初年次の要約文作成過程における学習方略の策定と気づきを促すルーブリック評価の開発
Project/Area Number |
21K02641
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 09050:Tertiary education-related
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Research Institution | Osaka University of Tourism |
Principal Investigator |
湯浅 千映子 大阪観光大学, 国際交流学部, 教授 (10758791)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小森 三恵 大阪観光大学, 国際交流学部, 教授 (50388683)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
Fiscal Year 2023: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2022: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | 要約文 / アカデミック・ライティング / 初年次教育 / ルーブリック / 自己評価 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、日本人学生と学部留学生が学ぶ大学初年次のアカデミック・ライティングにおいて、汎用性のあるレポート指導の方向性を示すことを目的とする。レポート完成までの段階的なライティングスキル修得の一過程に要約を位置付け、要約文作成に必要な学習方略を提示する。学習方略は、要約文調査の分析から帰納的に抽出する。 この方略を基に、学生が自ら書いた要約文をモニタリング・自己点検できるルーブリック評価を策定する。学習方略の使用には、自分がどんな知識やスキルを有するかを把握し、課題目標と現状とのずれを検出するメタ認知の働きが関与すると考え、ワーキングメモリの観点から検討を加えて「自己評価ルーブリック表」とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本人大学生と学部留学生が大学初年次に経験する大学初年次の「学修」における「要約力」を活かしたアカデミック・ライティングの学びの方向性とその指導の在り方を示すことである。本研究は、大学初年次のレポート・ライティングのスキル習得の段階的な過程(情報の探索、文献資料の読解、引用、課題レポートの作成)において、「要約」が必要とされる点に着目する。ここでの「要約」とは、理解した情報を記録し、その理解した内容をレポート作成や口頭発表の場で表現し、伝えるための有効な手段であると考える。 本研究では、日本人大学生と学部留学生を調査協力者とする「要約文調査」を実施した。本調査は、新聞社説を原文とし、「大意(原文の概要)」 と「要旨(原文の主題文に相当)」という長さの異なる2種の要約文を書くものであり、原文の見出しの有無や見出しの内容の違いが要約文にどう影響するかを見るため、「見出し無し群」、「見出し有り群(原文と同じ/原文とは異なるもので、主題文から作成)」の3群に分け、要約文を収集した。その上で、原文と要約文を比較し、学生が書く要約文の文章構造の類型とまとめ方の傾向の差を見ることで、学生がより良い要約文を書くためにはどのような学習方略が必要かを明らかにする。また、その学習方略に基づき、学生が自身の書いた要約文をモニタリング・自己点検するための「ルーブリック評価表」を策定する。 本年度は、前年度までの計3回にわたって実施した、各回それぞれ異なる新聞社説の記事を原文とする「要約文調査」の要約文の筆記データをテキスト化し、大学の講義の談話構造を分析した佐久間まゆみ(2010)の分析方法に従い、原文と要約文の文章それぞれを分析単位(「情報伝達単位(CU)」)によって区分し、原文と要約文のCUを照合させ、CUの残存傾向(CUの出現頻度と出現した形態)の比較と分析を続けている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度と前年度の計3回にわたり、大学初年次の日本人大学生と学部留学生(各回計100名以上・一部2年生を含む)を調査協力者とする「要約文調査」を実施した。本年度は、収集した要約文の筆記データのテキスト化を完成させ、原文と要約文に「情報伝達単位(CU)」を付与してデータの整理を行い、原文のCUが要約文中にどの程度残存するか、その傾向を分析し、調査協力者の学生が書いた要約文の特徴とその表現類型の比較検討を行った。 また、調査協力者の学生へのフォローアップ・インタビューを行うのと併行して、主に学部留学生を対象に、「要約文の妥当性調査」(「要約文調査」で得られた複数の要約例の中から適切だと思う要約文を選び、理由を述べる)・「口頭要約調査」(原文を読んで要約した内容を話して説明する)に着手している。 上記の調査・分析の過程で、学部留学生の場合、原文の文章構造を把握し、主題文の位置が理解できるものの、その要約文では、原文のCUをそのまま抜き書きし、原文の再構成や表現が適切にできない例が見られることがわかった。このことから、学部留学生が原文の文章構造をどのように把握し、それをどの程度、原文の理解や表現に反映させるかを探るべく、内容が対応し、構造が異なる複数の文章を用意し、その読みやすさを評価する調査も行っている。 初年次教育担当教員や日本語教育の専門教員を要約文の評価者とし、「望ましい要約文」を選定してもらい、その評価の基準を尋ねる「要約文の評価調査」についても、実施に向け、準備を進めている。 「要約文の評価調査」に際し、80年代後半から2020年代までの日本語教育学分野の要約文研究の動向と、「CEFR」補遺版の Mediation(仲介)と要約の関わりについて論じた、いずれも文献調査の学術論文2本を発表し、調査の参照とした。また、現時点の成果をまとめ、学会の口頭発表1件も行った。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も要約文調査で得られた要約文の比較と分析をさらに精緻化させ、調査協力者の学生間の比較のみならず、「大意」と「要旨」、「見出し無し群」と「見出し有り群」といった多角的な視点から総合的に要約文の特徴を明らかにし、大学初年次の日本人大学生と学部留学生の書く要約文の表現類型を定める。 「要約文の妥当性調査」・「口頭要約調査」・「要約文の評価調査」も引き続き実施し、分析を進める。指導者側の教員を対象とした「要約文の評価調査」では、大学初年次の「学修」全般に調査の範囲を拡げ、また、調査項目も、要約を活用した大学初年次の学びの実際を問う項目、要約を通した「学修」に対する意識を問う項目を追加するなどして、再検討を行っている。これを受け、調査協力者の学生に対しても同様の観点から調査を実施し、学生自身が取り組む大学初年次の学びとアカデミック・ライティング、そして要約についての意識や姿勢を尋ねる予定である。 以上の調査とその分析結果を総括し、本研究の課題である「要約の学習方略の提示」と「要約のルーブリック評価の選定」を行う。
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Report
(3 results)
Research Products
(6 results)