点から線・面へ:次世代の地震・津波観測データに対する革新的な解析法の開発
Project/Area Number |
21K03693
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 17040:Solid earth sciences-related
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
蓬田 清 北海道大学, 理学研究院, 特任教授 (70230844)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2021: ¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
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Keywords | 津波 / 震源過程 / バックプロジェクション / DAS / 時空間フィルタ / 雑微動 / 2次元S波速度構造 / 海底観測網 / 海底浅部S波速度構造 / 津波波源 / 散乱 / 海底観測データ / 地震波・津波伝搬 / 連続アレイ解析 / 微細不均質性 |
Outline of Research at the Start |
従来の離散的な時系列データによる地震波・津波の励起・伝搬の研究は、陸上と新たな海底の稠密観測網の発達、光ファイバによるDASという革新的技術の計測系の登場により、空間的な連続データへと急速に移行しつつある。地震学では位相・走時が主に解析されていたが、見かけ速度・偏向面・振幅といった正確な計測がこれまで困難だった観測量も容易に得られることになる。質量ともに格段に向上する次世代の地震データの解析を、Deep Learningなど他分野で発展中の新手法に加え、早期推定も含めた、震源・構造の目的に特化した独創的な解析法を開発する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度の主な成果は2つの論文にまとめられ発表された。一つ目は、海底水圧計の稠密観測網データによる津波波形記録から、津波励起源の空間分布を推定する新たな手法の開発である。これまでの研究では、複数点で観測された津波波形記録について、地震情報などから推定した断層面に基づく海底面変動のモデルからの合成波形を比べて、この残差が最小になるように、モデルパラメターを逆問題として求めてきた。本研究では、稠密な観測網の特徴を生かして、観測された津波波形を途中の海域の伝搬速度によって波源領域に向かって逆投影することで、津波波源の領域を直接求めた。地震記録では大地震時にこのような手法は適用されてきたが、津波においても稠密観測網が運用されたことで、従来の逆問題の手法よりも簡便、かつ空間分解能が高い結果を求めらることがわかった。特に、この手法は断層面などの事前のモデル情報が不要なので、(1)地震などと大きく異なる津波励起の要因の場合にも、波源を客観的に求めることが可能である、(2)断層情報が不要なのでリアルタイム津波予測にも応用が可能で、地震からの推定と独立なため、相互の信頼度を迅速に検証できる、といった今後の津波研究の発展に大きく寄与することができる。 もう一つの研究では、海底ケーブルの光ファイバを用いた新しいDAS技術による海底での雑微動の計測から、S波速度構造の2次元構造を求めた。DASを用いた新しいデータでは側線に沿ってほぼ連続的な観測データが得られるので、従来の時系列解析における1次元フィルタから、空間領域も含めた、f-kフィルタという2次元解析が可能となる。このことで、雑微動記録からより広帯域の信号が検出され、堆積層から下部地殻までの速度分布を正確に推定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書を作成した当時に準備を進めていた、陸上での稠密地震観測網の記録を用いた解析により、初年度は計画通りに、火山地域での相対振幅データによる微動などの震源推定の改良、および東北地方の火山フロント周辺の極めて複雑な散乱・減衰構造の解明の成果が得られた。これに続いて、初年度から進めてきた海底水圧計の稠密観測網を利用した津波励起域の逆投影による推定という、全く新しい手法による成果をまとめることができた。さらに、海底ケーブルを用いたDAS観測システムでの雑微動記録を従来の時間領域の1次元フィルタによる解析から、稠密な観測点からの空間領域でのフィルタ解析も加えた、地震記録としては全く新しい2次元のf-kファイタによる解析の有効性を示すことができた。この結果、従来の地震観測記録より、より広い周波数帯域での信号を正確に抽出することが可能となり、堆積層から海底地殻下部に至るより深部のS波速度構造を初めて2次元的に得ることに成功した。 さらに、昨年のトンガ火山の噴火という、計画段階では全く想定されていなかった、極めてユニークで重要な現象が発生し、新たな海底観測網により、詳細な解析が進めることができることとなった。これまでの地震と津波現象に対して稠密観測網の新しい解析法の開発、およびその有効性の検証に従事してきたが、新たに大気と海洋の相互作用を解析対象として拡張することとなり、次世代の解析方法の発展への提案がより広範囲に示せる見込みとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
計画では頻繁に発生する小さな多数のイベントに対して、稠密観測網のデータの新しいアレイ解析法の開発を目指していた。ところが、2022年1月のトンガでの海底火山の噴火が発生し、100年に1度あるかないかの大規模な事象であり、この現象を研究期間中に解析できることとなった。計画段階では想定していなかった大規模なイベントにおける新しい手法の開発を取り組むことができる。とりわけ大気と相互作用する津波伝搬が歴史上で初めて多点で観測されたことで、従来と全く異質の新しい現象に対しての稠密観測網による解析法の有効性を検証できる絶好の機会となった。よって、研究計画では全く触れなかった、この最新かつユニークな重要な現象に絞った研究を開始、成果をまとめる予定である。 加えて、残りの研究期間において、多点での海底観測網について今後のあらゆる研究の基礎となる、海底地震計におけるサイト特性の推定を試みる。陸上での高周波地震波に対しては、1970年ごろより複雑なサイト特性の重要性、とりわけ微細不均質性の構造の解明と強震動予測という防災といった実用的観点から、非常に多くの研究が試みられ、多大な知見が得られてきた。しかし、海底でのサイト特性は観測点の少なさや柔らかい厚い堆積層での波形の複雑さと相まって、ようやく定量的な研究が開始されたに過ぎない。今後、海底観測点での高周波地震波形記録から、微細不均質性や減衰構造、そして震源過程の研究が活発になるのは間違いなく、その基本となるサイト特性を陸上でのこれまでの理解と比較することで、多数の観測点の利点を用いて、その本質的な違いを定量的に考察する。
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Report
(2 results)
Research Products
(19 results)