Diffusion Phenomena in Cells: Superstatistical Diffusion Theory and Formal Analogy between Diffusivity and Thermodynamics
Project/Area Number |
21K03394
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 13010:Mathematical physics and fundamental theory of condensed matter physics-related
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Research Institution | Aichi Institute of Technology |
Principal Investigator |
一刀 祐一 愛知工業大学, 工学部, 准教授 (80580521)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2022: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2021: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
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Keywords | 揺らぐ拡散性 / 異常拡散 / 熱力学 / 非平衡複雑系 / 弱相関 / 条件付きエントロピー / 弱い揺らぎ相関 / 超統計 / 複雑系 / 揺らぎ / 弱い相関 |
Outline of Research at the Start |
近年、細胞におけるDNA結合タンパク質及びRNA分子は揺らぎを伴う拡散現象を呈することが実験的に観測されている。これらの実験的事実に基づいて、二つに大別された研究を遂行する。初めに、複雑系の統計力学的理論である超統計の観点において揺らぎを階層的に内在させた拡散理論を展開する。ここでは、揺らぎの統計的性質も研究する。次に、揺らぐ拡散性と熱力学との間に形式的に類似の関係を熱力学の基本法則のレベルで構築する。
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Outline of Annual Research Achievements |
3年目の令和5年度は、主に以下のふたつの実績を得た。 ひとつは、揺らぐ拡散性と熱力学との間の形式的類似性についてである。当初この研究は細胞内で異常拡散を呈するRNA分子の拡散係数揺らぎ分布が指数関数型に従うことを示す実験的事実を出発点とした。研究を進めるなかで、細胞内で通常拡散を呈する他の生物系でも同様の拡散係数揺らぎが観測される実験結果に注目した。これより、幅広い生物系に対する拡散係数揺らぎに関わる熱力学第1法則及び第2法則の類似物を再考した。更に、細胞内の局所的温度揺らぎ、細胞の圧縮による拡散係数の減少、及び圧縮の調整による細胞体積の復元を示す実験結果を本研究の立場から検討した。これらを踏まえて熱力学的過程に類似の過程を考えることで拡散係数揺らぎに関わる熱機関の類似物の構築の着想を得た。これより、拡散係数変化を実現する際の効率について考察した。 もうひとつは、前年度に取り組んだ揺らぎの弱相関を伴う非平衡複雑系への条件付きエントロピーのアプローチにおける進展である。このアプローチにより、長時間スケール上で時空的にゆっくりと揺らぐふたつの量に関わる揺らぎ分布が条件付き揺らぎに対する最大エントロピー原理から導出されるだけでなく弱相関によって決定されることも分かる。当該年度ではこの弱相関の一般的性質を見出した。これは、弱相関が「一方の揺らぎの平均値での他方の揺らぎに依存する量」と「条件付き揺らぎ分布に基づくこの量の平均値」の差によって一般性を失うことなく与えられるという性質である。これを、DNA結合タンパク質、膜を欠く細胞小器官、及びビーズの細胞内拡散現象に対して例示した。この成果を学術論文としてOpen Accessの学術雑誌に出版した。また、これらについて国際会議(ベオグラード、セルビア)及びドイツ物理学会(ベルリン、ドイツ)で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」で述べたように、異常拡散だけでなく通常拡散も呈する幅広い生物系に対して揺らぐ拡散性と熱力学との間の形式的類似性の再考を必要とし、拡散係数揺らぎに関わる熱機関の類似物の構築について検討した。特に、系に依存して拡散の振る舞いを決定する拡散指数が異なる点を考慮した。揺らぎ分布に基づく拡散係数の平均値を内部エネルギーの類似物とみなしたうえで、揺らぎ分布の統計的型が一定の下での拡散係数の微小変化量を仕事の類似物、拡散係数が一定の下での揺らぎ分布の微小変化量を熱量の類似物と同定し、これらの変化が如何にして実験的に実現されるか吟味した。拡散係数の温度への比例関係を与えるEinstein関係式の仮定の下、細胞圧縮による拡散係数の減少を示す実験結果から移動度を与える比例定数は外部パラメーターに類似的であった。また、拡散係数揺らぎ分布は形式的に統計力学におけるBoltzmann-Gibbs分布と同等であることが分かるため分布の統計的型は平均温度によって特徴付けられた。これらより、平均温度一定の下での拡散係数の微小変化は比例定数の変化、比例定数一定の下での揺らぎ分布の微小変化は平均温度の変化に起因すると想像することは自然であった。従って、前者及び後者によって類似物としての仕事及び熱量がそれぞれ与えられると考えた。細胞の圧縮や膨張及び温度変化によるこれらの実現に加え、圧縮の調整による細胞体積の復元を示す実験から熱力学的過程に類似の過程で構成されるサイクルを考えることで熱機関の類似物及びその効率の議論を展開出来ることが期待された。 以上、上述の研究を遂行すべく、最終年度である当該年度をまたいで次年度へ研究期間を延長した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度で得られた実績から、幅広い生物系に対して揺らぐ拡散性と熱力学との間の形式的類似性を明らかにすることが出来ると期待される。当初計画になかった熱機関の類似物の構築についても同様である。従って、この類似性を一般性の高いレベルで見出す方向で研究を遂行する計画である。更に、前年度に興味をもった、拡散係数揺らぎ分布と不安定相互作用系の統計力学的理論における一般化されたBoltzmann-Gibbs分布との間の可能な構造的関連の理解も引き続き試みたい。
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Report
(3 results)
Research Products
(8 results)