Project/Area Number |
21K03035
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 10020:Educational psychology-related
|
Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
大石 和男 立教大学, 名誉教授, 名誉教授 (60168854)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 伸太郎 千葉工業大学, 先進工学部, 助教 (20750409)
矢野 康介 独立行政法人国立青少年教育振興機構青少年教育研究センター, 青少年教育研究センター, 研究員(移行) (30967568)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
|
Keywords | 感覚処理感受性 / 環境感受性 / Highly Sensitive Child / 自然体験活動 / メンタルヘルス / Highly Sensitive Person / 児童 |
Outline of Research at the Start |
近年の本邦では、児童におけるメンタルヘルスの悪化が問題とされているものの、その解決策の柱である自然体験活動は、十分な成果を挙げられていない。そこで本研究では、種々の刺激に対する敏感さ、反応の大きさを表す特性(以下、感受性と表記)に注目する。これまでにメンタルヘルスの向上に効果的な要因は、感受性の程度に応じて異なることが報告されていることを踏まえて、本研究では、感受性が高い児童、低い児童のそれぞれに効果的な自然体験プログラムの確立を目指す。
|
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、自然体験活動の効果における個人差を予測する要因として、種々の環境刺激からの影響の受けやすさを表す生得的な特性である、感覚処理感受性(Sensory Processing Sensitivity;以下,SPSと略記)の概念に注目している。本課題の目的は、①SPSの程度に応じた効果の個人差が生じるメカニズムを明らかにし、②それぞれの特徴を踏まえた、建設的な自然体験活動プログラムの提案を行うことである。 令和4年度までに実施した研究より、日帰りおよび宿泊型の自然体験活動プログラムへの参加を通じて、メンタルヘルスは有意に向上するものの、その変化量には、SPSの程度に応じた個人差のあることが明らかとなった。これまでの成果を踏まえて、令和5年度には2件の研究を実施した。 第一に、児童が有するSPSの程度に応じた建設的な自然体験活動プログラムを提案するため、活動中の体験内容に注目した分析を行った。1泊2日のプログラムに参加した児童・青年393名(小学5年生~中学1年生)を対象に、活動前後と1ヶ月後の計3時点で質問紙調査を実施し、メンタルヘルスやSPS、活動中のさまざまな体験内容の頻度を測定した。分析の結果、SPSが高い児童は自分の意見や感情を積極的に他者へ伝える体験が、SPSの程度にかかわらず、物事に挑戦し、それを達成する体験が、それぞれメンタルヘルスの向上に関連することが示唆された。第二に、自然体験活動への参加が、児童のメンタルヘルス向上に効果をもたらすメカニズムについて示唆を得るため、児童1,200名(小学4~6年生)とその保護者を対象としたインターネット調査を実施し、自然体験活動の実施状況とメンタルヘルス、その予測因子となり得る個人要因、自然体験活動においてポジティブおよびネガティブな感情を経験する具体的な場面についての自由記述項目へ回答を求めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和5年度は、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行したものの、前年度までと同様に、調査対象の自然体験活動プログラムにおける参加者数の減少等の理由により、プログラム参加者を対象とした調査実施(インタビュー調査、質問紙調査)が計画通りに進捗しなかった。そのため、本研究課題の目的(SPSの個人差を踏まえたうえで、児童のメンタルヘルス改善に有効な自然体験活動プログラムの開発に資する知見を提供すること)を達成できたとは言い難い。そのため、現在までの進捗状況は、当初の計画から「やや遅れている」と判断した。 ただし、令和5年度末には大規模なインターネット調査を実施し、児童における自然体験活動の実施状況や、メンタルヘルス、自然体験活動におけるポジティブ/ネガティブな感情を経験する場面について、データを収集した。次年度には同一の児童を対象に、2時点目の調査を実施する予定であり、これらの縦断データを分析することにより、本研究課題の目的を概ね達成できるものと期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和5年度末に開始した縦断的質問紙調査について、8月に2回目の調査を実施する(※1回目の調査は2月に実施)。調査では、量的なデータとして、①自然体験活動の実施状況、②SPS、③メンタルヘルス(内在化問題)、④self-esteem、⑤セルフ・コンパッション、⑥自然観のそれぞれに関する測定尺度を、質的なデータとして、①自然体験活動においてネガティブな感情を経験する場面、②自然体験活動においてポジティブな感情を経験する場面のそれぞれに関する自由記述項目を、それぞれ収集する。 量的データについては、潜在変化モデルに基づく分析を行い、メンタルヘルスやself-esteem、セルフ・コンパッション、自然観に対して、自然体験活動とSPSの交互作用項がどのような関連を持つのかを検討する。これにより、SPSの程度を考慮したうえで、自然体験活動の実施が、児童におけるメンタルヘルスの向上をもたらすメカニズムについて示唆を得られるものと想定している。質的データについては、対象者をSPS低群・中群・高群のいずれかに分類したうえで(Pluess et al., 2018)、各群を外部変数とした共起ネットワーク分析を行う。その結果は、自然体験活動の中でも特に効果的な体験内容について、SPSの程度に応じた差異を明らかにするための資料になり得る。 令和6年度は、学会発表や論文投稿を通じて以上の成果を発信しつつ、SPSの程度を考慮したうえで、児童のメンタルヘルスを効果的に改善するための自然体験活動プログラムを提案する。
|