刃先近傍の切りくず温度分布のモニタリングによる各種の工具摩耗状態の同時把握
Project/Area Number |
21K03788
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 18020:Manufacturing and production engineering-related
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
篠塚 淳 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (30282841)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2021: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
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Keywords | 切削 / 工具摩耗 / 温度 / 切りくず / 赤外線サーモグラフィー / 深層機械学習 / 計測 / モニタリング / 深層学習 |
Outline of Research at the Start |
令和3年度~令和4年度:赤外線望遠マイクロスコープユニットを改良して切りくず裏面の温度分布の測定感度を上げる.切削条件を広範囲にして摩耗と温度との関係のデータ数を大幅に増やし,AI画像認識システムの予測精度を向上させ,構築するシステムの性能や有用性を検証する. 令和4年度~令和5年度:人間が見て解析した結果とAIが予測した結果を比較検討することで,同時かつ複合的に発達する各種の工具摩耗が刃先近傍の切りくず裏面の温度分布に及ぼす普遍的なメカニズムについて検討する.
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Outline of Annual Research Achievements |
旋削工具刃先では,旋削中に,すくい面摩耗,コーナー摩耗,逃げ面摩耗,主切れ刃側と副切れ刃側の境界摩耗が同時に発達する.特に,逃げ面摩耗は,ある時点で,急激に摩耗幅が過多になり,仕上げ面品位の劣化やビビリ振動を誘発するなどするので,旋削中にこれの発達状況をリアルタイムで把握できるシステムの構築が望まれている.工具摩耗は,工具との接触摩擦エネルギが増加させるから,切削点の温度は上昇し切りくずの温度も上昇する.さらに各種の工具摩耗の発達状況により温度分布にも変化が生じることになるはずである. そこで本研究は,工具摩耗が同時多発的に発達する工具の旋削において,生成直後の刃先近傍の切りくず裏面(自由表面側)の温度分布を計測し,同時多発的に発達する各種の工具摩耗量をAI画像認識により同時に推定するシステムを構築することを目的とする. これまでに,AI画像認識の推定能力を上げるために,直角すくい角とアプローチ角を変え,また,新品工具に逃げ面摩耗を模した面取り研削を施した工具を用いて旋削試験をして,教師データ数を増やした.AI画像認識システムはTensorFlowを用いて構築し,計算には90GBまで対応するGPUを用いた.視覚から物体を認識する大脳皮質が4層構造をしていることを参照し,畳み込み層を4層,各層のカーネルの枚数を大脳皮質の各層のニューロン密度を反映した数にした.この結果,定性的には5種の工具摩耗を推定できるようになった.また,そこでは,画像の色見だけで判定している訳ではないことが分かった.しかしながら,現状では,定量的には各種の摩耗量の予測誤差が小さくならない状況であるので,次年度は,推定誤差を小さく,汎化能力を高めることを主として検討することにする.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
教師有り機械学習による画像認識をする,という点で概ねに順調に進展している.推定精度の向上には,教師データ数が多いことと,大容量の計算が可能なことがまず挙げられるが,両者とも達成している.工具ホルダは以下の3種を検討した.(アプローチ角[degree],垂直すくい[degree])の組み合わせは,(-6,+15),(-8,+45),(+5,+15)である.刃先交換チップのコーナ半径も,0.8 mmと 1.2 mmの2種とし,さらに,新品工具に,人工逃げ面摩耗として,工具研削盤でコーナー部を含む工具刃先に面取りを幅0.05mm~0.03 mm程度付与した工具を複数個用意した.これは,逃げ面摩耗だけが切りくず裏面の温度分布に及ぼす影響の特徴量を抽出し易くするためである.被削材はS45C,切り込み深さ2.0 mmと送り量0.25 mm/revは一定とし,切削速度は2.1~2.4 m/sの範囲で旋削を実施した.生成直後の刃先近傍の切りくず裏面の温度分布は,Φ75mmのGe製の凸レンズとΦ50mmのGe製の凹レンズの2枚で構成した自作の赤外線レンズを組み込んだ赤外線サーモグラフィーカメラで,切削点から250 mm離れた位置から倍率1.3で計測し,切削3分力も計測した. 教師データの数は,撮影画像を上限左右に反転させた画像も加えて16720枚である.教師データ数を大幅に増やし,AIシステムの構成,各種の正則化などを検討したが,未学習データの推定誤差(誤差の絶対値)は,すくい面摩耗で20%程度,平均逃げ面摩耗幅30%,主切れ刃側境界摩耗30%,コーナー摩耗20%,副切れ刃側境界摩耗30%程度にとどまっている.なお,教師データの推定誤差(誤差の絶対値)は各種摩耗で3%程度であるので,過学習しており汎化能力が高くできていないことが分かった.
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Strategy for Future Research Activity |
切削速度や工具ホルダ(工具形状)を種々に変えて切りくず裏面の温度分布を計測したことで,教師データ数を多くしたが,汎化能力が向上しない課題が残っている.つまり,畳み込み層の層数を増やしても,また,各畳み込み層のカーネルのサイズの変更や枚数を増やしても,さらに,各種の正則化を導入しても,過学習の傾向が抑制されない. これは,旋削条件を変えて教師データ数を増やしたが,このことは,出力に対する入力パラメータ数が増やしたことになり,相対的に教師データの数(バリエーション数)が減ったことになり,さらに,AIシステムのパラメータ数(畳み込み層の層数や各層のカーネルの大きさと枚数)が増えたことも,汎化能力が上がらない要因の一つである可能性もある,と考えている. 機械学習の学習システムの設計には無限のパターンがある.そこで,脳の全体構造を反映させたシステムを検討する.生物は,目から入った光の信号を大脳で認識するとしているが,視覚以外の情報も統合して認識しているはずである.そこで,これを簡単にモデル化し,推定率を向上させることを検討する.具体的には,入力を画像だけでは無く,設定値となる切削条件,さらには,切削力なども補助入力として導入することを検討する.汎化能力の向上が見えたら,切りくず裏面の温度分布から,どのようにして各種の摩耗状態を認識しているのか,について引き続き検討する.
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Report
(2 results)
Research Products
(1 results)