Project/Area Number |
21K03427
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 13020:Semiconductors, optical properties of condensed matter and atomic physics-related
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
石川 忠彦 東京工業大学, 理学院, 助教 (70313327)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2024: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2023: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | 光誘起ダイナミクス / 光誘起電荷移動 / 金属有機構造体 / 電荷移動相転移 / 光誘起構造変化 / 低次元系 / 協力的相互作用 / 電荷移動型金属有機構造体 / 時間分解測定 / 赤外スペクトル |
Outline of Research at the Start |
1次元磁性鎖が電荷移動により生成消滅するユニークな相転移を起こす電荷移動型金属有機構造体試料に着目し、究極的には光による磁性コントロールや、光、化学センサーへの応用も目論見、光誘起ダイナミクスの解明に挑戦する。電荷移動と磁性の密接な関連に着目し、光励起で起こる価数及び構造変化ダイナミクスの初期過程を、価数変化を敏感にとらえる分子内振動スペクトルによる光誘起過渡状態の観測と、価数変化によっておこる分子構造及び結晶構造の変化を捉える時間分解電子線回折の主に2つの実時間ダイナミクス測定手段を相補的に用いて、多角的な視点から、明らかにする。理論、実験両面からのメカニズム理解の進展を図りたい。
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Outline of Annual Research Achievements |
電荷移動型金属有機構造体(CT-MOF)を測定対象として、光励起による1次元磁石の生成消滅のような磁性コントロールを究極な目標とした光誘起ダイナミクスの研究に取り組む事を本研究課題の方針としている。昨年度(2022年度)までに、鉄原子とCl2An分子から成るCT-MOFについて、室温(低温相)における電荷移動遷移の励起により、当初予測しなかった光励起状態特有の隠れた安定相の出現を発見し、実験データの定量的な解析及び、量子化学計算と簡単なモデル計算から、構造的に安定な試料である対象試料において、局所的な反転対称性の変化を光励起で生み出す事が出来た事を学会等で報告してきた。本年度(2023年度)は、これらの結果の詳細をまとめ論文執筆を行い、無事に出版されることとなった。 この論文出版と並行して、上記隠れた安定相の出現のダイナミクスを明らかにするために、昨年度から開始していた東北大岩井グループとの共同研究で、6フェムト秒パルスによる時間分解分光もおこない、これまで明らかで無かった10フェムト秒スケールのダイナミクスやコヒーレント振動の観測に成功した。これにより、光励起直後は当初予測した低温相から高温相への状態変化が起きていたのだが、50フェムト秒という非常に素早い速さで隠れた安定相が出現する、という光誘起相変化の様子が明らかとなった。 これらの成果を受けて、本年度後半は、高温相から低温相方向への相変化を光励起で起こせないかの探索を行った。当初、低温相励起と同様の電荷移動遷移による相変化を試みたが、成功せず、Cl2An分子の分子内電子遷移を励起する事で相変化が発生する事を発見した。この現象は閾値的振る舞いを示すこともわかり、興味深い。これにより、本対象物質では光による双方向状態スイッチングが行える事が明らかとなり、応用展開が期待出来るものと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度(2022年度)までに、対象物質であるCT-MOFの定常分光及び、時間分解分光を精力的におこない、中赤外域および電荷遷移領域に光励起後に新しい素励起が発生すること、そしてその正体が、局所的な反転対称性の破れを示している可能性を発見していた。本年度(2023年度)は、これらの成果をまとめて、論文が無事に出版されることとなった。また、この論文出版に伴い、プレスリリース等の発表も行い、アウトリーチ活動にも積極的に取り組んだ。 これに引き続き分子内振動領域の時間分解分光を詳細に測定しさらなるダイナミクスの理解を深める事を計画していたが、共同研究である6fs光パルスを用いた光誘起ダイナミクスの初期過程の研究の進展に伴い、こちらの測定解析に重点を置くことになった。こちらの研究成果の解釈を検討することにより、光励起種の違いや、高温相を励起したときに起こるダイナミクスの検証理解が必要かつ重要である、という認識に至り、研究計画の変更が相次いだといえる。これにより当初予定した成果は上がらなかったかもしれないが、高温相の光誘起ダイナミクスにおいて、分子内遷移を励起することで低温相と高温相の双方向光スイッチング実現が達成されたこと、閾値特性の発見などの協力的相互作用の重要性を示す実験結果が得られたことなど、当初予期していなかった研究成果が得られた事は特筆に値する。本課題の目標である、光励起による磁性コントロールに関する重要な知見である。 これらの事から、本研究は順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果として、対象物質であるCT-MOF試料の電荷移動遷移光励起に伴う光誘起ダイナミクスの解明がかなり進んだが、興味深い成果として高温相からの光誘起ダイナミクスに閾値特性が観測されたことがある。更に、これまで注目していた電荷移動遷移では無く分子内電子遷移でのみ低温相への光誘起状態変化が見られたことに注目している。この違いの原因を探るには、低温相での分子内遷移によって起こる光誘起ダイナミクスの観測が必須だと考えている。そこで、最終年度となる2024年度は、低温相での分子内遷移誘起ダイナミクスを観測検証することを計画している。電荷移動遷移との違いを比較検討することで、高温相におけるダイナミクスの解明にもつながる成果が考えられる。 本年度観測した高温相での光誘起状態変化の特徴は、温度誘起相転移とほぼ同様のスペクトル変化が見られた事である。昨年度予定していた時間分解分子内振動スペクトル測定の重要性に再び注目する必要があり、これにより多角的に光誘起ダイナミクスを検証したい。また、時間分解電子線回折の測定についても引き続き検討する予定である。 また、最終年度として、アウトリーチ活動に積極的に取り組みたい。本年度は、国際会議における少なくとも2つの招待講演の依頼を受けており、他にも機会を見つけて共同研究の展開などにつなげていきたい。
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