「小さな拠点」の持続的発展に関する地域学習組織化のための「学習シート」開発
Project/Area Number |
21K02231
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 09010:Education-related
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Research Institution | Nishikyushu University |
Principal Investigator |
上野 景三 西九州大学, 子ども学部, 教授 (30193824)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2021: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 小さな拠点 / 公民館 / 社会教育 / 地域課題解決 / 学習シート / 地域学習 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、「小さな拠点」の持続的発展を目的とする学習活動を組織する上で、学習教材としての「地域アセスメント学習シート」を作成し、その活用可能性についての検証を行うものである。 現在、地方創生政策のKPIとして「小さな拠点」形成は位置づけられている。しかし、現段階では「小さな拠点」形成が自己目的化しかねず、その持続性については担保できない。 本研究では「小さな拠点」の持続的発展を可能とするために、これまでの科研研究の成果に加え地理学の方法(地理情報システムGIS)を援用し、その上で「地域アセスメント学習シート」を開発して「小さな拠点」での実装可能性を検証しようとするものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、3年次を迎えた。3年次の課題は地理学の手法を取り入れた「小さな拠点」の分析と、そこから導き出される諸課題に対する「学習シート」の開発と実装とした。 九州地区に限定をかけて、「小さな拠点」の位置を既存データに基づき地図上に落としてみる作業に着手した。「小さな拠点」は小学校区もしくは旧小学校区を地理的範囲として設定しているところが多いことから、「小さな拠点」を白地図にマッピングした上で、小学校の名簿から当該地域の拠点の小学校もしくは廃校となった小学校の位置をマッピングし、両者を重ね合わせて分析を試みた。廃校となった小学校は、「小さな拠点」に限定せずにマッピングした。その際「地理情報システム」を活用した。 その結果、次の諸点が明らかになった。①「小さな拠点」は、小学校区もしくは旧小学校区単位で設定されていることが多いことから、当然のことであるが小学校との重なりがみられること。したがって小学校を拠点に整備されていること。②しかしそれ以上に廃校が多数にのぼること。③県単位でみたとき、いずれの県でも地理的には多様な広がりをみせており、必ずしも県の周辺地域に偏っているわけではないこと。④したがって仮説的であるが、「平成の合併」時の中核自治体の周辺部に「小さな拠点」が位置づいているのではないかということ。⑤地理学の手法では、地域課題を導き出し「学習シート」へ反映させて作成するということができないこと。以上の点が明確になった。 二つ目の課題とした「学習シート」開発は、前述したように地理学の手法では限界があることから、これまでの科研の成果である「アセスメントシート」を援用して「小さな拠点」むけの「学習シート」を開発する必要があること。地域運営組織の実態把握は難しく、実装にむけた一般的なモデル開発に切り替えていく必要があることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の3年目は、前述したように二つのテーマを設定し取り組んだ。研究を進めていく上で、今回の研究の特色としてあげておいた地理学の手法の社会教育学への応用は、挑戦的な取り組みではあったが、成果は限定的なものにとどまった。その理由は、白地図にマッピングし、「小さな拠点」と既存の学校、廃校、公民館、コミュニティ・センターの重なりをみるだけでは地域課題は導き出されないからであった。地域課題解決学習を推進していくためには、社会教育学からのアセスメントが不可欠であり、地理学の手法の援用は限定的な効果をもつものとして利用することがあらためて理解された。 これまでの3年間の研究成果は、まず「「小さな拠点」形成と地域公共施設の関係性についての研究」(『西九州大学子ども学部紀要』第14号 2023 37-49頁)としてまとめたが、成果の一部を活かして「地域社会教育施設の現状と課題」(月刊社会教育3月号 2023)を執筆した。さらに研究成果をもとに、地域社会教育施設や人口減少社会における公民館の在り方についての論考をまとめ、2024年秋には刊行の予定である。 学会報告は、1つには、「日本における生涯学習をめぐる政策と実践的動向の新展開」(2023)として東アジアの生涯学習研究者のフォーラムで報告をした。2つには「公民館研究50年と公民館学会20年の到達と課題」(2023)として日本公民館学会学会で報告を行い、公民館研究の発展に結び付けた。その他、「今、公民館の必要性と重要性を考える」として、佐賀県内の公民館関係者に研究成果の一部を還元している(『社会教育さが』連載No.630~633)。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年を1年間、延長して取り組むこととした。その理由は、開始当初、まだコロナ禍の影響が残り、地域調査を行うには限界があった。そのかわりに収集したデータをもとに執筆した「地域社会教育施設の現状と課題」に関して、いくつかの自治体社会教育施設職員(岡山市、奈良市、松本市、佐賀市等)へインタビューを行い、地域社会教育施設の抱える諸問題についてヒアリングを行った。 この手法は、実際の地域社会教育施設が抱える諸問題と、理論的動向や政策動向との間の乖離を浮き彫りにさせてくれた。つまり、研究や政策よりも、自治体における諸課題の方が水面下で先行しており、社会教育施設が遠くない将来において抱えるであろう課題を発見することができた。 今後の研究の推進方策としては、次の3点である。①近刊予定の二つの論考を、2024年度に社会教育施設職員にフィードバックする機会を多面的につくり、「小さな拠点」研究から発見された諸課題について論点を深めること。②「学習シート」開発については、これまでの「社会教育アセスメント」の成果を生かして継続的に開発すること。③地域社会教育施設の問題史的通史の研究へと発展させること、である。
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Report
(3 results)
Research Products
(10 results)