Examination of earthquake occurrence condition based on the transition between repeating earthquakes and slow slip
Project/Area Number |
21K03713
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 17040:Solid earth sciences-related
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Research Institution | The University of Tokyo (2022-2023) Tohoku University (2021) |
Principal Investigator |
内田 直希 東京大学, 地震研究所, 准教授 (80374908)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2021: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
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Keywords | 繰り返し地震 / スロー地震 / 応力緩和 / S-net / プレート境界地震 / 条件付き安定 / 粘性緩和 / すべり様式 / 地震発生条件 |
Outline of Research at the Start |
地震は断層がすべる現象であるが,様々なタイプの断層すべりがある.一見,深いところでスロー地震が起きるように見えるが,三陸沖で東北沖地震後にプレート間すべり速度が上がった時には,これまでスロー地震がおきていた深さで地震性すべりが観測された.このような時空間的なプレート間すべり挙動の変化は何が決めているのであろうか?本研究では,東北沖のプレート境界で発生する小さな繰り返し地震を精査し,プレート間すべり様式の時空間変化を正確に決定する.そして,断層面の性質だけでなく,プレート境界近傍での応力緩和(粘性緩和)が地震の発生の有無を支配しているという仮説を検証し,プレート境界の地震発生条件を明らかにする.
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では, プレート境界近傍での応力緩和(粘性緩和)が地震の発生の有無を支配しているという仮説を検証する.そのため,繰り返し地震とスロー地震間の時空間的遷移の特徴を東北沖地震の前後に着目し行う.本年度は昨年度作成した,2016-2020年の東北沖の微小地震のカタログを用い地震活動の特徴の抽出を行なった.機械学習およびS-netを用いて得られたこの新しい地震カタログについて解析を進めた。海域において深さの精度が改善されたこのカタログを活用し,プレート境界の位置を基準に上盤地震・プレート境界の繰り返し地震・スラブ地殻の3つのカテゴリの地震に分けて地震の空間分布を調査した.その結果,東北・北海道沖の海溝から160-200km,プレート境界の深さ35-50km付近に,帯状に上記の3つのカテゴリの地震全てが集中している領域があることがわかった.この鉛直の地震活動集中域は,プレート境界での温度が200-350℃付近に位置しており,スラブ地殻からの脱水により生じていると考えられる.スラブ地殻から供給される流体が,上盤に抜けていることにより,それよりも浅部のプレート境界では比較的流体圧が低く,固着が強いため大地震の主要なすべり域となっていると考えられる.また,フィリピン海プレートの存在により,低温環境にある関東地方においてはこの流体供給は内陸にシフトしており,首都直下での活発な地震活動および,フィリピン海プレート上での1923年関東地震のすべり域と房総スロースリップイベントの棲み分けを生じさせていると考えられる.今回得られた流体の役割は,当初の目的である応力緩和と地震発生の関係の解明を直接進めるものではないが,そのような現象が起きていると考えられる領域の構造として重要であり,今後プレート境界地震発生域深部での応力緩和を含む地震の発生モデル構築の上で重要である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究により,S-netと機械学習の活用により沖合の小さな地震まで検知することができるようになり,地震活動の解釈が進んだ.プレート面外を含んだ地震活動の精査により,プレート境界の地震活動について,プレート境界面の性質だけでなく,その下と上の構造および流体の移動が地震発生に重要な役割をしていることがわかった.この成果については,現在論文を準備中である.また,宮城県沖地震の地震サイクルに関する共同研究を行い,東北地震クラスの大地震のサイクルの間にその固着域内外で進む非地震性すべりの特徴を明らかにし,共著論文を出版した.この結果は長期的なプレート境界での非地震性すべりの時間発展の予測を与えるものであり,応力緩和を通じて地震活動も長期的に変化していく可能性を示すものである.また,2023年の能登半島の群発地震活動についても,共同研究により地震活動のデータから流体と地震の関わりについて重要な成果を得た. 以上のように本年度は,地震発生域の時空間変化を調べるにあたって基礎的なデータとなる震源カタログをの解釈が進んだ.また,長期的なプレート境界での非地震性すべりの発展についてシミュレーションからの示唆を得たほか,群発地震の時間発展についても興味深い研究結果を得た.このことから,研究は計画通りに進んでおり,概ね順調に進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
東北沖の2016年以降の長期の微小地震の地震カタログを活用し,微小地震の分布や時間的変化,スロー地震との関係を調査する.特に,繰り返し地震とスロー地震の空間的遷移域である,プレート境界型地震の深部限界付近と浅部限界付近において,プレート面外を含めた微小地震の分布の調査をさらに進め,これらの遷移域における地震活動の特徴から繰り返し地震・スロー地震等のプレート境界のすべり現象の発生条件を明らかにする.また,繰り返し地震のカタログの改訂も進め,それと研究協力者(飯沼博士)から提供を受けた測地データに基づく余効すべりのデータを併用し,余効すべりと地震・非地震性すべりの遷移の条件を明らかにしていく.さらに,得られた地震カタログと研究協力者(和田博士)から提供を受けた温度シミュレーション結果を用い,プレート境界の深さ方向での地震・非地震性すべりの遷移の条件の解明にも挑戦する.また,断層周辺の粘弾性的変形が繰り返し地震のスケーリング則の応力降下量に関するパラドックスを解決できるのではないかという仮説についても考察を進める.S-netおよび機械学習を用いた東北地方の沖合の微小地震の分布とその解釈については,解析の最後の詰めの作業を行い,結果を確かなものにして論文執筆を行い,学術誌に投稿する.また,研究の結果(カタログ)や用いたプログタムの公開も進める.以上のような取り組みを総合して,応力緩和と地震の起こり方の関係について,新たなデータ・解析をもとにしたモデル化を行い,プレート境界近傍での応力緩和(粘性緩和)が地震の発生の有無を支配しているという仮説の検証を進める.
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Report
(3 results)
Research Products
(24 results)