Project/Area Number |
21K02213
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 09010:Education-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤江 康彦 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (90359696)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 教室談話 / 探究 / ニューマテリアリズム / 相互行為分析 / マルチモーダル分析 / 活動理論 / アフォーダンス / 社会構築主義 / アクターネットワーク理論 / ニュー・マテリアリズム / 授業研究 / 学習環境 |
Outline of Research at the Start |
教室を「ひと・もの・こと」といった心理的、物理的、社会的主体からなる学習環境としてとらえ、自身も環境の一部である子どもや教師が相互に影響を及ぼし合う過程として授業を描くための視点と手法を開発する。「主体的である」ということが学習においてもつ意味、「教室」という環境の拡張が子どもの学習においてもつ意味、社会的でもあり物理的でもある他者の存在が子どもの学習においてもつ意味、などを明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
2022年度に引き続き、首都圏の小学校1校において、デジタルビデオカメラを用いた授業観察を実施した。年度当初に計画していた特定の学級における定点観測的な観察は、学校内の状況等の関係で実施しなかった。よって2023年度は、昨年度同様の教科や学級を特定しない観察に加えて、特定学級における特定教科の一単元を通した観察を行った。 教科や学級を特定しない観察においては、2022年度から継続して、子どもや教師の発話や行為、掲示物や教室の物理的配置、人とモノとの相互作用について検討した。いくつかの授業では、子どもたちの意見が黒板に名前つきで記され、さらに授業の展開に沿って並べられたり、類似意見ごとに近い場所に表記されるなど、子どもの意見を組織化して全体で共有するという方法がとられていた。板書が教室談話の進行における参照点となり授業進行を方向づけたり、子ども相互の意見の理解をうながしたりしていた。 特定学級における特定教科の一単元を通した観察は、2年生の国語科において行った。授業において、子どもたちは教科書を読み進めることと同時に教材の元になった絵本の挿絵をストーリーに沿って並べることを通して教材と多様な向き合いかたをしていた。教科書に記載されている言語から構成される物語の表象は必ずしも絵本の挿絵と同一ではなく、そのことが子どもたちの教材についての理解に加えてことばのもつ多様な意味への気づきをうながしていた。 以上より、教室談話における文字や図などのもつ意味を探究するためにマルチモーダルな分析を指向することの必要性が明らかとなった。 また、理論的検討として、ニューマテリアリズム、方法論的検討として相互行為分析等を参照することを通して、モノの側からみた人間の発話、人間観の相互行為から人とモノとの相互行為という視点による談話分析の枠組みの拡張、発話のない状態における分析視点などについての示唆を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題は小中学校におけるフィールドワークを主たる研究方法としている。学校への訪問回数はこれまでよりも増えたが、その分、データの分析にかかる時間を十分にとれておらず、結果として研究の進捗も停滞している。また、2022年度から継続的に行っている理論的検討によって新たな分析視点を得る必要が生じ、そちらにも時間を割いた。さらに、校内研究の共同研究者として参画し、継続して研究協力を円滑に得ることができるよう研究協力校や教師との関係構築を並行しておこなった。これらのことは、ラポール形成や研究協力をより得やすくするためには必要な過程であるといえ、フィールドワークの継続、データを分析しその結果を論文化する過程において有用であると考えるが、研究全体としては「やや遅れている」と判断せざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度と同等の観察回数を維持するとともに、データの分析を計画的に進め、学会発表等の機会を増やすことでペースメイクを行う。2024年度は、①2023年度に実施する予定であった、特定の学級における定点観測的フィールドワークをおこなう。授業や休み時間などその学級における子どもたちの活動を観察するとともに、教師へのインタビューを進める。②①とは別に学年、教科、単元等を決めて短期的なフィールドワークをおこなう。同一時期に複数のフィールドワークが重複しないようにする。①により、特定の学級の社会的文化的物質的環境における学習者の学習の様相をとらえることを通して、授業において行為者が、当人なりの意志と発話スタイルをもって集団活動としての授業に参加し、一方で集団に求められる学習課題の解決に向けた秩序ある教室談話の成立の両立に向けて生成する行為が教室における多様なアクターの主体性との相互規定によって具体的にあらわれる様相をより緻密に記述していく。また、②により、特定の教科内容や教材と学習者との関係をとらえることを通して、学習者がどういったアクターにどういった価値づけをするのか、自分とアクターとの間にどのように意味ある関係を見いだしているのかをとらえること、学習者の実践に、どういったアクターがどういった制約を与えるかをとらえること、学習者は制約の意味や価値にどのように気づくか、をとらえることが可能となるだろう。とりわけ、2023年度の観察からその必要性が導かれたマルチモーダルな分析をおこなうための、調査方法と表現方法についても検討する。
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