義務就学制実施後の聴覚障害教育の目的論・方法論の変遷における専門的基盤の問い直し
Project/Area Number |
21K02713
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 09060:Special needs education-related
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Research Institution | Bunkyo University |
Principal Investigator |
佐々木 順二 文教大学, 教育学部, 教授 (20375447)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2025: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2022: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | 聴覚障害 / 言語指導 / 生活の言語化 / 言語の生活化 / 自然法 / オーラル・ヒストリー / 義務就学制 / 専門的基盤 / 教育の目的 / 教育的人間関係 / 歴史 / 聴覚障害教育 / 目的論 / 方法論 / 学校アーカイブズ |
Outline of Research at the Start |
本研究は、日本の聴覚障害教育が築いてきた専門的基盤を継承し、新しい社会環境の中で発展させるための条件を、昭和23年の義務就学制実施後の聴覚障害教育の目的論と方法論の歴史的分析から明らかにするものである。その際、教育の目的論は、学校の設置主体、聴覚障害当事者の生活像、及び障害観との関連から分析し、方法論は、言語指導の専門性の継承、教師と児童生徒との関係(=教育的人間関係)との関連から分析する。研究資料の調査・収集は、東京都内及び周辺に位置する聾学校アーカイブズからの協力を得ておこなう。
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Outline of Annual Research Achievements |
1 義務就学制実施後の聴覚障害教育の方法的基盤の一つとしての「言語の生活化」論 日本の聴覚障害教育では、昭和8、9年頃より、東京市立聾学校が提唱した「読話単文主義」が提唱されるが、昭和12、13年頃より、この主義が児童の生活からやや遊離して行われているとの批判がなされ、「生活の言語化」が主張されるようになった。これに対し、当時新潟県立長岡聾唖学校教諭であった野中榮次は、昭和15年、第16回日本聾唖教育会総会並研究会の席上で、また、同年の『聾唖教育』誌上で、「生活の言語化」の方法上の意義を認めつつ、言語の形式的側面の指導や系統性のある指導を重視する「言語の生活化」を主張した。 今日、特別支援学校(聴覚障害)の乳幼児教育相談や聾学校幼稚部で採用されている言語指導法としての「自然法」は、子どもの生活の中での自然な対話を通じて言語習得を図るものであるが、それを担う指導者には言語発達に関わる知識、語彙や文型、言語素材に関わる知識と、それらを子どもの必要に応じてモデルとして提示できる力が求められる。野中は、言語の系統性を保ちながら子どもの生活に即した言語習得を目指したという意味で、この「自然法」にも通じる考え方をもっていたといえる。 今後は、野中が対峙した「生活の言語化」の主張の拠点であった愛知県聾学校や、関連する主張であった「能動学習」を提唱した大阪府立聾唖学校の教師達の考えや実践を分析する必要がある。その上で、昭和戦前・戦中期までのこれらの主張が、義務就学制実施後(1948[昭和23]年度~)の聴覚障害教育の方法的基盤の整備にどう接続していくのかを明らかにする必要がある。 2 地方聾学校における方法的基盤 A県立B聾学校にて昭和20年代以降の学校経営案等の資料調査を行った。また昭和31年4月にA県立C聾学校に着任した元教師から専門性装備のプロセスについて聞き取り調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
戦前期までの聴覚障害教育の言語指導論における到達点であり、戦後期以降の言語指導論の起点として位置づけられる「生活の言語化か、言語の生活化か」という命題について、これまで収集した史資料に基づき、特に「言語の生活化」の視点からの分析を行い、学会発表と学術誌への投稿を行うことができた(投稿論文は採択され、印刷中)。 また、A県立B聾学校での資料調査とA県立C聾学校元教諭へのインタビュー調査では、前年度に受けた研究倫理審査に基づき、文書により個人情報保護の事前説明を行った上で依頼をするなど、所定の手続きを踏んで進めることができた。 この他、文献研究に使用する史資料を、大学図書館の相互利用サービス、国立国会図書館の送信サービス等により補充することができた。聴覚障害教育史関連の図書、オーラル・ヒストリーの方法に関わる図書についても補充することができ、研究基盤が充実した。また、研究補助者の雇用により、入手した史資料の電子化作業を進めており、史資料の読解・分析作業を効率化する基盤が整いつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
1.昭和戦前・戦中期までの言語指導論の昭和戦後期への継承の分析 昭和15年頃に活発となる「生活の言語化か、言語の生活化か」の議論について、「生活の言語化」の視点、並びに関連する主張であった「能動学習」の視点から分析する。その上でこの議論が、義務就学制実施後の聴覚障害教育の方法的基盤の整備にどのように継承されるのかを、文献研究および元聾学校教師へのインタビューを通じて明らかにする。文献研究は、「生活の言語化」の主張の拠点であった愛知県聾学校(昭和23年、愛知県立名古屋聾学校と改称)の教師達の考え方と実践を中心とするが、聴覚障害教育界全体を俯瞰する視点をもちながら分析を進める。元聾学校教師へのインタビュー調査は、特定の地域に限定せず、縁故法によって調査協力者を選定する。その際、聴覚障害教育・福祉の啓発、研究調査等を行ってきた全国団体、並びに研究代表者がこれまで史資料調査を行ってきた聾学校等に相談して進める。なお、実施済みのインタビューについては、追加調査、逐語録チェック等を経て、オーラル・ヒストリー研究としてのまとめ、研究発表を行う。 2.聾学校卒業生からみた聴覚障害教育の目的論、方法論の分析 聴覚障害教育の専門的基盤が整備される昭和20年代以降に教育を受けた聾学校卒業生へのインタビュー調査を行う。インタビュー対象の選定は縁故法により、地域の聴覚障害者団体に相談して進める。インタビューでのコミュニケーション方法、手話通訳者の依頼の要否については、インフォーマントとのやりとりを通じて判断する。 3.昭和40年代以降の聴覚障害教育の専門性の問い直しの分析 昭和40年代、栃木県立聾学校は、口話法に手話、指文字を加えた指導法である「同時法」を採用するが、この方法の当否やそれが前提とする教育観、障害観を巡って、様々な議論が展開される。栃木校の同時法導入の教育的、社会的意義の分析を進める。
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Report
(2 results)
Research Products
(2 results)