長距離相互作用系における異常現象の普遍性解析と応用
Project/Area Number |
21K03402
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 13010:Mathematical physics and fundamental theory of condensed matter physics-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山口 義幸 京都大学, 情報学研究科, 助教 (40314257)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2025: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 非熱平衡状態 / 普遍性 / 多時間スケール / 形状変化 / 力学的安定化 / 長距離相互作用系 / 転移 / システム同定 / 線形応答 / 異常現象 |
Outline of Research at the Start |
自然界には4つの力が存在するが、これらのうち重力と電磁気力は遠くにある要素からの影響が無視できない長距離力である。星の集団や電子の集団など、異なる対象であっても長距離相互作用という視点から見ると共通する性質も見受けられる。この共通性を抽出するような研究により、従来の常識を覆すような異常な現象が普遍的に長距離相互作用によって生み出されることが近年続々と発見されてきた。本研究では、長距離相互作用する対象を分野横断的に研究することによって、長距離相互作用が作る異常性とその普遍性の研究をさらに発展させることを目的の一つとする。また得られた知見を応用することも目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
長距離相互作用系における特徴の一つに複数の時間スケールの存在が挙げられる。粒子個々の運動時間スケールに比べて、それらが構成する平均場の時間スケールは十分に長い。この多時間スケール性によって、系は非熱平衡状態に長時間留まり、多自由度ハミルトン系であるにも関わらず平衡統計力学の結果と一致しない現象を示す。顕著な例としては、粒子数無限の熱力学極限において系は熱平衡状態に緩和しないことが挙げられる。また非熱平衡状態における臨界現象について、統計力学が教える数値とは異なる臨界指数を示すこと、相転移の次数が異なること、などが起こる。多時間スケールの存在が誘起する一見異常な現象の普遍性を明らかにすることが本研究の主たる目的の一つである。 相互作用が平均場的であるみなすと粒子の配置は問題にならないが、生体分子や化学反応では分子形状が重要となる。分子形状については分子をバネで連結された玉としてモデル化したバネ玉系モデルが考えられることがある。先行研究では、形状変化(遅い時間スケール)に対するポテンシャルエネルギーが存在しないにも関わらず、バネ振動(速い時間スケール)を励起すると直線形状が安定化することが数値シミュレーションで観測されていた。本研究ではこの現象を理論的に説明しただけでなく、さらに興味深い予言をすることにも成功している。3つの等質量の玉が等しいバネで鎖状に連結された系を考える。先行研究ではバネを同位相で励起して直線形状の安定化を得たが、本研究によりバネを逆位相で励起すると直線形状が不安定化されることを明らかにした。さらには折れ畳み形状は同位相では不安定化し、逆位相では安定化することも理論的に予言した。またこれらの結果を数値シミュレーションによって確認した。本研究の結果は、生体分子の形状変化や化学反応に対する力学効果という新たな研究分野を切り拓くものと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、異常性の普遍性を明らかにする基礎研究と、その結果を応用する研究の二つを計画している。本年度の研究は、分子モデルにおける多時間スケールの存在が非直観的な現象を誘起すること、またこの現象が普遍的に起こることを明らかにした。一方で、自己重力系やプラズマ系を記述する Vlasov方程式を解析する基礎研究や、結合振動子系に対する応用研究については、海外在住の研究者との共同研究を行っており、一定の研究成果を得てはいるが本年度中の論文出版には至らなかった。特に前者については海外研究者との共同研究が大きな役割を担っているため、研究の効率的な進展のために海外渡航して対面での議論を計画していたが、コロナ禍によって海外渡航を延期せざるを得なかったことが大きく影響していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、(i)Vlasov方程式やその類似方程式の基礎研究、(ii)多時間スケールの存在による形状変化の力学効果に関する研究、(iii)結合振動子系に対する応用研究、などを対象として研究を進める予定である。(i)についてはリモート会議などを通じて海外研究者と共同研究を進める中で、やや計画より遅れてはいるものの成果を得られたため近々論文として出版する予定である。(ii)については本年度の研究で得られた3体系に対する成果を多体系に拡張することや、分子形状の多様化を計画している。(iii)についても研究成果を得ているので、出版に向け進めていく。また推進方策として、特に(i)については海外研究者との共同研究が大きな役割を担っているため、海外渡航が可能な状況となれば直接的な議論を行うため海外渡航を行う予定である。
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Report
(2 results)
Research Products
(10 results)