ポーランド初等教育の美術における技法、材料、指導法についての調査研究
Project/Area Number |
21K02449
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 09040:Education on school subjects and primary/secondary education-related
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
南雲 まき 立教大学, 文学部, 特任准教授 (40806626)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥3,250,000 (Direct Cost: ¥2,500,000、Indirect Cost: ¥750,000)
Fiscal Year 2025: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2024: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2021: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 美術教育 / 図画工作 / ポーランド / 絵画 / 版画 / リノカット / 初等教育 / 技法材料 / 教科書 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、ポーランド国内の研究協力校での作品資料の収集、観察、美術指導への参与、小学校美術の教科書の収集、分析を通して、ポーランドの小学校美術教育で実践されている技法や指導法のうち、日本の図画工作に取り入れられていないものについて、日本の小学校で実践し、その効果を検証することを目的とする。ポーランドでは、ドイツによる占領、共産主義の時代に教育及び文化活動の制限や表現の抑圧を経た経緯から、表現教育に力を入れ、美術においては、版画や、西洋の近代から古典の表現技法について初等教育の段階から取り入れている。本研究によって、それらの優れた実践を日本に導入することができると考えている。
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Outline of Annual Research Achievements |
2022年度はポーランドの初等教育における美術教育のなかでも、特に絵画分野に注目して調査、研究を進めていった。その結果、日本では主に幼児期、初等教育においては主に低学年を中心に使用されるオイルパステルは、ポーランドにおいては高学年まで使用される画材であることがわかった。また、その使用方法も異なることがわかった。日本では線書きや紙の地が見える程度の塗りを目的に使用されるのに対して、ポーランドではアカデミックな西洋絵画の描き方を基礎とし、油絵のように重層構造を意識し、重厚に色を重ねていくことがわかった。 また、描画に使用される紙も、日本では白の画用紙が多いのに対して、ポーランドでは有色紙やボール紙などが使用されること、ただ紙に色がついているというよりは、紙の色も絵画表現における下地の色として考えられていることがわかった。他にもコンテや木炭などが絵画制作に使用されることもわかった。 水彩絵の具については、日本の初等教育では半透明の水彩絵の具が使用されるのに対して、ポーランドでは初等教育段階からポスターカラーなどの不透明水彩絵の具を使用することがわかった。使用方法も、オイルパステルと同様に重層構造を意識した描き方を行うことがわかった。 現在の美術教育を比較すると、日本とポーランドは述べてきたような大きな違いがあるが、日本の美術教育の歴史を遡ると、大正期の児童自由画教育運動を推進した洋画家である山本鼎による指導は西洋絵画に基づいた重層構造を意識したものであった。山本は当時、子どものための良い画材がなかったために櫻商会とともにクレパスを作ったが、山本が想定したクレパスの使用方法は現在の日本で行われているものよりも、ポーランドで行われているものに近かったと考えられる。以上の内容を大学美術教育学会にて論文発表を行なった。調査結果をもとにした論考を今年発行の書籍に掲載予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に入手したポーランドの美術の教科書と日本の図画工作、美術の教科書を比較することで研究を進めている。2022年度までは版画分野、絵画分野に注目して研究を進め、順調に進展している。 全世界的な新型コロナウイルスの感染拡大や、研究調査国であるポーランドの近隣での戦争の影響で、調査のために国を行き来することや、国を越えて物品を郵送することが本研究開始当時から非常に困難であった。 しかし、オンライン会議ツールを使用したインタビューや研究協力者との打ち合わせを行ったり、ポーランドに関係する研究者の学際的な交流の支援を得たりすることによって、おおむね順調に研究を遂行することができている。しかし、現地の教育機関の調査受け入れと、教育現場で実際に使用されている画材や素材等を入手するのはまだ困難な状況であり、その部分の調査が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究開始時に現地小学校で使用されていたポーランドの教科書をもとに研究を行ってきたが、3年が経過しているため、ポーランドの初等教育における美術教育の教科書の最新版を入手し、日本の教科書との比較研究を実施していく。ポーランドの美術教育においてはマルセル・デュシャン以降のいわゆる現代アートについても教科書で丁寧に触れられている。それに対して、日本の図画工作には現代アートはほとんど全く取り入れられていない。 現代アートは近代美術や社会への批判的な意識から成立した美術表現である。近代の社会が西洋中心主義、男性中心主義を中心とし、近代美術はその基礎の上に発展してきた。現代アートの多くはそのことに問いを向けている。現代アートが日本の美術教育に取り入れられていない理由について、学校教育、美術教育の根底にある思想も読み解きながら、明らかにしていきたい。 ポーランドの教育現場での調査を行い、指導法と実際に使用されている画材や素材等についての研究を進めていきたい。
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Report
(2 results)
Research Products
(7 results)