局所的空間反転対称性の破れによる電流誘起スピン偏極の生成
Project/Area Number |
21K03413
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 13020:Semiconductors, optical properties of condensed matter and atomic physics-related
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
明楽 浩史 北海道大学, 工学研究院, 教授 (20184129)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江上 喜幸 北海道大学, 工学研究院, 助教 (20397631)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
|
Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2023: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2021: ¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
|
Keywords | スピントロニクス / 原子層 / 原子鎖 |
Outline of Research at the Start |
局所的空間反転対称性は、物理学の基本概念として、また反強磁性スピントロニクス実用化への期待から、多方面の研究者の注目を集め物性物理学の中の一つの研究分野に発展しつつあるが、この対称性が破れているときに生じる局所的電流誘起スピン偏極の大きさが何によって決まっているのかという基本的な問いへの答えは未だ得られていない。本研究では、この「決定要素」として空間反転対称性が破れている原子における電子経路の折れ曲がりに着目し、原子内に誘起されるスピン偏極の大きさが経路の曲率にどのように依存するかを解明する。
|
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 様々な螺旋状有機分子において観測されているスピン選択性に対する共通の機構を解明することを目的として、昨年度から継続して、螺旋状原子鎖におけるスピン・速度ロッキング(電子の運動の向きによって電子スピンの向きが決まる現象)の研究を行った。さまざまな形状の螺旋に対する計算を行うことで、ロッキングには螺旋の曲率と捩率の両方が必須であること、2つのタイプがあることを突き止めた。このロッキングを利用することによりスピンフィルター効率がほぼ100%に達するため、磁気抵抗メモリ(MRAM)の磁化スイッチングの効率の向上につながることが期待される。今年度はこの研究を論文にまとめ学術雑誌に投稿した。 (2) 磁性不純物による磁化と半導体中の電子との間に働く交換相互作用がk・p項による伝導帯・価電子帯間の電子遷移を通してスピンと軌道運動の結合をもたらす一般的な機構を提案し、強磁性半導体InFeAsにおいて相対論的スピン軌道相互作用より格段に大きい結合が得られることを示した。この交換相互作用によるスピンと軌道の間の結合は磁化反転の効率向上に役立つことが期待される。今年度はこの研究を論文にまとめ学術雑誌に発表した。 (3) 外因性スピンホール効果のskew散乱機構により逆向きのスピン流が生じる2つの量子井戸からなる二重量子井戸の面内に交流電場を印加した場合の反平行スピンホール流を計算し、交流電場の振動数が井戸間の電子のトンネル遷移の振動数に一致することによる共鳴ピークを見出した。この結果は交流電場の振動数を変えることによりスピン流を電気的に制御する可能性を示唆している。今年度はこの研究を論文にまとめ学術雑誌に発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
様々な螺旋状有機分子において観測されているスピン選択性に対する共通の機構として先行研究 [K.Michaeli and R.Naaman, J. Phys. Chem. C 123, 17043 (2019)] で提案された「電子の運動の向きによって電子スピンの向きが決まる」というスピン・速度ロッキングが先行研究で用いられた連続体モデルだけでなく原子鎖においても生じることを明らかにし、その起源が螺旋対称性で保存する量子数のスピン依存性にあることまで突き止めたことが理由である。
|
Strategy for Future Research Activity |
物理学の基本概念として、また反強磁性スピントロニクス実用化への期待から、多方面の研究者の注目を集め物性物理学の中の一つの研究分野に発展しつつある「局所的空間反転対称性の破れ」によって生じる局所的電流誘起スピン偏極の大きさが何によって決まっているのかという基本的な問いへの答えを目指すことが本研究課題の目的である。本研究では、この「決定要素」として空間反転対称性が破れている原子における電子経路の曲がりやねじれに着目し、原子内に誘起されるスピン偏極の大きさが経路の形状にどのように依存するかを解明する。これまでの研究で、螺旋状原子鎖における局所的電流誘起スピン偏極が曲率と捩率に顕著に依存することが明らかになった。今後はスピン流、特にスピン・速度ロッキングの曲率・捩率依存性を解明し、螺旋状原子鎖や原子層系におけるスピン偏極およびスピン流生成の効率向上の指針を提案する。
|
Report
(2 results)
Research Products
(20 results)