Project/Area Number |
21K03582
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 15010:Theoretical studies related to particle-, nuclear-, cosmic ray and astro-physics
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
中野 寛之 龍谷大学, 法学部, 教授 (80649989)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2025: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2021: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 重力波物理学 / 重力波 / ブラックホール / 一般相対性理論 / 重力波天文学 / 中性子星 |
Outline of Research at the Start |
重力波イベントGW150914により重力波物理学・天文学の扉が開かれた。本研究では、「ブラックホール準固有振動」と呼ばれる、ブラックホールが形成された際に放射されるリングダウン(減衰振動)重力波に注目する。これは、アインシュタインの一般相対性理論においては、ブラックホールの質量とスピンで記述されるシンプルな重力波である。本研究の学術的「問い」として、「ブラックホール」と呼ばれているものは、本当に一般相対性理論で予言されるものなのか?をあげる。この問いに答えるために、リングダウン重力波のより良いデータ解析法を開発し、連星合体後に生じた天体の情報を抽出することにより、一般相対性理論を検証する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、「ブラックホール準固有振動」と呼ばれるブラックホールが形成された際に放射される「リングダウン(減衰振動)重力波」に注目する。これは、アインシュタインの一般相対性理論においては、ブラックホールの質量とスピンで記述されるシンプルな重力波である。本研究の学術的「問い」として、「ブラックホール」と呼ばれているものは、本当に一般相対性理論で予言されるものなのか?をあげる。この問いに答えるために、リングダウン重力波のより良いデータ解析法を開発し、連星合体後に生じた天体の情報を抽出することにより、一般相対性理論を検証する。 リングダウン重力波と連星系の合体前の放射される「インスパイラル重力波」を組み合わせて一般相対性理論を検証する方法が、これまでに数多く提案されている。このような状況において、本年度は、インスパイラル重力波の理論波形の議論を進めた。1つは、超大質量ブラックホールと太陽質量程度のコンパクト天体からなる連星系からのインスパイラル重力波である。もう1つは、楕円軌道運動の連星系に対する研究である。これまで、数値相対論では準円軌道運動の連星系が主に取り扱われてきたが、楕円軌道の離心率を調整するための方法を議論した。 もちろん、連星系からの重力波の観測は、一般相対性理論の検証という物理学的な観点からだけでなく、その連星系の起源を探るという天文学的な観点からも有用である。本年度は、重力波イベントのGW2002105とGW200115という中性子星とブラックホールの連星系に注目し、その起源に迫った。本論文の中で、重力波観測の結果と種族ⅠやⅡの星が起源であることが無矛盾であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地上重力波望遠鏡の第4次観測(O4)が遅延しており、本年度は、これまでに得られたデータを用いた研究、これから行われるであろう重力波観測のための準備としての理論的研究の双方を進める時期であった。 前者の研究成果は、中性子星とブラックホールの連星系の起源を論じたものであり(Tomoya Kinugawa, Takashi Nakamura, Hiroyuki Nakano, Mon. Not. Roy. Astron. Soc. 515, L78 (2022))として出版した。今後の重力波観測により、さらに詳細な議論が可能になるであろう。 後者の研究成果は2つあるが、どちらもインスパイラル重力波に着目した研究である。1つは、超大質量ブラックホールと太陽質量程度のコンパクト天体からなる連星系についてであり、(Soichiro Isoyama, Ryuichi Fujita, Alvin J.K. Chua, Hiroyuki Nakano et al., Phys. Rev. Lett. 128, 231101 (2022))として出版した研究成果は、将来の宇宙重力波望遠鏡から得られる重力波データ解析に活用される。もう1つは、楕円軌道運動の連星系に対する数値相対論の初期データを準備するために、(Alessandro Ciarfella, James Healy, Carlos O. Lousto, Hiroyuki Nakano, Phys. Rev. D 106, 104035 (2022))においてポストニュートン近似法を用いて離心率を定義した。これまでにも様々な離心率の定義が行われているが、我々の提案した方法により、シンプルに離心率を取り扱うことができ、数値相対論の初期データを効率良く準備することができ、今後の連星系シミュレーションに利用される。
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Strategy for Future Research Activity |
ブラックホール準固有振動の基音・複数の倍音を抽出する方法を、地上重力波望遠鏡(aLIGO, advVirgo)の第3次観測(O3)の重力波データ解析に導入する予定であったが、理論的な理解が深められておらず、さらなる議論を研究協力者と共に進めていく。 一方で、近年、ブラックホール周りの環境効果の議論が世界中で進展している。小さな環境効果が、ブラックホールの性質に影響する可能性があることを示唆しており、一般相対性理論の検証をする際に、弊害となる可能性がある。ブラックホール摂動論を用いて、ブラックホールの性質が環境効果により、どのように変化するのかを理解する研究を推進していく。本研究の進展は、今後の重力波データ解析法、さらには一般相対性理論の検証方法へ何らかの示唆を与えることができるであろう。 連星ブラックホールの重力波イベント数は、3桁に届く勢いである。この観測データを統計的に利用することは有用である。具体的には、チャープ質量(インスパイラル重力波波形に含まれる特徴的な連星系の質量の組み合わせ)と質量比に注目する。個々のブラックホールのスピンを取り扱った研究もあるが、十分な精度でスピンの情報が抽出できているとは、現段階では言えないと考えている。連星系の質量は比較的よく見積もられており、連星進化シミュレーションと組み合わせることにより、重力波で観測されている連星ブラックホールの起源に迫る。
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