プラズマ降着流からのX線放射を用いた強磁場激変星の質量及び半径の同時決定法の確立
Project/Area Number |
21K03623
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 16010:Astronomy-related
|
Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
森 英之 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 招聘研究員 (20432354)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
|
Budget Amount *help |
¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2021: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
|
Keywords | X線天文学 / 強磁場激変星 / 白色矮星 / 重力赤方偏移 / プラズマ物理 / プラズマモデル |
Outline of Research at the Start |
本研究では、白色矮星の表面近傍に形成されるプラズマ降着流のX線精密分光観測を通じて、白色矮星の質量と半径を同時に決定する手法を確立する。特性X線の電離状態と、白色矮星の自転に伴うエネルギー変化、すなわちドップラーシフトから、降着流内部の温度・速度場構造を観測的に決定する。さらに白色矮星表面でのコンプトン散乱も考慮して、降着流の物理状態を忠実に再現するX線放射モデルを構築する。アーカイブを含むX線観測データにこの新放射モデルを適用して、白色矮星の質量と半径を精密決定する。
|
Outline of Annual Research Achievements |
Chandra 衛星で得られた、強磁場激変星 RX J1712.6-2414 のX線精密分光データの解析を行った。マグネシウム、ケイ素、硫黄の特性X線のエネルギー中心値が有意に低エネルギー側にずれている (赤方偏移している) ことを発見した。これらのエネルギーのずれは、輝線を放射するプラズマの視線方向速度にして 200 ~ 500 km/s に対応する量であった。これまでの降着流モデルから計算される、各元素の降着速度に伴うドップラーシフト (100 km/s 程度) では説明できないずれであり、連星系の固有運動や降着流の光学的厚みなど、様々な可能性を考慮しても説明できない量であった。したがって輝線の中心エネルギーのずれは、RX J1712.6-2414 の主星である白色矮星の重力赤方偏移と考えるのが自然である。ここから計算される重力ポテンシャルの深さから、白色矮星の質量は太陽質量の0.9 倍以上と見積もられ、従来の降着流モデルの推定値 (太陽質量の 0.6 ~ 0.8 倍程度) を上回る結果となった。この結果を論文にまとめて投稿し、現在査読中である (4月26日に受理)。 RX J1712.6-2414 はその発見以来、すざく衛星による最近の観測まで自転周期に伴うX線光度変動が見つからず、白色矮星の周りに降着円盤が形成されていない特異な連星系と考えられていた。すざく衛星の観測データを綿密に解析した結果、さらに公転周期の位相によって自転周期に伴うX線光度変動が見えたり見えなかったりすることを突き止めた。この結果を国際学会 (COSPAR 2022) で発表し、現在その機構の議論を交えて論文を執筆している。 また Chandra 衛星のデータの詳細解析を進め、本研究の目的である降着プラズマの速度場の導出を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究当初の目的は、Chandra 衛星で得られた RX J1712.6-2414 のX線精密分光観測データを、RX J1712.6-2414 の自転周期にもとづいて時間分割し、輝線の中心エネルギーの自転周期依存性を調べる予定であった。その前段階として、全観測時間のX線スペクトルを解析したところ、予想外に大きな中心エネルギーの赤方偏移を発見した。様々なプラズマ降着流モデルを検討したり、赤方偏移を生じうる効果について検討してきたが、速度に換算して 200 km/s 以上の赤方偏移を説明できるものはなかった。RX J1712.6-2414 の主星である白色矮星の重力赤方偏移の検出と考えるのが自然という結論に至った。強磁場激変星からの重力赤方偏移の検出は世界初のことであり、この成果をいち早く報告する必要性が出てきたため、当初の研究計画を変更して、重力赤方偏移検出の論文の投稿を優先させた。
|
Strategy for Future Research Activity |
RX J1712.6-2414 からの重力赤方偏移の論文は受理された。そこで今後は当初の研究計画に立ち戻り、自転周期にもとづいて時間分割したX線スペクトルの解析を行う。白色矮星の自転による輝線の中心エネルギーの変化から、プラズマ降着流内部の速度を算出し、プラズマ降着流の速度場と温度場の関係を確立する。得られた速度場と温度場を再現するプラズマ降着流のモデルの構築を進める。プラズマ降着流の新モデルから、RX J1712.6-2414 の質量を推定しなおす。 速度場の妥当性を検証するためには、連星系の幾何学的配置の情報も必要である。すざく衛星の観測データを用いて連星系の幾何学に迫ったところ、X線光度変化が公転周期の位相に依存することを発見した。この結果を別途論文にまとめる予定である。 重力赤方偏移から得られた重力ポテンシャルの深さから、独立した質量推定値が得られるため、両推定値をセルフコンシステントに説明できるように、プラズマ降着流のモデルに必要な物理素過程を取り込み、モデルを精密化していく。
|
Report
(2 results)
Research Products
(1 results)