エンタングルメントおよびホログラフィー原理に基づく量子特徴抽出法の研究
Project/Area Number |
21K03380
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 13010:Mathematical physics and fundamental theory of condensed matter physics-related
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松枝 宏明 東北大学, 工学研究科, 教授 (20396518)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2021: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
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Keywords | エンタングルメント / テンソルネットワーク / ホログラフィー原理 / 量子ビット多体系 / 強相関電子系 / 非平衡動力学 / 特異値分解 / 量子特徴抽出法 / 量子多体系 |
Outline of Research at the Start |
人工知能や深層学習で流行している大規模データからの自動的特徴抽出は,量子物理学においても非常に興味深い概念である.本研究では量子的に揺らいだ複雑な多体状態から本質的な情報を効果的に抽出する方法を開発する.それにより,近年の異分野融合型物理学の最重要キーワードである「エンタングルメント(量子もつれ)」や「ホログラフィー原理(バルク境界対応あるいは量子古典対応)」に対する深い理解も与える.
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Outline of Annual Research Achievements |
基礎物理学の諸方面から量子技術まで量子もつれ(エンタングルメント)は非常に重要な意味を持っており,その性質を深く理解することが現代科学を進展させる重要な鍵となっている.またホログラフィー原理と呼ばれる全く異なる古典理論・量子理論の等価性を謳う原理も同様に様々な基礎物理学の分野に共通して現れており,これは特に複雑な量子系の特徴を特別な計量を持つ高次元空間に効果的に埋め込む量子情報のメモリ理論としての位置づけがある.エンタングルメントおよびホログラフィー原理の機能性を深く追求しながら,以下の点を解明することが本課題3年間の計画である(研究の進行で理解も深まり,課題詳細は当初計画から多少拡大している):(1)量子的特異値分解の開発と応用,(2)量子スピン系のエンタングルメント構造を深く理解するためのエンタングルメント熱力学の構築,(3)物性物理における量子多体問題の観点からのホログラフィー原理の解明,(4)散逸のある量子ビット多体系の複合励起描像による量子特徴抽出法の研究,(5)量子プロトコルの効率に関するエンタングルメント熱力学的解析.(1)に関しては研究初年度で既に相関行列を用いた基礎理論を達成している.(2)に関しては量子スピン系に関する精密な表現を見出しており,現在,論文を執筆中である.(3)に関しては数学的に厳密なトイ模型を見出しており,関連研究者と共著で執筆中の教科書に,階層的テンソルネットワークに基づいた量子スピン系のエンタングルメントくりこみ群理論という内容で解説を行った.完成には少し遠いが,出発点となる考え方は2022年度である程度は整備できた.(4)については国際会議で発表した成果が論文となった.(5)は研究成果が間もなく論文投稿できる状況である.加えて,固体物理・数理科学といった月刊誌に,本研究分野の啓蒙となるような解説記事を執筆した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は概ね順調に進展している.研究全般としては,量子特徴抽出法の構成や量子多体系のエンタングルメント・ホログラフィーの効果的表現論に関する基礎数理の部分と,これらを具体的な量子多体問題や量子技術のためのプロトコル研究に活用する部分の両者が大事である.これらを比較した場合,2022年度はどちらかというと後者の研究が大きく進展したと言える.これは近年の量子技術開発の要求に伴って,効果的な量子技術の背景をエンタングルメントの知識で深く理解したり実験系とのコラボレーションが非常に重要になってきたためと思われる.ここは当初計画よりは格段に進展した部分であると言える.その一方,前者の基礎数理部分は,数学的に精密な構成が非常に難しく,正直に言えばやや苦戦している部分もある.ただし,基礎的なモデル計算を繰り返し多角的に扱うことによって,徐々に明らかになってきた部分は随時論文化しつつある.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度が最終年度となるため,3年間のプロジェクト全体に対する研究総括を行う必要がある.本研究で目標としている量子特徴抽出法の完成のためには,量子多体系・量子スピン系の量子状態を効果的に表現するためのテンソルネットワーク法や複合励起演算子法の深い理解という基礎数理的部分と,量子ビット多体系の動力学・制御におけるデコヒーレンス耐性および量子プロトコルの効率をエンタングルメントの知見に基づいて抽出するという量子技術の核部分の双方の総合的・相補的な理解が必要となる.前者に関しては,厳密に解けるトイ模型を既に見出しており,それを一般化していくことを目標とする.一般化に際して,数学的に厳密な取り扱いが難しいことが予想されるため,適切な近似やくりこみ法を援用して問題にアタックする.後者に関しては,量子ビット多体系のエンタングルメントとデコヒーレンスの競合効果に関する論文が既に出版され,その応用研究が進んでいる.また量子エネルギーテレポーテーションと呼ばれるキャリアを介さないエネルギー転送プロトコルの研究が大きく進みつつあり,エンタングルメント熱力学に基づいた解析を論文化して間もなく投稿できる段階である.これも更なる展開が見込まれている.
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Report
(2 results)
Research Products
(33 results)