Project/Area Number |
21K02676
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 09050:Tertiary education-related
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Research Institution | Fukushima National College of Technology |
Principal Investigator |
笠井 哲 福島工業高等専門学校, 一般教科, 教授 (90233684)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 宏宣 福島工業高等専門学校, 一般教科, 教授 (90310987)
車田 研一 福島工業高等専門学校, 化学・バイオ工学科, 教授 (80273473)
澤田 宰一 福島工業高等専門学校, 一般教科, 准教授 (80647438)
江本 久雄 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (90556698)
金澤 伸一 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (20580062)
渡辺 賢治 常磐短期大学, 幼児教育保育学科, 准教授 (60734986)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,640,000 (Direct Cost: ¥2,800,000、Indirect Cost: ¥840,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2022: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 高専制度 / 短縮型高等教育 / 成立条件 / 設立目的 / 非大学化戦略 / 早期専門性 / 旧制工専 / 準備教育 / 高等専門学校制度 / 卒業者エスノグラフィー / テクニカル・スキル型自意識 / 学歴キャリア自意識 / 実質的専門性の限界 / 人材輩出ミッション領域 / 葛藤的性格 / 特殊性-非特殊性問題 / 速成型高等教育 / 後期中等教育相当期間 / 高専教育担当経験者 / 当事者エスノグラフィー / 中長期的高専教育内容レリバンス / シグナリング理論 / <教育―研究―学校運営>の環 / 高専教育 / 早期専門教育 / 弱点 / 当事者エスノグラフィ研究 / 将来展望 |
Outline of Research at the Start |
高等専門学校は工業技術者の育成を主目的としてきたため,特殊な高等教育制度の特徴や長所と弱点を自発的かつ綿密に解析する機能を高専自身が欠いてきた。本研究の参画者は全員が高専での教職の経験を有している。このグループが稀有の強味として具える全国的な高専関係者ネットワークを活用し,現今高専教育の現場に身をおく者が体感する高専教育に内在する看過できない課題群を<各高専>という閉じた垣根を越えて明らかにする。本研究の特色は,従来専ら大学教育学部等に身をおく外部の教育研究者が第三者的として高等専門学校へ注いできた視点での高専教育を刷新・補完する,当事者による高専教育の現在の課題の解明・言語化・公知化にある。
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Outline of Annual Research Achievements |
1960年代に「中級技術者」の輩出を目的として創設された高等専門学校制度は,大学工学部と比較し2年早い同等の学修の完成を始原的本旨とする。これを反映し,その5箇年の標準在学期間(=準学士課程)は形式的には全て「高等教育」へと区分される。中学校卒業時点(15歳)から開始される“無駄のない”「早期専門」型の高専の工学教育が,卓抜な職業的工業技術者の輩出を可能にするといわれてきた。このため,「極めて早い学齢期に始まる職業技術トレーニングへの高効率・高集中度の注力,強力かつ集中的に訓練された理工系高度人材の輩出が可能」という一般的なイメージが高専教育にはあるが,実際は,高専はその黎明期から大学での理科系の中核的教程を,大学学齢よりも三年も若齢で履修させる「速成型準大学」の方針を採ってきた。 ゆえに,「高校までの中等教育内容の批判的止揚による大学からの高等教育の幕開け」型の学習ハビトゥス上の変身的ナラティブの演出は,高専教育では不可能である。このため,高専教育の奏功の死命線は専門分野教育実施期間の狭隘よりは,むしろそこへ至る誘導過程の難しさにあるといえる。 高専教育の強みとして言及される早期からの専門教育への進入を自身で成功裡に体得した方法に準じ教育現場でこれを実現できる高専教員は極めて僅少で,結果的に,高専教育現場の教員の職業上のハビトゥスは,一般論的な「職業訓練的教習」と「速足の大学型教程」という両極端な二描像へと不可避的に分裂する。 高校から大学という一般的経路で就学した大半の高専教員が,通常より若年の層に早期に高等教育を施す際の教授技術/姿勢/実務上の慢性的困難は無視できず,この点での研究と理解の深化が,今後の高専教育の持続には必要である。以上の研究結果を令和五年秋季に関係誌へ投稿し,現在査読中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの進捗は以下のようである。 [①第二次世界大戦後の学制改革と高等専門学校制度設立の関係性からうかびあがる高専教育制度の性格的特徴の解明]高専教育の特徴づけに常用される<早期からの専門教育(の強み)>という表現は,制度の黎明期から使用されていたのではなく,21世紀になってから定着したことが文献調査により明らかになった。昭和三十年代後半の法令解説を検討したところ,高専制度の性格づけは「早期専門型の高等教育」よりは「大学制度とは別個の教育制度」が高専制度の理念的骨子であることが読みとれる。その意味で,「旧制工専の或る面での復刻版」としての新制高専という理解は謬見ではない。新制の高専は「大学教育の準備期間とも見える高校」の部分を期間的に捨象することで「非大学型高等教育制度」としての体裁を具えることになった。 [②現場の教員や卒業生への聴き取りによるエスノグラフィー調査]設立から既に60年を超えている現在の高専では,「伝説的なまでに水準の高かった初期段階」として,その黎明期が言及される。実際,昭和40年頃の高専の教程はほぼ大学教育でのそれに完全に並行しており,いわば高校学齢期に大学教程を教授するものだったことが初期卒業生へのエスノグラフィー調査により明らかになった。このような教程スタイルは「高専での教育は早くから始まる高水準で専門的な大学並みの教程をベースとしている」という高専教育の通念的了解の礎となっている。反面,「職業学校」としての教程上の性格の措定は困難なため,高専教育の現場での教員スタッフのハビトゥスの安定化が極めて難しいことが,実際に高専教育の現場にいる教員経験者へのヒアリングから明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,「現場で感じる<高専教育>の感触の悩ましさ」-【5つの角度】から-というサブタイトルを設定し,テーマを絞ったエスノグラフィー調査を実施する。 ①高等専門学校の外からの見えづらさに起因する問題:高専をめぐりいわれる「高専制度の認知度の低さ」も問題だが,結果として生じる「高専の稀少価値バイアス・稀少価値ヒューリスティックス」が作動しやすく,高専をめぐる一般言説は極めて「能書き」寄りのものになって久しい。このため,高専をめぐる様々な誤解,過大評価,弱点が見過ごされる傾向がある。外の人による高専の評価は,内側にいる者のそれとは視点齟齬をかかえやすい。 ②「高専教育の高い評価」の見方にまつわる問題:製造業セクターは常態的に人手,とくに若年層の不足状態にあるので,工業高等専門学校としてスタートした高等専門学校の求人需要は元来卒業生の数に比して高い。高専卒業生の需要の高さが本当に高専教育の実際的な特徴に起因するのかは議論の余地がある。 ③中等教育から高等教育への「シームレス移行」の現実的可能性にまつわる問題:「大学受験という慣行によるロスがない」ことが高専教育の強味である,とは高専側からの常套句だが,これが一義的に教育事業上の強味や無駄の無さに繋がっているかには多面的検討が必要である。④高等教育として亜型であることにまつわる問題:現在<高等教育の(2年もの)短期化>にメリットは有り得るのか?⑤短縮型高等教育の宿命としての「省略項」に因る問題:高専教育は「(大学受験期間によるロスがないため)凝縮され効率の良いカリキュラムにより高校三年間+大学学部四年間の計七年より二年短い五年間で大学学部教育に匹敵する教育効果をあげている」と表現されてはいるが,二年間の短縮は多くのコンテンツの省略により為されていることは否定できない。年限の短縮による過密な「教え込み型教育」の是非は,再検討の必要がある。
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