Development of quantum algorithms for quantum chemical calculations by utilizing spin symmetries
Project/Area Number |
21K03407
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 13010:Mathematical physics and fundamental theory of condensed matter physics-related
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Research Institution | Osaka Metropolitan University (2022) Osaka City University (2021) |
Principal Investigator |
杉崎 研司 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 客員研究員 (70514529)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥3,120,000 (Direct Cost: ¥2,400,000、Indirect Cost: ¥720,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 量子コンピュータ / 量子化学計算 / 量子アルゴリズム / 電子状態 / 電子スピン |
Outline of Research at the Start |
量子化学計算は量子コンピュータの近い将来の計算ターゲットとして非常に注目されています。分子の物性はスピン量子数に依存し、スピン状態が異なれば反応性なども大きく異なるため、量子コンピュータを化学研究に真に役立つようにするには、正しいスピン量子数の電子状態について計算を行い、波動関数を得ることが必要不可欠です。本研究では、原子・分子の波動関数がスピン二乗演算子の固有関数であることを積極的に利用し、望んでいるスピン量子数から波動関数が原理的に外れることがなく、必ず正しいスピン量子数の電子状態で量子化学計算が実行できるような新規量子アルゴリズムの開発を行います。
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Outline of Annual Research Achievements |
量子化学計算は量子コンピュータの近い将来の計算ターゲットとして注目を集めているが、分子の物性や化学反応性などはスピン状態に依存するため、量子化学計算を実際の化学研究に役立てるためには正しいスピン状態について量子化学計算を実行することが必須である。また、量子位相推定アルゴリズムに基づく量子化学計算では、求めたい電子状態の波動関数と大きな重なりを持つ、良い近似波動関数を準備する必要がある。 断熱量子アルゴリズムの一種である断熱状態生成法(ASP法)は、時間依存ハミルトニアンのもとでの波動関数の時間発展を用いて、平均場近似であるハートリー・フォック(HF)波動関数から電子相関の効果を取り込んだ波動関数を生成する手法であるが、ASP法は特に分子内に不対電子を含むような多スピン系への応用が難しいという問題を抱えていた。そこで、ASP法において、敢えてスピン対称性が破壊されたbroken-symmetry(BS)波動関数からスタートし、スピン二乗演算子をペナルティ項として時間依存ハミルトニアンに追加することで、電子相関の効果を含む多スピン系の波動関数を通常のASP法よりも高速に準備できる手法を開発した。本手法は特に共有結合が切れた分子構造など、HF波動関数が良い近似とならない系において非常に効力を発揮する。ASP法の出発波動関数としてHF波動関数とBS波動関数のどちらを選択すればよいかを、開殻電子構造の寄与の指標であるジラジカル因子を用いて決定する手法も提案した。 このほか、任意の電子状態間のエネルギー差を直接計算することができる一般的な量子アルゴリズムである量子位相差推定アルゴリズムの全エネルギー計算、エネルギー核座標微分計算、相対論的量子化学計算への応用も行うとともに、GPUを用いた量子回路数値シミュレーション高速化についても報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までの研究により、量子コンピュータ上で波動関数の時間発展量子シミュレーションを行う際に用いられるTrotter分解がスピン対称性を破壊することが分かっている。波動関数の時間発展はエネルギー計算に用いられる量子位相推定アルゴリズムだけでなく、近似波動関数生成のためのASP法など、様々な量子化学計算量子アルゴリズムの中核を成している。今年度はASP法において、敢えてスピン対称性が破壊された波動関数から出発し、スピン二乗演算子をペナルティ項として時間依存ハミルトニアンに加えることにより、ASP法の計算過程でスピン固有関数が自動的に得られるとともに、通常のHF波動関数から出発するASP法よりも短い時間発展長さで良い近似波動関数が得られる新手法を提案した。本手法は、スピン対称性を満足せず、量子化学計算量子アルゴリズムでの使用に適さないと考えられてきたBS波動関数を活用することでASP法の高速化を果たしたものであり、スピン対称性活用に対する新たな道筋を示すものであると言える。 当初の研究対象としている、スピン対称性を満足した配置状態関数を生成するGUGA法の量子化学計算量子アルゴリズムへの応用については、Shavittグラフ上の経路に依存した係数がハミルトニアン各項にかかる。この係数を求めるためには非局所的な演算が必要となり、量子論理回路に含まれる量子ゲート数が膨大になる可能性があり、量子論理回路構築にはさらなる工夫が必要となることが予想されている。
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Strategy for Future Research Activity |
ASP法におけるBS波動関数の活用は、スピン対称性を活用した量子化学計算における新たな方向性を示すものであり、ASP法以外の近似波動関数生成法、たとえば波動関数の虚時間発展に基づく手法やVQE法などへの応用を検討している。また、昨年度に開発した、一般化スピン座標マッピング法に基づく波動関数時間発展のための量子論理回路構築方法をASP法や量子位相差推定アルゴリズムへと実装することで、量子論理回路の短縮とTrotter分解によるエラー削減を同時に行うことも計画している。GUGA法に基づく量子化学計算量子アルゴリズム開発はスピン対称性が決して破られない代わりに、非局所的な量子演算を多用するために量子論理回路が非常に長くなる可能性があるため、非局所演算を少なくするための方策を練る必要がある。量子コンピュータによる量子化学計算では、波動関数のエンコーディング法を変えることでハミルトニアンの局所性を高められる場合があることが知られており、GUGA法においてもエンコーディング法を変えることで非局所演算を少なくできるかについて検討する。量子三準位系であるqutritを用いた、スピン一重項状態に特化した量子化学計算手法については、水素分子のような簡単な分子系についてハミルトニアンの変換および量子論理回路の構築を進める。
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Report
(2 results)
Research Products
(39 results)