主体的エンパワメントの可視化:多様な声と場所をめぐる外国人生徒との批判的実践研究
Project/Area Number |
21K02280
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 09020:Sociology of education-related
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小林 聡子 千葉大学, 大学院国際学術研究院, 准教授 (90737701)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 綾子 千葉大学, 大学院国際学術研究院, 准教授 (20720030)
徳永 智子 筑波大学, 人間系, 准教授 (60751287)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 居場所 / 移動する子ども / 参加型アクションリサーチ / フォトナラティブ / 外国人生徒 / YPAR / エンパワメント / 批判的実践研究 / 外国につながる子ども / エージェンシー / 教育人類学 / 外国人児童生徒 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、国家間を移動する子ども達が、アクティブな行為主体としてアイデンティティや居場所について捉え直し、「主体的エンパワメント」につなげていくのかを可視化させる批判的実践研究である。特に、移動する子ども達の多様な声と彼らを取り巻く場所に着目し、中学から高校への移行期にある外国につながる生徒達と参加型アクションリサーチを試行する。故郷や今の生活環境に関する認識を内省・表象・分析するプロセスを追うことで、子ども達の中長期的変容を可視的し、研究者と共に子ども達が変化を理解する手立てを探る。学際的に子ども達の社会現実を描き出し、教育・児童福祉・司法の分野をつなぐ支援のあり方への実践的な提案をする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、トランスナショナルな状況下で国家間を移動する子ども達が、調査者とともに、自分の置かれている環境や状況についてアクティブな行為主体(エージェンシー)として認識することを通して、アイデンティティや居場所について捉え直し、「主体的エンパワメント」につなげていくのかを可視化させる批判的実践研究である。過去二年間はコロナ状況により海外渡航がままならなかったが、2023年度は渡航費の高騰により海外調査および学会参加がままならなかった。 その上で、以下の研究実績があげられる。 第一に、4月に生徒たちを牽引する2名の若者と本年度の活動計画を立てた。その際、本年度は写真に多言語での短文を合わせたフォトブックの作成をすることとした。その計画をもとに、6月に高校受験を控える外国につながる生徒たちと既に高校に進学した生徒ら8名とカメラ・ワークショップを実施した。その後も数回、日程調整を行なったものの、参集する日程が合わず、別途活動の方向性を検討することとなった。一方、7月は来日直後の子ども達と歴史博物館へのフィールド調査、自らのルーツや生活・興味に関わるモノや場所の写真をポラロイドカメラでおさめ、それらをポスター上に整理し、タイトルをつけて共有し合いながら、故郷や今の生活環境に関する認識を内省・表象した。また、外国ルーツ生が多い高校や小学校においても、同様の表象活動を実施した(8月、11月、2月)。 第二に、これまでの成果を国内の国際学会であるAnthropology of Japan in Japanにて発表した。学会発表をするにあたり、共同研究者間でワークショップの企画や振り返りをし、次年度以降の展開についても検討した。また、調査の成果の一部を『千葉大学国際教養学研究』(佐々木綾子、大木圭との共著)および書籍「日本語教育を問い直す」(佐藤郡衛、菅原雅枝との共著)に掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度は、先行研究のレビューをしつつ、昨年度から実施しているワークショップの内容やデータ、成果物の方向性についての議論を重ねた。若者参加型アクションリサーチ(YPAR)の実践研究を事例とする文献調査、国内及び北南米YPAR研究者らへの聞き取りを多少行なうことができたが、海外のYPAR実践の場の訪問・観察は、予算の都合上見送った。 昨年度末に、具体的に日本語を学んでいる子ども達のためになる成果物として、フォトブックの作成を行うことを決定し、今年度4月にプロジェクトの核となる若者2名と作戦会議を行なった。6月にカメラワークショップを行い、年度後半に冊子にするためのワークショップを実施予定だったものの、日程調整が困難をきたしたことことから、2024年度に持ち越すこととした。 昨年度より明確にフォトブックプロジェクトを最終形態と定めて定めることができた。これにより、プロジェクトに参加しなかった子どもや若者が手にとって見て、読むことができるものになり、研究成果のための研究をこえ、大前提となっていた外国につながる子ども達に届けることができる。一方、その作成プロセスにあたっては、異なる高校に所属する生徒達を一斉に大学に集めることの難しさが顕著になった。 令和5年度も、継続して同じ子ども達との活動を行っていることから、着実にかれらとのラポールを形成ができてきた。それぞれの学校生活が忙しい中でも、活動に参加したいという意欲は継続されている。まだフォトブックとしての形にはなっていないが、これまでのプロセスについてデータ分析を進め、令和5年度に学会発表したものを、現在国際学術ジャーナルへの投稿論文として執筆している。
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Strategy for Future Research Activity |
先述したように、コロナ禍や海外旅費の高騰から思うように進まない部分もあったものの、研究期間を延長したことで、令和6年度は成果物としてのフォトブック、Webサイト、学術論文、学会発表を予定している。 最終年度となる2024年は高校進学を目指して子ども達が学んでいる地域の日本語教室と2023年度にフォトプロジェクトを実施した高校という二か所を中心に本プロジェクトを進めていく。フォトブック制作過程で研究参加者の子ども達と共にワークショップを重ね、データを収集し、その分析も行う予定である。その成果について、外国につながる子どもや若者向けに冊子およびWebサイトを作成している。完成した後には、学校や日本語教室などへの冊子配布・情報共有を行う。 また学術的貢献として、共同研究者とともに異なるYPAR研究の場での相違点の背後にある社会的要因や構造、今後のYPAR研究の展開の可能性及び課題に関して成果発表を目指す。具体的には、学術雑誌(Ethnography and Education)に投稿すべく執筆を進めており、さらには10月にコロンビアで実施される国際学会(International Association of Ethnography with Children and Youth)での発表を予定している。
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Report
(3 results)
Research Products
(5 results)