ソフトな潤滑膜のダイナミクス解明が開拓する潤滑特性の制御
Project/Area Number |
21K03844
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 18040:Machine elements and tribology-related
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Research Institution | Ichinoseki National College of Technology |
Principal Investigator |
滝渡 幸治 一関工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (70633353)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2021: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
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Keywords | トライボロジー / その場観察 / 赤外分光法 / ゲル / トラクション / ダイナミクス / 水素結合 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、有機物添加剤が形成するソフトな潤滑膜のダイナミクスを解析し、その解析結果に基づき新規潤滑法を提案するものである。そのため潤滑膜の構造とその形成および破壊の過程(ダイナミクス)を直接捉え、潤滑特性との関係を明らかにする。具体的には潤滑膜の「その場観察」を行い、潤滑膜構造の解析に必要な潤滑剤成分およびその濃度と膜厚、さらに潤滑界面に形成される境界膜と共に、しゅう動条件による潤滑膜構造の経時変化(過渡応答)を調べる。また潤滑膜構造に関わる相互作用として、添加剤と基油分子間およびしゅう動表面との間に働く極性の相互作用や水素結合に着目し、低摩擦を実現する新規潤滑剤創成への展開を視野に入れる。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、有機物添加剤が形成するソフトな潤滑膜のダイナミクスを解析し、その解析結果に基づき新規潤滑メカニズムを提案するものである。昨年度は赤外分光法による「その場観察法」を主に用いて、潤滑膜の構造を直接捉え潤滑特性との関係を調べた。その結果、油性剤を添加した潤滑剤やアミド化合物およびウレア化合物を添加した潤滑剤について、潤滑膜厚さや組成に対するしゅう動条件の影響、トラクション特性に関する新たな知見が得られた。 今年度は添加剤および基油の分子構造の影響、過渡応答や潤滑膜のバルクから界面近傍の潤滑膜構造について検討した。試料には、アルキル鎖の構造が異なるアミド化合物とウレア化合物を添加して調製した半固体潤滑剤を用いた。その結果、①アミド化合物に含まれるアルキル鎖が飽和炭化水素からなるときに膜厚および接触部近傍の添加剤濃度が大きくなる、②基油が極性の場合に膜厚が減少する、③ウレア化合物を添加した潤滑剤はせん断印加による過渡応答が確認されるが、アミド化合物を添加した潤滑剤では同様の過渡応答が見られない、などの知見が得られた。 以上の結果から、潤滑膜厚さと組成が添加剤と基油の種類によって制御できることが示唆された。 対外発表としては、アミド化合物およびウレア化合物を添加した潤滑剤について、潤滑膜厚さと組成に対する添加剤と基油の種類の影響、トラクション特性との関係に関する成果を発表した。特にトラクション特性については、アミド化合物を添加した潤滑剤では低いトラクション係数を示すことを報告し、界面近傍の構造が影響していることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は現有の赤外分光法を用いてその場観察を行い、潤滑膜厚さと添加剤濃度のしゅう動条件依存性と、トラクション特性を引き続き測定した。試料として、添加剤はアミド化合物とウレア化合物を数種類選定し、基油は無極性と極性の合成炭化水素油を用いた。添加剤を12~20 mass%の濃度で基油に加えて調製し潤滑剤とした。潤滑状態のその場観察試験では、顕微FTIR とボールオンディスク型潤滑試験機を組み合わせた装置を用いた。また、赤外分光法の全反射法によるその場観察も行った。ダイヤモンドプリズムと銅プレート間のすべり摩擦条件下で形成される潤滑膜について、IRスペクトルの測定を試みた。 添加剤として用いたアミド化合物の分子構造や基油の極性によって、膜厚と添加剤濃度の引き込み速度依存性に違いが見られた。特にアミド化合物に含まれるアルキル鎖の不飽和結合の有無と基油の極性による傾向が確認された。また、アミド化合物を添加した潤滑剤はせん断の履歴を受けやすく、徐々に軟化することが分かった。さらに潤滑剤の供給方法を変えることで厚い膜が形成されることも明らかになった。その一方で、トラクション特性については軟化や供給方法の影響は確認されず、ウレア化合物を添加した潤滑剤に比べてアミド化合物を添加した潤滑剤は低いトラクション係数を示した。 赤外分光法の全反射法を用いて界面近傍の構造解析を試みたが、滑り条件で行ったため潤滑膜が薄くなり、添加剤の濃度増加が確認できなかった。せん断速度が大きいために、接触域入口側で添加剤の濃度が増加してもせん断によって添加剤由来の膜が破壊されたためと考えられる。界面近傍の構造解析については引き続き検討が必要であり、潤滑メカニズム解明に向けて取り組む。
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Strategy for Future Research Activity |
トラクション特性と潤滑膜構造の関係についてより詳細に検討するため、1ミクロン程度の潤滑膜全域にわたる平均的な潤滑膜構造と、サブミクロン以下の界面近傍の潤滑膜構造を比較しながら検討を行う。膜全域にわたる潤滑膜構造は昨年度までの研究成果によって把握できたと考えているが、前述した潤滑膜構造の経時変化および過渡応答から界面近傍の構造が重要であると考えており、界面近傍における潤滑膜構造の解明を深く進めていく。エリプソメトリーの全反射法を用いたその場観察を引き続き実施する。この全反射法では全反射用プリズムの摩耗によって測定誤差が発生するため、接触は行わずに最初から膜厚を設定した状況でせん断場における潤滑剤成分の挙動をその場観察する。さらに赤外分光法の全反射法を用いたその場観察についても、全反射プリズムの改良を進めながら可能な範囲で実施する。既に購入した膜厚計測装置と潤滑剤供給機構を現有の装置に加えることを可能としている。これらの手法によって、潤滑界面における境界膜の形成および破壊過程に関する知見を得る。しゅう動条件(すべり率)を変えたときの潤滑膜構造の過渡応答についても引き続きデータを蓄積する。潤滑膜の形成と破壊過程を調べることで、潤滑特性との関係を明らかにする。さらに添加剤の官能基から分子間相互作用に関する情報を解析し、潤滑膜構造との関係を検討する。そして、添加剤と基油の組み合わせを最適化することによって、ソフトな潤滑膜を形成し低摩擦を発現する潤滑剤を提案する。
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Report
(2 results)
Research Products
(3 results)