地震震源の対蹠点で観測された地震波形による内核差分回転の定量化
Project/Area Number |
21K03710
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 17040:Solid earth sciences-related
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
坪井 誠司 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 付加価値情報創生部門(地球情報科学技術センター), アドバイザー (90183871)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2021: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
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Keywords | 地球内部構造 / 地震対蹠点 / 核マントル境界構造 / 理論地震波形計算 / アジョイントインバージョン / スペクトル要素法 / 地球シミュレータ / 地球内核S波構造 / 地震震源の対蹠点 / 大規模数値計算 / 地球内核s波速度構造 / 理論地震波形 / 地球内核構造 / 理論地震波形記録 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、地球内核表面を伝播するPKIIKP波到着時の時間変化を、およそ10年の間隔で同じ位置、同じ規模、および同じメカニズムで起きる相似地震を用い、それらの地震の対蹠点で観測したデータを用いて、理論地震波形記録の計算と比較することにより内核差分回転の定量的な評価を試みる。PKIIKP波の地震の対蹠点における観測は、研究代表者らが過去20年間の地震観測記録から報告しており、これまでに理論地震波形記録との比較から見積もった内核差分回転の値を検証することが本研究の目的である。
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Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は、地球中心核の地震学的構造を決定する上での基礎的データとなる、核マントル境界近傍のP波速度不均質構造のインバージョンを、地震対蹠点のデータを用いたアジョイントインバージョンにより行った。核マントル境界近傍のP波速度不均質構造モデルをインバージョンにより決定することはこれまで表面波や自由振動を用いた研究が行われたのみであり、実体波のP波を用いた研究は本研究が初めてである。アジョイント法によるインバージョンの実施のために、対蹠点における理論地震波形を周期約6秒の精度で計算し、20観測点の観測波形を注意深く選んで用いることとした。観測波形の選定にあたっては、過去20年に世界中で起きた地震のうちで、M<7の地震を選び、その地震に対して震央距離が179度以上となる対蹠点の観測点を選び、さらに信号雑音比が十分高くなる観測波形を選び、20点の上下動広帯域地震計観測波形を選んだ。理論地震波形の計算は、海洋研究開発機構の地球シミュレータの75CPUノードを約10時間用いることにより行った。インバージョンは6回繰り返し、モデルの改善を行って核マントル境界近傍のP波速度不均質構造を求めた。核マントル境界では、S波速度の大規模不均質構造があることが知られているが、P波においても、同様な規模の不均質構造が存在することが本研究により初めて解明された。研究結果は、日本地震学会、アメリカ地球物理学連合秋季大会で口頭発表により発表するとともに、論文として投稿した。論文はPhysics of the Earth Planetary Interior誌に投稿し、査読を経て2024年3月18日に受理され、オンラインにて出版されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では2011年に発生した第3の相似地震の後に第4の相似地震が発生することを想定し、その観測から内核差分回転を定量的に見積もることを目的としていた。しかし、第4の相似地震は2024年4月現在発生していない。一方、この間に汎世界的地震観測網の記録を海外研究協力者と見直し、地震震源の対蹠点におけるPKIIKP波の観測例を新たに過去30年間に対して13例に増やすことが出来た。また、PKIIKP波の前駆波の観測から内核表面直下の地震波速度不連続構造を見つけ論文として発表することが出来た(Butler and Tsuboi, 2021)。このような観測例から、PKIIKP波とその前駆波の波形を用いて、アジョイント法による波形インバージョンにより内核表面の融解領域を決定する可能性に気がついた。アジョイント法による波形インバージョンは、研究代表者が用いているスペクトル要素法による理論波形計算に基づいて地震波速度構造の感度カーネルを計算することにより実行できるので、内核表面の構造推定の実現可能性が高いという着想を得た。本研究では、そのための準備として、まず核マントル境界のP波速度不均質構造をアジョイント法による波形インバージョンで推定することを試みた。このための地震観測波形は基本的に、内核構造の推定のために収集していたものがそのまま使えるために、研究計画の大きな変更なしに、核マントル境界のP波不均質構造のアジョイント・波形インバージョン推定を実施することができた。これらのことより、当初目指していた第4の相似地震の観測は得られなかったものの、本研究課題の進捗状況はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の実施により、内核差分回転の定量的評価のためには、内核不均質構造を波形インバージョンにより求めることが有効と考えられることが明らかになった。一方で、波形インバージョンを実施するために最も困難な点は、PKIIKP波の振幅に対するS波速度感度カーネルを計算することである。地球内部不均質構造を取り入れた地球モデルを用いて理論地震波形を計算し、それと時間を逆にして計算した理論波形から感度カーネルを計算するためには高速大容量の計算機が必要であり、内核構造を推定するための反復インバージョンの各ステップで感度カーネルを再計算することが求められる。その準備として、海洋研究開発機構が運用するスーパーコンピュータである地球シミュレータにより、感度カーネル計算を試験的に行ったところ、周期6秒の精度で解析するために、1つの地震―観測点について地球シミュレータの75ノードを10時間程度使うことで精度よく感度カーネルを計算できることが分かった。この規模の計算機資源は地球シミュレータの運用上、確保することは可能である。地震―観測点の組み合わせは、求める内核構造の精度を考慮すると少なくとも20ケース程度必要であると考えられる。この数は、反復インバージョンの回数を考えると十分現実的な規模であるといえる。したがって、今後の研究方針としては、内核S波地震波速度不均質構造をアジョイント法による波形インバージョンを用いて推定することが有効となると考えている。
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Report
(3 results)
Research Products
(10 results)