比較書字教育研究に基づく左利き者に有効な書写学習モデルの開発
Project/Area Number |
21K02488
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 09040:Education on school subjects and primary/secondary education-related
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
小林 比出代 信州大学, 学術研究院教育学系, 教授 (10631187)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 書写教育 / Handwriting / イギリス / 未邦訳文献 / 翻訳考察 / 書字 / NIRS / 左利き / 書写学習 / 書字教育 / 比較書字教育研究 / 利き手 |
Outline of Research at the Start |
1他国における左利き者の書字教育に関する実状把握と日本に寄与できる観点の整理:米英仏国での左利き者への書字教育に関する文献考察と視察を行い、日本の教育に還元できる要素を検討する。 2非利き手での書字行為に関する検証データの蓄積:既に実施の利き手と非利き手での書字活動時における脳活動に関しての同一実験を実施し、開発する学習モデルが学校現場に反映しやすくなるためのデータ蓄積に努める。 3比較教育研究と実証研究の見地に基づく左利き者に有効な書写教材及び学習展開の開発:1と2から、各々の利き手を尊重し、左利きの児童生徒が無理なく書字に臨める、左利き者の立場に立った書字及び教育に関する理論と方法を開発する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の2年めにあたる2022年度は、未だ新型コロナウイルス感染症対策に予断を許さぬ最中にあったため、これまでに蒐集した文献の翻訳と検証考察への尽力に最も努めた。具体的には、イギリスで出版された左利き者の書字教育に関する文献について考察を行い、日本における左利き者の書字教育について検討する際の肝要な観点の顕在化を試みた。 まず前提として、左利きの児童生徒への書字学習及び指導に関する実状を、漢字圏においての視点から把握するよう試みた。日中韓との漢字圏における左利き者の書字学習及び指導に関して論究を重ねた末、これからの左利き者の書字教育の在り方を探究するには漢字圏だけを対象とするのには限界があるとの考えに至った。一方、アルファベット圏での左利き者の書字教育については、国家的な教育指針や積極的な教育実践が見受けられるものがある。特に、イギリス(対象はイングランド)における Handwriting の教育に関しての日本の場合との比較検討から、イギリスにおける左利き者の書字教育の在り方について検証考察することで、左利き者の書字教育に関する課題への新たな示唆が誘えるのではないかと想察した。 このような推論に基づいて、イギリスで出版された左利き者の書字教育に関する文献4冊(①Jean Alston:Writing Left-handed ②Gwen Dornan:Writing Left-handed… …Write in, not left out ③Lauren Milson:Your Left-handed Child ④Julie Bennett:HANDWRITING Pocketbook この内①②④は邦訳書がないため全面的に翻訳の上で)考察し、漢字圏とは異なるアルファベット圏との視点から左利き者の書字教育の現状について解釈を試み、日本の書字教育に還元できる観点を抽出している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該文献の要点として、学習指導者に求められるのは、まず、左利き者の書字に起こりやすい課題や問題点をできるだけ具体的に理解把握することである。その上で、左利き者にとって文字が書きやすくなるための方策をたとえ些細な事柄であっても左利き者によりわかりやすく具体的に提示することである。実際に左利き者の書字に関わる課題に対峙してその多様性を認めながら具体的な示唆をなるべくわかりやすく提唱する点において、イギリスでの当該文献に学ぶ内容は多い。書字教育を遂行するにあたり、左利きの書字者が鏡文字を書くメカニズムに触れる文言が提起されるだけでも、現実的な問題を抱える児童や保護者には何かしらの安心感を与えることができると推察される。 当該文献におけるイギリスでの「左利きの子どもに右手で書字させる指導は行わない」との考えの根底には、「“利き手”との観点に立脚すると右手と左手は平等の関係にある」との確たる見解が存する。その上で、筆記具の具体的な持ち方や、左利きの書字者が筆記具の先端を見えるようにするため筆記具把持に適切な先端からの高さ、望ましい筆圧や握圧のかけ方、横書きの場合右から左に書くのが自然な動きとなる左利き者が左から右に無理なく快適に書字するために出来得る工夫や、時計回りへの円運動が為しやすい左利きの書字者が円を含む文字を反時計回りに書けるようにするための方策、鏡文字への対処法等、概念的抽象的ではなく具体的でわかりやすいポイントを何点も提示している。書式や文字体系の違いはあれど、日本においても同様な視点から理解しやすい教示を与えるべき必要性や必然性が感受できる。 また、これらの文献では、左利き者が横画を書く際に「押す」動作となるところを「引く」動作に変容させるための方策を詳細に考案している。これは箱崎総一編『左きき書道教本』(1972)において箱崎氏が提唱した施策と同一の考えによるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、イギリスの文献に示された観点から、日本の書字教育に還元できる観点を抽出することを目的としたが、イギリスと日本では、アルファベットと漢字や平仮名といった字種の違いや書字方向などの違いなど条件が異なることについて論考が成し得ていない。次年度は、比較・抽象・分類・評価・改善・具体化・検証等といった研究過程をふまえながら、抽出過程における分析や考察を明示したい。
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Report
(2 results)
Research Products
(4 results)