Project/Area Number |
21K02219
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 09010:Education-related
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
梶井 一暁 岡山大学, 教育学域, 教授 (60342094)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 人間形成 / 教育史 / 仏教 / 咸宜園 / 留学生 / 教員 / 教育観 / 宗教観 / デス・エデュケーション / 生死 / 教育と宗教の関係史 / 学林 / 大衆階次 / 私塾 / 寺子屋 / 明治初期 / 宗教史 / 近代転換期 / 日本 |
Outline of Research at the Start |
なぜ教育と宗教を重ねて問うか。本研究では「近代化」を扱うなかでも近世・近代移行期を積極的に視野に収めた考察を行う。この近代転換期にあって、教育と宗教は、思想的にも制度的にも未分化の領域であった。 教育と宗教が混交した人間形成は、どう展開したか。両者が交差しつつ形成する宗教観と教育観の特質について、西洋文化との交流も関心に収め、教育者の宗教観と宗教者の教育観が相互浸透的に形成される関係的状況を分析する。 分析は南条文雄、井上円了、大谷瑩亮、吉谷覚寿、吉田賢龍、金子大栄らをとりあげたい。伝統と革新の混沌に対峙した彼らの思索と経験を明らかにし、教育と宗教をめぐる近代化過程の特質を浮き彫りにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
日本における近世・近代移行期は、教育と宗教が混交し、人々の見方や行動のあり方に資する状況があった。教育と宗教は、ともに人間形成文化の要素であった。この問題の関心と設定により研究を進め、主に下記を行った。 第1に、仏教僧侶が近世教育全体に特色的な傾向である「遊学」のなかにあり、近世後半の僧侶の学習状況として、士庶とともに私塾に学ぶあり方を考察した。豊後国日田の咸宜園は近世最大の漢学塾として知られ、多くの僧侶、とりわけ真宗僧侶が入塾している。うち美濃国と伊勢国から咸宜園に遊学した僧侶に着目し、二人が親戚関係にあることを把握した。真宗僧侶は社中というネットワークを形成するが、このような人的関係に親戚関係なども重ねて、国許を離れる遊学の契機が生じていることを検討した。国元の寺院側の史料を調査中である。 第2に、近代に入ってからの社会におけるアジア的な展開に着目し、20世紀前半、モンゴル地域から赴日する留学生について調査した。モンゴル地域では、伝統的に仏教寺院が、信仰としての仏教とセットで、学問としての医学を担ってきた。善隣高等商業学校とその生活の場である学寮を事例に、モンゴル人留学生の学習と生活について、雑誌資料などを用いて考察した。この学校は宗教学校ではないが、モンゴル人留学生が有する文化、宗教、信念などが、彼らの日本での学習や生活に影響していることが把握された。教育成果が、単に知識や技術の伝達の方法的工夫だけでなく、背景としての文化や宗教などの価値的な部分の理解や共感によるところが大きいことを論じた。教育交流史が制度や方法の面だけでなく、文化や精神の面にかかわって探究される必要を指摘できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
第1に、近世後半の仏教僧侶の学習状況として、遊学のあり方を、咸宜園に学ぶ真宗僧侶を軸に調査している。咸宜園側の史料については、これまで咸宜園教育研究センターなどで整えられている。寺院側の一次史料については、個別に独自調査をはじめたところである。地方史料としての寺院所蔵史料は、寺院は歴史のなかで災害にあったり、後継者に恵まれなかったり、史料の伝存が難しい場合が多い。今回は岐阜県と三重県の寺院を対象としており、現存する寺院であるが、まだ十分に史料を得ることができていない。調査を継続したい。 第2に、漢字文化圏としてのアジアの学びの観点から、学問としての仏教や儒教に関する教育とその施設について調査を試行した。ベトナム(ハノイ)に残る教育史跡を部分的に観察・調査したが、まとまった考察を行うにはいたっていない。 第3に、近代西洋の大学に留学した仏教僧侶の動向を分析したいと計画しているが、一次史料を収集できていない。近世学寮・学林での学習経験を有し、かつ近代西洋の大学に留学した僧侶を事例に、日記や手紙などから、近世と近代をまたぐ教育経験の接続・断絶の意味を把捉したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の基本として、一次史料にもとづく実証研究を進めるが、史料の収集状況により、二次史料の活用を図り、全体としての研究課題の遂行に努める。 第1に、日本における近世・近代移行期の教育と宗教をめぐる大きな状況は、ヨーロッパとの本格的な出会いと、アジアの再発見である。近世後半に仏教を漢訳で学んだ僧侶が、近代にイギリスやドイツに留学し、文献研究や比較言語学などの方法を学び、近世日本で自明とされてきた漢訳仏典の内容を捉え直す動向があった。また、漢訳以前の仏教を求め、インドやチベットをめざす動向があった。とくに前者の動向を捉えることを課題としたいと考えており、イギリスなどでの調査を計画する。 第2に、国内の調査として、近世後半の僧侶の学習状況について、士庶の私塾遊学動向のなかに位置づけられるようにする。咸宜園に学ぶ僧侶を事例に検討し、国元の寺院に伝存する史料の掘り起こしに努め、考察をまとめたい。 第3に、近代教育を担う学校教員の価値観の一端として、宗教や科学に対してどのような見方や考え方をもっていたのかについて、雑誌記事などを通じて検討したい。たとえば、雑誌『変態心理』(刊行物)などに教員執筆の記事が散見され、その特色や傾向を検討していくことを計画する。
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