FH」の構造の違いを踏まえ、養育者(特に責任が重く権限が乏しい立場にいる補助者)の心理的葛藤やその対処のプロセスについて、共同体の規模および構造の特徴から比較検討し、養育者(補助者)の労働の質による心理的ストレスの性質、またその対処行動の傾向の違いとその背景にある社会的構造について明らかにしてきた(基盤C:23593477および、基盤C:26463544)。 本研究では、養育者(補助者)を心理社会的に支援する仕組みについて検討するために、親との離別や虐待などのトラウマティックな体験を生き抜いてきている子どもと「共感的な関係を構築するための営みとしての養育」に日々従事している彼らを、「二次的外傷性ストレス受傷のリスクに慢性的に晒されている、責任が重く権限の乏しい社会的マイノリティーである感情労働者」と再定義した上で、倫理的配慮に細心の注意を払ったインタビューを継続することにより、その体験の意味と、その背景にあるものを社会システムとの関連性の中で再検討し、上記先行研究結果および、PTSDの回復支援モデルやSTS受傷予防プログラムを踏まえた多層構造概念モデルの検討を行う予定である。 2024年度より関連学会での中間発表を開始し、検討したモデルの妥当性の確認のために、インタビューを行った被験者および、専門知識を持つ実務家の確認を経て提言をおこない、モデルを啓発媒体として発信してゆく予定である。
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