磁力を利用した変位縮小機構による微細作業用ピンセットの開発
Project/Area Number |
21K03991
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 20020:Robotics and intelligent system-related
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Research Institution | Tsuyama National College of Technology |
Principal Investigator |
野村 健作 津山工業高等専門学校, 総合理工学科, 教授 (80198621)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥3,250,000 (Direct Cost: ¥2,500,000、Indirect Cost: ¥750,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2021: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
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Keywords | 磁力 / 変位縮小機構 / マイクロマニピュレーション |
Outline of Research at the Start |
永久磁石を使った単一体・無電力の変位縮小機構によって,指先の動きを顕微作業のスケールまで縮小する。現存技術では,1~3㎝の指先の動作を約1/1000倍して顕微鏡の作業空間へ伝えるには,電動あるいは油圧マニピュレータで大きく位置決めした後ピエゾで精密位置決めするような組合せ機構でしか実現できないが,独自の磁力駆動技術を弾性体機構に展開させて単一体で実現する。指先で細胞操作が行えるモーションスケールを持つピンセットを開発することを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
片持ち梁状に支持した弾性ビームを永久磁石の磁力で撓ませて出力変位を得る変位縮小機構を開発した。この機構は電力を必要とせず動かすことができ,設置スペースに制約のある光学顕微鏡のステージ上に搭載するには大変有利である。2021年度には,開発した1自由度変位縮小機構の発生変位特性,発生力特性を実験的に調査することで,光学顕微鏡下で行う微細作業に必要な性能を有することを確認した。2022年度には,以下の課題に取り組むことで,実用的な装置の開発とその課題発掘を行った。 (1) 1/1000倍の変位縮小率を実験的に検証した。高性能レーザー変位計を利用することで,これまで測定が困難であった18μm以下の変位特性を調べることで,1/2173倍の変位縮小が可能なことを確認した。 (2)2自由度変位縮小機構を設計・製作して基本特性を実験的に調査した。正方形断面を持つ弾性ビームを永久磁石で水平方向と垂直方向に吸引して駆動する装置である。弾性ビームは,水平・垂直方向に磁力を受ける投影面積がある程度必要であるが,剛性が高くなり過ぎるため,固定端側にヒンジ部を設けて撓みやすく加工した。3.3mm四方のヒンジ部を持つ弾性ビームで発生変位特性を測定した結果,フルストローク80μm,変位縮小率は1/813 を確認した。変位縮小率はヒンジ部の寸法の異なる弾性ビームを使うことで調整することができ,4.0mm四方のヒンジ部を持つ弾性ビームでは1/7463倍の変位縮小率が得られた。発生変位特性は,2つの永久磁石が近接すると干渉するため歪な特性を有することがわかった。さらに,操作性を検証するために,弾性ビーム先端にガラス製ピペットを取り付け,その先端で大きさ約100μmの文字を描く試みを行った。操作方法を修得すれば簡単に描ける文字と,2つの永久磁石が同期した移動が求められる文字を描くには熟練が必要であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度の研究進捗は,以下のようにおおむね順調である。 (1)2021年度に実証できなかった1/1000倍を超える高縮小率を有することを実験的に確認した。高性能レーザー変位計を利用することで10μm以下の高精度位置決めができることを示したが,この領域の微細位置決めを行うと永久磁石移動機構として利用するリニアガイドの精度(ガタ)が大きな影響を及ぼしはじめるので,開発した装置では10μmが位置決め性能の限界と言える。 (2)2自由度変位縮小機構を設計・製作して変位特性を実験的に調査した。開発した機構は,10mm四方の正方形断面を持つ弾性ビームを水平・垂直方向に永久磁石で駆動する原理を有する。変位縮小率は弾性ビームに設けるヒンジ部の寸法で調整できることを示し,ヒンジ部断面が4mm×4mmの弾性ビームでは1/7463倍,3.3mm×3.3mmの弾性ビームでは1/813倍となることを確認した。本装置の操作性を検証するために弾性ビームに取り付けたピペット先端で文字を描くこと試みた結果,大きさ100μm程度の単純なアルファベットを描くことに成功した。2つの永久磁石をピペット先端の顕微鏡映像を視認しながら操作するには若干のスキルを身につける必要があるが,狙った位置へ移動できるようになるには数十分練習すれば十分であり,短時間で手芸の熟練者の限界を超えた微細作業を可能とした。しかし,2つの永久磁石が近接した場合,磁力が干渉して変位特性に影響することから予想通り動かないこともあるので操作性にも影響してしまうこともわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は,本事業期間の最終年度になる。当初の計画に従い,微細作業用精密ピンセットを設計・製作を行い,その基本特性を実験的に調査する。 開発するピンセットの構成として通常のピンセット先端部にはガラス製ピペットを取り付け,ジョイント部は強磁性体素材(SS材)と常磁性体素材(アルミニュウム材)を締結する。ハンドルに相当する部分を永久磁石で磁力を加えることで操作することにする。基本構想のまま単純な形状で試作して想定通り開閉動作を行うことを検証したい。想定される課題は2本のガラスピペット先端を揃うように正確に位置決めして固定するのが難しいことである。今のところ有効な解決方法はなく,成功するまで試行を重ねることとする。また,提案するピンセットは磁力と弾性体の復元力を使って開閉動作を行う原理を持つが,SS材の残留磁化による影響が現れることが想定されるので,消磁方法についても検討したい。なお,2自由度変位縮小機構で問題となった磁場干渉については,永久磁石周辺にヨークを設置して閉じた磁場回路とすることが有効であり,ピンセットの磁場回路に導入する予定である。
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Report
(2 results)
Research Products
(2 results)