Project/Area Number |
21K02549
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 09040:Education on school subjects and primary/secondary education-related
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
神内 聡 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (90880302)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 教員の専門性 / チームとしての学校 / 多職種連携 / 養護教諭 / スクールカウンセラー / 衛生管理者 / 社会人経験のある教員(中途入職教員) / スクールロイヤー / スクールリソースオフィサー / 社会人経験のある教員 / 看護師免許を有する養護教諭 / 労働者の過半数代表 / 学校医 / 過半数代表 / 社会人経験者 / 特別免許状 |
Outline of Research at the Start |
本研究は「チームとしての学校」や「令和の日本型学校教育」の理念で示されている多様な専門性を活用した学校を実現する上で、教育以外の専門性を有する教員や常勤職員を活用することで専門性を「内部化」している事例を考察し、非常勤の外部人材に依存している現状の専門性の活用形態と比較した教育効果や影響を検証する。具体的には、社会人経験を有する教員や特別免許状授与者、看護師・公認心理師・弁護士などの国家資格を有する教員、常勤の専門職員などの活用例を調査し、多様な専門性を内部化することで学校経営や教育活動にもたらされる効果、教員文化に与える影響、他職と比較した教員の職種としての特徴などについて明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「チームとしての学校」や「令和の日本型学校教育」の理念を実現するために不可欠となる多様な専門性の協働について、人材に焦点を当てて研究している。 本年度は弁護士資格を有する教員として学校内部で学校法務活動を行ってきた研究者自身の経験をデータ化して整理するとともに、養護教諭とスクールカウンセラーの専門性と学校組織内での課題について実地調査やインタビュー調査を実施した。また、衛生管理者や産業医、過半数代表者や教員組合幹部、学校医、スクールロイヤーに関しても衛生委員会やいじめ対策委員会等の参与観察を通じて学校組織でその専門性がどのように活用されているかを調査した。さらに、民間企業出身の教員や民間企業と兼業する教員に対してもインタビュー調査を実施し、教員の専門性や働き方について他の職種や業務との比較分析を試みるとともに、福祉関連の資格を有する教員にも調査を実施し、学校内でのソーシャルワークの専門性の活用について実態を考察した。 また、本研究は「チームとしての学校」や「令和の日本型学校教育」の理念を実現する上で、「学校や教員は教科教育以外の専門性を担うべきか」という規範的な問いに対してもアプローチしている。この点は学校の働き方改革とも関連する研究テーマであり、学校が担わなくともよいとされる業務について本当に外部人材に担当させることが有用なのか、その効果を検証することも研究範囲に含めている。そのため、研究当初から継続的に行っているスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等の外部人材の専門性に関する先行研究を引き続き検討するとともに、これまでの政策どおり教科教育以外の専門性は外部人材に委ねることで「外部化」すべきか、心理・福祉・法律・医療等の専門性を有する教員を育成することで専門性を学校組織に「内部化」すべきか、議論提起していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は研究期間の延長を受けて新型コロナウイルスの影響により実施できていなかった実地調査をある程度実施できたが、別の研究を優先しなければならない都合上予定よりも遅れている。 スクールカウンセラーに関する調査をはじめ、本研究の核心である専門性の「外部化」と「回部化」の比較と効果検証に関連した調査はやや順調に進展している。中でもスクールカウンセラーの組合が実施した調査に関与することができたため、専門性の協働に関する実情と課題を示唆する知見が得られたことは大きな収穫であった。 また、国際比較調査でも進展が見られた。アメリカの学校警察官制度であるスクールリソースオフィサーや学校看護師であるスクールナース等の専門性に関する文献調査では、外部専門職が学校に関わる場合にはその専門性を学校のニーズに合わせて変容させていく意識が重要であることが示唆された。アメリカやイギリスのスクールソーシャルワーカーの分野は比較的先行研究数が多いことから、文献調査を順調に進めることができた。 本年度は本研究の実地調査の重要対象である、看護師免許や臨床心理師・社会福祉士等の資格を有する教員、社会人経験のある中途入職教員(特別免許状授与者を含む)、民間人校長・養護教諭出身校長、その他特殊な専門性を有する教員への調査の他、教員出身の弁護士やスクールカウンセラーや教員出身の民間企業社員・公務員にも調査を行い、比較分析を通じて教員の専門性と他の職種の専門性の相違点を示すとともに、専門性の融合と葛藤に関する当事者の心理や意識についても考察したい。また、本研究に付随して衛生管理者や過半数代表者への調査で得られた知見をもとに、働き方改革における衛生委員会や労働組合・過半数代表者の役割についても考察したい 本年度は論文執筆や学会発表等がほとんどできなかったため、積極的に執筆や発表を行っていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の調査結果からは、「チームとしての学校」に関わる様々な外部人材はその専門性が学校文化に受容されるために自らの専門的なバックグラウンドと学校文化との違いを意識しながら専門性を変容させていく過程が存在しているという知見が得られた。これは専門性を外部人材に委ねて「外部化」する上で重要な知見であるが、スクールカウンセラーに対する調査では、専門性を変容させることにストレスを感じる者が多いことが判明しており、専門性の協働を実現する上で学校は外部人材の専門性をありのまま受容することが可能なのか、それが子どもにとって効果があるかどうかも検討する必要がある(ただし、スクールカウンセラーの専門性自体も学術的に十分議論されているとは言い難い)。例えば、スクールカウンセラーの学校組織に対する集団守秘義務と個別の相談者である子どもに対する守秘義務の関係について、弁護士の視点からも検討したい。 また、もう1つの重要な知見として、教科教育以外の専門的業務を担当する教員は、その専門性を向上させることの有用性に価値を置きつつも、その専門性が教員という立場と相反するリスクや葛藤を感じている点である。例えば、研究者自身は弁護士資格を有する教員として勤務していたが、学級担任の立場で利害が対立する生徒の双方から相談を受けることは弁護士として利益相反行為の禁止に抵触しないか、という問題に直面していた。本年度に実施した調査でも、看護師免許を有する養護教諭や、衛生管理者を担当する養護教諭は、専門資格や役職上必要なスキルが役立つ場面と教員としての守備範囲が異なるという問題に悩んでいることが判明している。これらの知見は、心理・福祉・法律・医療等の専門性を教員が担当することで学校組織に「内部化」する上で重要な知見であることから、今後も調査を継続して得られる様々なデータをもとに考察を続けていく必要がある。
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