モビリティがル・コルビュジエの都市計画に与えた影響に関する研究
Project/Area Number |
21K04399
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 23030:Architectural planning and city planning-related
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Research Institution | Shizuoka University of Art and Culture |
Principal Investigator |
松田 達 静岡文化芸術大学, デザイン学部, 准教授 (80624759)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | ル・コルビュジエ / モビリティ / ユルバニスム / 都市計画史 / 近代建築 / ブエノスアイレス / サンパウロ / リオデジャネイロ / 都市計画 / シトロエン / 航空機 / パトリック・ゲデス / レオナルド・ダ・ヴィンチ / ガブリエル・ヴォアザン / アンドロ・シトロエン / アンドレ・シトロエン |
Outline of Research at the Start |
近代を代表する建築家ル・コルビュジエは、船、自動車、飛行機といったモビリティに大きく影響を受けて都市計画概念を構築してきたが、その具体的な影響関係については不明な点が多い。そこで本研究は、建築・都市計画の文脈に、モビリティ史・都市交通史を加えた横断的な視点から、ル・コルビュジエの都市計画概念の段階的変化を解明することを目指す。さらには、20世紀初頭におけるモビリティの都市計画への影響を明らかにすることにより、21世紀初頭の変革期にある現在のモビリティ環境に対応する今後の都市計画のあり方にも、指針を与える。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近代を代表する建築家ル・コルビュジエが、船、自動車、飛行機といったモビリティから受けた影響及び、その都市計画への関連性を明らかにしようとするものである。 3年目の令和5年度は、ついに南米現地調査を敢行できた。また当初は想定していなかったレオナルド・ダ・ヴィンチの都市構想との類似性が見えてきた。さらに、研究当初から進めていた一般向け書籍『建築思想図鑑』も刊行することが出来た。 南米では、ブラジルのブラジリア、ベロオリゾンテ、サンパウロ、リオデジャネイロ、そしてウルグアイのモンテビデオ、アルゼンチンのブエノスアイレス、ラ・プラタを訪れた。ル・コルビュジエは、ブラジルでは実業家パウロ・プラドとの親密な関係からサンパウロでの人脈を広げた。例えばサンパウロで訪れたブラジル初のモダニズム住宅カーサ・モデルニスタ(1928)は、ウクライナ生まれの建築家グレゴリ・ワルチャブチク(1896-1972)の自邸であるが、彼はイタリアで働いた後ブラジルに帰化し、ルシオ・コスタと共同で事務所を開き、オスカー・ニーマイヤーもそこに在籍した。つまりヨーロッパのモダニズムをブラジルに繋いだ人物であり、ル・コルビュジエとの関係性はさらに問われるべきである。建築家マリオ・パランティとの関係も興味深い。ル・コルビュジエはパランティが設計した様式的な超高層建築であるブエノスアイレスのバロロ宮(1923)もモンテビデオのサルボ宮(1928)もこき下ろした。こうしたル・コルビュジエの反応は、ブエノスアイレスでの連続講演にも影響を与えたはずである。また、サン=テグジュペリとの関係や航空機から見た南米大陸の様子、ル・コルビュジエが都市計画を提案した都市の地理等も確認できた。 本年度は上記の他、南米に関するスペイン語、ポルトガル語を含む文献も複数手に入れた。次年度はこれらの調査を研究としてまとめる段階に入りたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はこれまで治安の懸念もあってなかなか実現できなかった南米調査を、ようやく決行できた。別研究で進めていたレオナルド・ダ・ヴィンチの理想都市模型に関する研究とも内容的に重なる部分を見出すことができた。 南米行きでは事前調査の段階から思わぬ資料が多く見つかった。ル・コルビュジエはブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、コロンビアなど南米の複数の国と関係を持ったが、それぞれの国の建築や都市にあたえた影響についての論文はかなり多い。特にスペイン語、ポルトガル語文献を通して知ることができた知見には、これまで英語、フランス語文献では知ることができなかった情報がかなり含まれていた。 ブラジルで特に興味深かったのは、ル・コルビュジエのファゼンダ(農場)とファベーラ(貧民街、スラム)への関心である。ル・コルビュジエが訪れスケッチを描いたパウロ・プラドが所有するファゼンダが、具体的にどこにあるどのようなものであったのか、ある程度その情報を絞り込むことが出来た。またファベーラについてもベロオリゾンテとリオデジャネイロの両都市で調査を行うことができ、こうした空間体験と都市計画との関係を検討した。 モンテビデオからブエノスアイレスへは、ル・コルビュジエの軌跡を辿って船で移動した。ル・コルビュジエが語りスケッチに残した都市の印象を、少しでも体感的に捉えるためである。サンパウロやリオデジャネイロでも同じように考え移動した。実際、それぞれの都市の大きさや広がり、地形や交通事情など、ル・コルビュジエは綿密に考え都市計画を練っていたことが現地に来てよりはっきりとつかめた。さらに、ブエノスアイレスではル・コルビュジエの支援者で作家のヴィクトリア・オカンポに関する情報を複数得られたことも重要な進展である。 このように南米に関する複数の新しい知見を得ることができ、研究としては概ね順調に進展してきたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年、研究上の難所と考えていた南米での資料収集は、十分に行うことが出来たと考えている。今後の研究においては、さらなる情報収集を進めるとともに、研究をまとめる方向に進んでいきたい。収集した文献や書籍、撮影した写真などの情報は相当に多いため、まずはそれらの整理を進めていく必要がある。こうした情報をまとめていったうえで、あらためてパリのル・コルビュジエ財団などに確認に行く必要が出てくるかもしれない。このあたりはタイミングを見計らって、調査を進めたい。 モビリティがル・コルビュジエの都市計画に与えた影響について、大きくは自動車、飛行機という方向性から異なる影響があったことの全体像がつかめてきたように感じている。ヨーロッパでは自動車が都市に与える影響が大きいが、南米は各都市間の距離が遠く鉄道も少なく、都市間の移動の多くは航空機に限られる。ル・コルビュジエが『プレシジョン』で描いていた南米と航空機の結びつきについての言葉の数々が、実感を持って響いてきた。ル・コルビュジエがはじめて南米に来た1929年以来、ル・コルビュジエのなかで航空機が持つ意味は、次第にあれだけ熱狂していた自動車よりも、大きくなってきたはずである。そのことをより明確にしていく必要があると思われる。 こうした状況を踏まえて、これまでの文献を見直すとともに、研究上の漏れがなかったのかも確かめながら、総合的観点から研究を進め、まとめていきたい。
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Report
(3 results)
Research Products
(13 results)