Project/Area Number |
21K03561
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 15010:Theoretical studies related to particle-, nuclear-, cosmic ray and astro-physics
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
伊藤 誠 関西大学, システム理工学部, 教授 (30396600)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | α崩壊 / 核変換 / 共鳴散乱 / αノックアウト反応 / αクラスター模型 / 殻模型 / 平均場模型 / 光学模型 / 人工α崩壊 / 中重核 / クラスター模型 |
Outline of Research at the Start |
本研究では「α粒子模型」を基盤として「平均場模型」、「殻模型」を包括し、放射線照射により誘起される人工的なα崩壊の強度計算を行う。α粒子模型とは、α粒子と残りの核(芯核)の間の二体問題を解く手法であり、先行研究にも多くの適用例が存在する。一方、中重核では芯核が作る引力場が増大するため、α粒子が4粒子(陽子2つ、中性子2つ)に崩れる効果が強く発現すると考えられている。しかしながら、先行研究ではα粒子の崩れの効果が全く考慮されていなかった。そこで、平均場模型、殻模型を駆使し、α粒子の崩れの効果を取り入れ、より精密に崩壊強度の計算を行う。更に、この計算を放射性廃棄物に拡張し、消滅処理の可能性を探る。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、質量数が数十から100程度の原子核に放射線を照射して誘発される「人工α崩壊」のメカニズムを解明することである。原子核の基底状態、低励起状態は「殻模型」、「平均場模型」と呼ばれる独立粒子描像に基づいた模型が非常に有効である。しかしながら、最近の人工α崩壊の低エネルギー領域の強度測定の結果から、α粒子の塊(αクラスター)の形成確率が基底状態において増大していることが指摘されている。 α崩壊の先行研究では、核内にα粒子をアプリオリに仮定する「αクラスター模型」が大きな成功を収めてきた。本研究ではこのαクラスター模型を拡張し、殻模型、平均場模型の要素も包括した計算・分析を行うことである。具体的には、αクラスター模型を主軸としつつ、α崩壊の始状態と終状態に対して、殻模型と平均場模型に基づくα粒子の崩れの効果を取りた精密計算を行う。 α崩壊前の始状態にある原子核は基底状態にあり、殻模型構造が支配的であると思われる。そのため、殻模型構造とα構造の結合の効果(①shell-cluster coupling)を評価する必要がある。一方、α崩壊する終状態には、α粒子が残留核に再び融合し複合核状態を形成する過程が存在し、その過程に起因するエネルギー幅、分散幅(②spreading width)が存在する。 2023年度は以下の研究を遂行した。①shell-cluster couplingについては、2022年度までに開発した殻模型-α模型の結合を陽に解く計算手法を20Ne=16O+2n+2p(n,pは各々中性子、陽子)へ適用し、基底状態のα波動関数の精密化を行った。更に同様の計算をSn同位体に適用し最近実験で議論されているα形成振幅の分析を行った。一方、②spreading widthについては、40C+αの弾性散乱に注目し光学模型の分析を丁寧に行い、エネルギー幅の詳細な評価を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究で最も要となる計算・評価内容は、α粒子が崩壊する過程に対し、①始状態におけるαクラスター形成振幅の評価②終状態においてα粒子が残留核に融合することに生じるエネルギー幅の評価、の2点である。 ①については、殻模型状態とαクラスター状態の波動関数感の結合を陽に解く計算手法を2021年度に確立し、2022~2023年度にそれを実際に適用するに至った。具体的にはまず16O+2n+2p(n、pは各々中性子、陽子)を計算し、先行研究を再現した後、それをCd+2n+2p系に拡張し最近の実験データを再現することに成功した。一方、②のエネルギー幅(融合幅)の評価については、40Ca+αの弾性散乱に着目し、光学模型の分析を広域に渡って丁寧に行って融合幅の評価を進めた。更にその幅の効果を44Ti⇒40Ca+αという人工α崩壊の強度計算に組み込み、現実的な強度分布の計算を進めた。また、幅の起源について分析を進めたところ、融合幅の効果は小さく、別の直接反応の過程、例えば残留核がさらに核子やα粒子を放出する過程が主要であることが判明した。これらの計算は主に大学院生が主力となって進められたものである。 科研費の申請時の計画では、①については、殻模型とαクラスター模型の波動関数の間の単純なオーバーラップ計算によってαクラスター形成振幅を評価する予定であったが、両者の結合を解く手法が確立できたためより精密な計算が可能になった。一方、②の融合幅の評価はについて科研費申請当時、融合幅は時間依存平均場理論の研究者と共同で評価する予定であったが、この評価はまだ進められていない。 進捗状況を総括すると、技術開発については進んでいる面もあるが、現実的なα崩壊強度の計算については大幅に遅れている状況である。その理由は申請者は2022度から強い体調不良状態に陥ってしまい、研究活動を進めることができない状況にあるためである。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度進めた内容は、①16O+α、Cd+α系に着目し、殻模型状態とクラスター状態の間の結合を解きα形成振幅の精密計算を行った②40Ca+α系の光学模型によるα融合幅の分析とα崩壊強度への影響を調べた。人工α崩壊の精密計算に必要な技術開発は①、②の成果によってある程度確立したので、今後は現実的な系に適用し、実験データとの比較、予測を行っていくことが肝要である。ただし、現在の模型はコア核の周りにある4核子の自由度のみを取り扱っているため、コア核が16Oや40Caの様に二重魔法核を持つ場合にのみ有効である。従って今後は二重魔法数を持つ90Zrや208Pbをコア核として計算を進めるべきであろう。一般のコア核を扱う場合は、α粒子を形成する4核子と同じ軌道を占有する別の核子群が存在するため、それらの間の反対称化を取り入れることが必要になる。また、②の融合幅の計算に関しては、今回進めた光学模型による評価に加えて、平均場理論による計算も行い、その妥当性を検証することが重要である。また融合幅の分析の結果、コア核の中性子、α粒子放出の過程が重要であることが判明したため、それらの効果についても更に調査すべきである。 研究の推進方策は決まっているが、申請者は現在強い体調不良状態にあるため、これらの方策を進めることが困難な状況にある。2022年3月に3回目のコロナワクチンの接種を受けたが、その直後から強い体調異常が起こり、その後も体調不良が治癒せず、いわゆるワクチン後遺症という状況に陥ってしまった。接種から既に2年以上が経過しているが、現在も体調不良が続いている。従って、論文の執筆、数値計算、出張などといった一連の研究活動が困難な状態にある。現在も治療を続けており、体調回復を待って研究活動を再開したいと考えているが、計算を進めた大学院生も既に卒業しており、研究を再開できる目処は全く立っていない。
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