公共調達・契約における社会的価値評価の可能性-現場レベルの協働の可能性とその条件
Project/Area Number |
21K02055
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 08020:Social welfare-related
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
原田 晃樹 立教大学, コミュニティ福祉学部, 教授 (20340416)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
嶋田 暁文 九州大学, 法学研究院, 教授 (00380650)
藤井 敦史 立教大学, コミュニティ福祉学部, 教授 (60292190)
佐藤 学 沖縄国際大学, 法学部, 教授 (80352475)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2021: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 協働 / 評価 / 公共調達 / 居場所 / 社会的価値 / ミュニシパリズム / パートナーシップ / ガバナンス / 社会的連帯経済 / 委託 / 相互扶助 / 地方自治 / ワーカーズ・コレクティブ / 入札 / 契約 / NPO / 非営利組織 / 付帯的政策 / ストリートレベル官僚 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、近年、英国において「非営利」や「連帯」の価値を社会的価値と認識し、それを公契約において価格以外の要素として積極的に評価する取組が広がりつつあることを受け、サービスの送り手(非営利組織のサービス・プロバイダー)と受け手(第一線職員)の関係性は、第一線職員の行動によって大きく変わりうるものという考え方のもと、どのような行動が協働的な関係構築につながりうるかを考察する。また、その際、自治体における社会的価値を評価した公契約制度を事例として取り上げることで、市民社会組織が持続的に活動を続けるための政策的基盤条件を併せて提示することをめざす。
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Outline of Annual Research Achievements |
第一に、過年度の調査結果を踏まえ、日本の公共調達における付帯的政策について、英国を中心とする欧州諸国のそれと比較しながら考察した。英国の制度と比べ、日本の自治体の公共調達法制には、人権や労働といった誰にとっても普遍的といえる価値を保護するための制度上の基盤が脆弱であることや、自治体に経済性(価格)以外の有利性を示す客観的な尺度が明確な形で存在しないことを改めて確認できた。 第二に、北九州市や香川県琴平町などの食を通じた居場所づくりの取り組みを調査した。これらは社会福祉協議会、住民組織、非営利組織などが核となって運営されており、多世代の居場所として機能していた。また、そうした関係を通じて地元自治体などの関係機関と連携する体制がとられており、地域のネットワーク形成がある種のセーフティネットの構築につながっているとともに、それが持続的な運営を支える資源にもなっていることが確認できた。 第三に、英国プレストン市の主要議員・幹部職員及び同市内にあるセントラル・ランカシャー大学の研究者等を訪問し、英国自治体における戦略的な調達の実態を調査した。同市では、市内主要団体と連携し、公共調達を通じて循環型の経済や労働者の人権向上につなげる取り組みを2010年前後から取り組んでいる。英国でそうした取り組みを後押しする法制化(2012年公共サービス(社会的価値)法)がなされる前から実践されており、英国自治体の戦略的調達は、ボトムアップによって現在の潮流が生まれたことが確認できた。また、経済の民主化の観点から、協同労働の価値を重視していた。日本でも近年法制化された労働者協同組合法では地域再生の担い手としての役割が期待されており、英国自治体の取り組みを通じてその実践を改めて理解することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、市民社会組織の特性を反映した価値(社会的価値)とは何かを浮き彫りにすること及び日本の自治体における社会的価値を評価した公契約の方策を提起することが目的であった。これらについては、英国自治体における公共調達の調査を通じて、人権・労働といった誰にとっても普遍的と考えられる価値と、地域の持続可能性を高めるために必要な価値(地域経済・雇用、地域の環境、地域に固有の社会的特性)があり、その実現のためには、入札等の参加資格要件への適用と個々の事業評価を一体的に運用するとともに、自治体の戦略性が重要であることが確認できた。 他方で、自治体の第一線職員が協働を通じて態度変容し、ボトムアップの意思形成プロセスのループを形成する条件を明らかにすることもめざしていたが、実証的に明らかにすることは難しい面があった。ただし、既存の文献レビューや子ども食堂等の実践を通じてその事例については整理でき、また、英国において戦略的な調達を行っている自治体の調査からは、法的な根拠の有無にかかわらず、現場職員や議員の判断が実施のきっかけになっていることがわかった。これらを踏まえ、最終年度では、改めてこれらに関係する研究動向をレビューし、どのような枠組みで捉えられるかを考察したい。 なお、新型コロナウィルス感染の影響で、昨年度初めて英国での調査ができた。こうした事情から、令和6年度は本研究の最終年ではあるが、英国での調査を重点的に行いたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる平成6年度においては、主として次の点についての調査を行う。 第一に、ガバナンス研究及び第一線職員論を通じて現場レベルの協働関係を捉える分析枠組みを考察する。近年、ストリート・レベル官僚制についても国内外で実証的な研究がなされており、そうした研究動向もレビューするとともに、この分野における英国研究者へのインタビューを行う。 第二に、昨年度に引き続き、英国バーミンガム市、ロンドン・タワーハムレッツ区、プレストン市などを訪問し、戦略的な公共調達の実践や調達における評価の実際についてインタビューする。 第三に、日本の労働者協同組合を中心とする非営利セクターによる地域のネットワーク形成の実態について、生活クラブ生協神奈川やワーカーズ・コレクティブネットワークジャパンなどの協力を受けて事例調査を行う。 これらを踏まえ、市民社会組織の持続的な活動を支える公的資金供給のあり方を考察するとともに、日本の自治体の公共調達の課題を明らかにしたい。
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Report
(3 results)
Research Products
(45 results)